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日本の国際化と“英語熱”

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日本人の英語力はアジア最低レベル!?

海外との交流がごく当たり前の現代、日常生活やビジネスでも国際語である英語に触れる機会は確実に増えている。しかし、多くの日本人は中高の6年間、大学まで進めばさらにプラス数年間は英語を学習しているというのに、「英語はダメ」と苦手意識を持っている人は少なくない。

では、日本人の英語のレベルは国際的に見てどの程度なのか。図1は、英語を母国語としない人の英語運用能力テストで、米国などの大学への入学希望者の英語力を測る際に用いられるTOEFL PBTテスト(マークシートとライティングによるテスト)の日本と中国、韓国の総合スコアを示したものだ。日本のスコアは2007年に上昇したものの、中国、韓国より低い水準にあり、アジア全体で見ても日本の順位は2004~2005年、2005~2006年はワースト1位、2007年でも同3位という惨憺たる成績だ。

図1 日本・中国・韓国のTOEFLスコアの比較のグラフ

日本人にとって習得するには何かと苦労が多い英語だが、その裏返しとして語学ビジネスは盛況だ。矢野経済研究所の推計によると、2007年度の語学ビジネス市場は5500億円、語学試験や留学斡旋、通訳・翻訳といった周辺ビジネスを含めると8136億円に上った〔図2〕。このうち、成人向け外国語教室が27.0%、幼児・子ども英会話教室が11.9%、プリスクール(英語保育を行う施設)2.8%と、語学スクール関連が全体の4割を占める。

図2 語学ビジネス市場規模推移のグラフ

英語でキャリアアップをめざすビジネスパーソンや学生はもちろんのこと、「語学は早いうちから習わせたほうがよい」と考える親が増えて、「英語熱」が低年齢化しているということもある。実際、gooリサーチと読売新聞の共同調査「子どもの習い事に関する調査」によると、3歳から中学生までの子どものうち20%が「英会話・英語教室」に通っており、今後習わせたいお稽古としても21%でトップとなっている。

2011年度からは小学校で英語が義務化

近年は学校教育の場でも国際交流が盛んに行われている。文部科学省「2006年度高等学校等における国際交流等の状況について」によると、語学研修や国際交流の目的で外国の高校や語学学校での研修を実施した高校は、3カ月未満の研修で1795校(参加者数3万626人)、3カ月以上の留学では1270校(同3913人)に上った。また943校が外国の学校と姉妹校提携をしており、海外の学校とさまざまな交流活動を行っている。

こうしたなか、小学校でも総合的学習の時間で「国際化教育」として英語学習を行っているケースも少なくない。文部科学省の調べによると、2007年度には公立小学校の97.1%で英語活動を行っており、6年生では年間平均15.9時間、毎月1コマ強を充てている〔図3〕。さらには、2011年度からは小学校でも英語教育が義務化され、小学校5、6年生を対象に年間35時間・週1コマ行われる。

図3-1 英語活動実施学校数のグラフ

図3-2 英語活動年間平均実施時間数のグラフ

こうした流れに対して、保護者はどう感じているのか。Benesse教育研究開発センターの「第1回小学校英語に関する基本調査(保護者調査)」によると、小学校英語の必修化を「賛成」または「どちらかといえば賛成」とする保護者は76.4%。小学校英語に対しては「英語に対する抵抗感をなくすこと」「英語の音やリズムに触れたり慣れたりすること」を望む保護者が9割以上に上った〔複数回答、図4〕。新しい学習指導要領では「外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う」ことを小学校英語の目的としていることから、ほぼ保護者が期待しているものと同様の内容となっている。

図4 保護者が小学校英語に望むことのグラフ

一方で、小学校での英語義務化に異論を唱える向きも少なくない。Benesse教育研究開発センターの同調査によると、「日本人としてのアイデンティティーの揺れや日本語力の低下が生じること」や「他の教科の学習が疎かになること」に懸念を示す保護者もいる。たしかに、早い時期から英語に触れることによるメリットは少なくないが、そこで苦手意識が植え付けられると、中学校で本格的な英語学習に入る前から「英語嫌い」の子どもを生み出してしまう可能性もある。こうしたことにならないよう、しっかりとしたプランのもとで英語義務化を実施してもらいたい。

NTTコム リサーチは、平成24年10月1日にエヌ・ティ・ティ レゾナント株式会社からNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社へ事業譲渡され、平成25年12月9日にgooリサーチより名称変更いたしました。gooリサーチの調査結果(共同調査含む)等についてはこちらまでお問合せください。

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