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増え続ける教育費

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1人あたり教育費1500万円!?

いまや4世帯に1世帯しか子供がいないという少子化社会となった日本。しかし「大切な子供だからこそ、しっかり教育を受けさせたい」と願うのが親心というもの。子供の数が減れば減るほど、子供1人あたりの教育費が増えるという現象が起きている。

文部科学省の「データから見る日本の教育2006」によると、幼稚園(4歳)から大学(学部)卒業までにかかる平均教育費用は、すべて国公立校の場合で818万円、小学校以外がすべて私立校の場合で1563万円。国公立の場合と私立の場合では、最大で約700万円の差が生まれている(図1)。

図1 ケース別の平均教育費用(2004年度試算)

月額で見てみよう。「平成17年度国民生活白書」の調査結果では、子供の教育関係費(学費に給食費、教材費、通学費など学校生活に関わる費用の総計)は月額約4万円。支出全体の11.8%を占めるほど、教育費が食費と並ぶ家庭の大きな出費になっている。しかも、支出における教育費の割合はここ10年上昇の一途。おまけに世帯主の所得伸び率よりも、教育費の伸び率のほうが大きくなっているのだ。つまり、お父さんの給料がアップする率よりも、教育費のアップ率のほうが高いというわけだ。

子育て世代に重圧感。少子化の要因にも

教育費と一口にいっても、子供の学年によってもバラつきがある。学年別で最も教育費に差が出るのが中学1年生次で、公立の場合は年間45万円なのに対し、私立の場合は年158万円と実に3倍以上にのぼる。しかし、授業料などの教育費が公立で軒並み増加しているのに対し、私立は減少傾向。また、公立に通わせた家庭では、教育関係費の半分ほどを学校外活動費(塾や家庭学習など)に費やしている。学校以外の教育費が全体的に増加していることから、子供を塾などに通わせている親が多いことがうかがえる。授業料が安くなる公立に通わせても、その分、学校外にお金を投じているのだから、子供の教育にかける親世代の強い思いが伝わってくるような調査結果だ。

ゆとり教育から来る学力低下への不安や、首都圏を中心に私立中学校を受験する子供の割合が急増していることから、家計における教育費はかさむ一方。この重圧を最も受けているのが40代の親だ。総務省の「家計調査」が世帯主の年齢階級別の家計を調査したところ、世帯主が40代の家庭における年間教育関係費は50万円超。また、40代に次いで教育関係費が多い50代の場合は、子供への仕送り金が約半分を占めている(図2)。

図2 世帯主の年齢階級別1世帯当たり年間教育関係費(2005年)

しかし少子化が引き金となった最近の教育熱が、逆に少子化に拍車をかけている要因になるという、なんとも皮肉な結果も出ている。「平成16年度少子化白書」によると、理想の子供数よりも実際の子供数が少ないことに対して、全体の62.9%が「子育てや教育費にお金がかかりすぎるから」と答えている。(財)こども未来財団によれば、「養育費(生活費・教育費)に対する負担感は、収入の高低にかかわらず多くの親が感じているが、負担感は必ずしも所得の高低には関係していないようだ。かえって、所得が上がるにつれて負担感の数値はアップしている(図3)。

図3 家庭所得と子供の養育費の負担感

これは高所得家庭ほど、子供に高学歴を求める傾向が強く、習い事に通う割合もかける費用も高いことが背景にある。子供にはいい教育を受けさせたいとの親心と、それによる家計への負担増に複雑な心境を抱える親の状況をうかがうことができる。

公財政支出の多い欧米、教育熱心な韓国

海外での教育費はどうなっているのだろうか。OECD(経済協力開発機構)によると、「国内総生産(GDP)に対する学校教育費の比率(2002年)」の世界30カ国の平均的な割合は、公財政支出(国と地方が学校教育に支出した経費)5.1%、私費負担0.7%、合計5.8%となっている。欧米諸国はドイツ以外、公財政支出が平均値と同等、または上回っている(図4)。

これに対して、日本の公財政支出は3.5%と平均を下回り、私費負担は平均より高くなっている。これは日本のGDPに対する一般政府総支出の比率が低いことと、総人口に対して児童・生徒数の割合が低いこと、私立学校の比率が欧米より高いことが要因として考えられる。

図4 国内総生産(GDP)に対する学校教育費の比率

私費負担が2.9%と最も高いのが韓国。公財政支出4.2%をあわせると合計7.1%になり、教育費の割合はアイスランド、アメリカに次いで多い。これに対して日本は合計が4.7%と30カ国の平均を1ポイントも下回る結果だった。日本以上に学歴社会といわれる韓国。財布事情からも教育熱心さがうかがえる。

忙しい子供、きりつめる大人

子供の教育費にかかるのは、何も学校の中だけではない。gooリサーチの「子どもの習い事に関する調査」によると、中学生までの子供で「習い事をしている」と答えたのは全体の75%。そのうち32%が学習塾と最も多く、次いで音楽、水泳、英会話と続いた。習い事にかかる費用は、月額1万円以上3万円未満が半数近くを占め、88%が3万円未満の月謝を払っている(図5)。

図5 子供の習い事にかかる月額費用

いずれも情操教育や、子供の身体的・精神的成長を願うと同時に、習い事をさせている親の4割以上が「子供が自分で行きたいと言ったから」を理由に挙げていることから、子供の意思を尊重したい親心も垣間見える。

親世代はかさむ一方の教育費をどうやって捻出しているのだろうか?国民生活金融公庫総合研究所の調査によると、8割の親が「教育費以外の支出を削っている」と回答。つまり、多くの親が子供の教育費を抑えることよりも、自分たちの生活を切りつめることを選んでいるのだ。節約しているのは旅行・レジャー費がトップで、次いで外食費、衣類代、食費と続く。

また、「子供がアルバイトをしている」「奨学金を受けている」という回答も上位にランクイン。東京地区私大教職組合連合会の調査で、大学生の仕送りは年々減少し、2003年には月額5万円を割り込んでいる。

子供に対する教育熱と、家庭の厳しい台所事情が交錯する日本の教育費。ますます進む少子化の中で、今後の動向が気になるところだ。

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