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日本経済を支える個人消費

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GDPの6割弱を占める個人消費

総務省統計局が実施している「家計調査」によると、2007年1月の1世帯当たりの消費支出(物価変動の影響を除いた実質)は、2005年12月以来13カ月ぶりに前年同月比プラスに転じた。景気拡大局面の中で取り残されていた感のある個人消費だが、2006年秋から回復傾向を示しており、消費マインドに明るさが見えてきた証拠ともいえる。1月の場合、外食などが寄与し、食料支出が9ヵ月ぶりの実質増加になったほか、衣類を中心に被服および履物支出も4ヵ月ぶりの実質増加になっている。さらに交通・通信支出は3ヵ月連続の実質増加。ただし、光熱・水道やその他の消費支出は、それぞれ9ヵ月と7ヵ月連続の実質減少となっており、締めるべきところは締めている、という状況は続いている。

個人消費は、景気動向を探るうえで、最も重要な要素の一つ。日本の場合、家計最終消費支出はGDP(国内総生産)の6割弱を占めており、2005年度の場合は名目GDPの55.8%となっている(図1)。米国の家計最終消費支出は約7割といわれるが、日本の場合は可処分所得から預貯金などの金融資産形成に回る分も多く、経済成長と消費支出は必ずしもリンクしない。

図1 GDPに占める家計最終消費支出の構成比

総務省統計局が2005年12月に公表した「2004年全国消費実態調査」によると、家族が2人以上の全世帯の消費支出は32万63円で、前回調査時の1999年と比べて実質増減率で1.3%の減少となっている(図2)。時系列的には、高度経済成長期を通じても実質増減率は低下傾向にあったことがうかがえる。ただし、可処分所得に占める消費支出の割合を示す平均消費性向は、1974年以来低下していたものが、2004年には上昇に転じている。収入の減少で可処分所得額に影響が及んだとみられる一方、金融資産形成に関する意識が変化してきていることも考えられる。

図2 1か月平均消費支出

消費の軸足はモノからサービスへ

支出の内容を費目別にみると、変化が実感できる。いわゆる10大支出項目の構成比推移では、食料の割合が一貫して低下している。1979年には30.3%を占めていたものが、2004年には22.6%に低下した。被服および履物、家具・家事用品も同じように構成比が低下している。海外からの低価格製品やデフレの影響もあると考えられるが、教養娯楽や交通・通信は構成比の拡大が顕著になっている(図3)。これらの項目には、物品購入以外のサービスも含まれている。個人の消費や購買行動は、従来の「モノ」中心から「サービス」へとシフトしつつあるといえそうだ。

図3 1か月平均消費支出の項目別構成

こうした流れを受けて、個人消費の実態的な動向を的確に把握しようという動きが出てきている。従来の調査・統計が全国を対象としたものであり、そのためタイムラグがあったり、サンプル数が少ないために、結果にブレが生じる懸念がある。また、首都圏を中心とした都市部の動きに引きずられることも考えられる。そのため地域特性なども踏まえた、独自の指標を作成しようとするものだ。たとえば、宮城県仙台市に本店を置く七十七銀行では、2006年9月から独自の「宮城県消費動向指数」を作成し、公表している。物販などの供給者側販売統計だけでは、サービスのウエイトが高まっている個人消費の全体像がつかめないと考えたからだ。また、経済産業省九州経済産業局でも、独自に「九州における消費動向指数(仮称)」を検討している。こうした個人消費における「サービス支出」をどのように把握するかという取り組みは、今後加速するものと考えられる。

もちろん、新たに消費マインドに働きかける商品やサービスのトレンドを分析することも重要になってくる。三井住友銀行グループのSMBCコンサルティングが毎年公表している「ヒット商品番付」によると、2006年のヒット商品で東の横綱に選ばれたのは「ニンテンドーDS Liteと対応ソフト」だった(図4)。タッチペンを使うことによる操作性のよさと「脳を鍛える大人のDSトレーニング」といったソフトが、普段はゲームに触れない中高年に受け入れられたことが、評価されている。西の大関は「モノ」ではなく「サービス」であるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「mixi(ミクシィ)」。匿名性の強いインターネットの世界に、「(基本的に)顔見知りによるコミュニティ」を持ち込んだことで、2005年12月に200万人だった会員数が2006年11月には660万人に拡大した。2006年全体としてみると、個人の消費行動の多様化でヒット商品が小粒になったと評価し、西の横綱の該当がなかったり、東の大関が休場だったりする。しかし、西の前頭六枚目の「駅ナカ」を含め、見逃していた対象から新たな顧客を創造した商品・サービスが登場している。

図4 2006年のヒット商品番付(2006年12月4日発表)

個人の消費は、食料のような「基礎的支出」にではなく、教養娯楽や交通・通信のような「選択的支出」により多く費やされるようになっているのは明らか。日本経済全体への影響という面からも、そうした選択的支出に有力な商品・サービスを送り込めるかが重要になっている。

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