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人口減少期を迎えた日本

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テーマ「生きる」

毎年74万人が消えていく!

日本の人口問題を語るとき、2005年は一つのターニングポイントとして長く人々に記憶されるだろう。この年、厚生労働省が人口動態統計をとり始めてから、初めて日本は人口の自然減を体験したからだ(1941年から1943年までは統計がない)。

統計によると、出生数と死亡数の差である自然増加数は2004年がプラス8万2119人であったのに対し、2005年はマイナス2万1266人であった。国勢調査でも、2005年10月1日現在の総人口は1億2776万8000人で、前年を約2万20000人下回っており、日本が人口減少時代に突入したことを裏付けている。少子化の影響で日本がいずれ人口減少に転じることは、以前から予想されていた。しかし、当初は2006年が"減少元年"になるとみられていた。現実はその予測を追い越し、1年前倒しにしてしまったのである(図1)。

図1 総人口の推移

ではこれから日本の人口はどうなっていくのか。国立社会保障・人口問題研究所は2006年12月、新たな人口推計を発表した。合計特殊出生率の見方で高・中・低という三つの仮定に基づく推計をしているが、中位の推計では日本の人口は2030年に1億1522万人になり、2050年には1億人を切って9515万人になるとしている。今後44年間で3260万人減るということで、1年平均にすると約74万人になる。これは静岡市の人口よりやや多い数になる。人口が減っていくと聞いてもあまりピンとこないかもしれないが、これから先は、静岡市規模の都市が毎年一つずつ減っていくようなものと聞けば、事の重大さを実感できるのではないだろうか(図2)。

図2 総人口の推移―出生中位・高位・低位(死亡中位)推計

実は人口が減っていくのは日本だけではない。米国を除くと多くの先進国が今後、人口減少時代に入っていくとみられている。イタリアやロシアはすでに減り始めているし、ドイツやフランスも出生率が低下して、早晩、人口減少局面に入るのは確実だ。また人口の減少は必ずしもマイナスではなく、プラス面も大きいという楽観論もある。通勤ラッシュが緩和される、道路の渋滞が減少する、住宅面積が広くなる等々で、要するに今よりゆとりのある社会になるということだ。欧米と比べて日本人が豊かな暮らしを満喫できないのは、狭い国土に密集して暮らすために、不動産など居住にまつわるコストが必要以上にかかり、余暇や遊興にお金を回しにくいことが一因だという主張もある。人口が減ってエネルギー需要が減少すれば、環境面ではプラスに働くかもしれない。人口1000万人以上の国では、日本の人口密度は世界第4位。たしかにこの国は人が多すぎる。

経済規模もダウンサイジング

しかし経済成長率は、労働者数の増減率と労働生産性の上昇率によって決まるので、労働力人口の減少は経済成長率にマイナスの影響を及ぼす。1人当たりの労働生産性が現状のまま推移するとすれば、GDP(国内総生産)は確実に縮小していくことになるはずだ。すでに日本の労働力人口(15〜64歳の人口)は1998年から減り始めている。しかも今後はただ減っていくだけではない。出生数の減少により若年労働者は減りつつある。労働力人口はどんどん高齢化しながら減っていくことになる(図3)。

図3 労働力人口の推移と見通し

人口が減っていけば当然、マーケットも縮小していく。人口増加→モノ・サービスの普及→市場拡大、というこれまでのようなマーケティングは通用しなくなる可能性がある。経済的な需給面からみると、人口の減少に伴って食糧、衣料、住宅などを中心に商品への需要が数量ベースで減少することが予想される。特に子ども関係の商品や若年層向けの商品は競争が一段と激化していくことになりそうだ。高齢者向けの商品やサービスは多様化し、参入企業も増えていくのではないだろうか。年金も税金も支払う人間が減っていくのだから、今の生活レベルを維持しようとすれば一人ひとりの負担は重くならざるを得ない。

日本の総人口は減少し始めているが、東京の人口は増えている。2005年の場合、神奈川、愛知、大阪、埼玉、千葉なども人口は増えている。こうした不均衡な人口構成そのものは問題だが、視点を変えれば都市型のビジネスや大都市の消費マーケットをターゲットにしたビジネスはこれからさらに発展する可能性が高いともいえる。

大手百貨店の大丸と松坂屋は統合を目指している。イオングループとダイエーも資本・業務提携することを正式に発表した。こうした大企業同士が連合を決断した背景には、人口の減少があるといわれる。消費マーケットの縮小による競争の激化に備え、規模の拡大による体力強化を図ろうというのである。人口減少時代には業界再編が進むということもあるかもしれない。人口の減少が日本の社会にどのようは影響を与えるかはまだ不透明な部分も大きいが、ビジネス社会においてこれから新しい経営戦略、新しいビジネスモデル、新しいマーケティングが求められるようになることは間違いない。

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