第4回 乳がんに関する2万人女性の意識調査

インターネットアンケート・サービス「gooリサーチ」(*1)を共同で提供するNTTレゾナント株式会社（本社：東京都千代田区、代表取締役社長：中嶋　孝夫）と株式会社三菱総合研究所（本社：東京都千代田区、代表取締役社長：田中　將介）は、「gooピンクリボンキャンペーン2008」(*2)の一環で、「gooリサーチ」の女性登録モニター及びポータルサイト「goo」を利用する一般女性を対象に「第4回　乳がんに関する2万人女性の意識調査」を実施しました。有効回答者数は30代を中心に27,402名でした。

前回の「『第3回　乳がんに関する2万人女性の意識調査』調査結果～乳がんに関心がある女性は8割以上、乳がん検診受診経験者は半数を超える～」（2007年10月19日発表）は、下記を参照ください。
URL: http://research.goo.ne.jp/database/data/000671/

総括

2005年から始めた本調査は今年で4回目となりました。乳がん検診（自己検診を含む）を経験したことがない女性は、この4年で12%程度減少しました。また、マンモグラフィの受診率について30代は22.0%、40代は50.2%と倍以上の差があり、厚生労働省の乳がん検診の指針*の対象である40歳以上の女性への一定の成果が伺える一方で、40代以上のマンモグラフィ未受診者もまだ半数存在するのも事実です。

乳がんが「自分で発見できる病気である」ことは68.5%が認識しており、「自己検診」**を行っているという回答も4年間で、25.6%から38.9％と13.3%増加しました。実際に、自身が乳がん経験者である女性のうち「自己検診で乳がんが発覚した」と答えた人は、55.8%に及びます。一方で、まだ「自己検診」を実施したことはないが「自己検診」を知っていると答えた回答者のうち、72.0%が実際に「自己検診がどのようなものか詳しく知らない」と回答しています。

調査開始当初から変わらない結果としては、乳がんに関して関心がある（「非常に関心がある（33.6％）」+「関心がある（53.5％）」）回答者は87.1％、罹患すると怖い病気の1位（85.9％）であり、未だに「乳がん」に対して高い関心があることがわかります。しかし、「日本人女性の20人に1人以上がかかる」「30〜64歳の女性がん患者の死亡原因のトップである」病気であるということに関しては約2割しか認識されていないことや、30代〜50代の女性が乳がん検診を受けない理由の1位は、「現在しこりや症状に異常が見られないから」という実態も見受けられます。「マンモグラフィ」や「自己検診」という言葉は知っていても、自分も罹患する可能性があるという自覚の低さや、「特に異常を感じなければ大丈夫」という誤った認識が高いという現状が浮彫りになりました。

乳がんへの高い関心を自己検診やマンモグラフィ・エコーの受診などの具体的な行動にどのように結びつけていくかが、今後の乳がんの早期発見・治療へのポイントと言えます。

*「老人保健事業に基づく乳がん検診及び子宮がん検診の見直しについて　がん検診に関する検討会中間報告」平成16年3月　厚生労働省「がん検診に関する検討会」

**「自己検診」：自分自身での触診や、ひきつれやへこみ、ただれなどの有無に関する視診を自分で行うこと。

2008年度 調査結果のポイント

本資料は、「厚生労働記者会」「厚生日比谷クラブ」「総務省記者クラブ」「情報通信記者会」「NTTコーポレートニューズルーム」に配布しております。

調査結果について

調査結果データ

1. 乳がん検診未経験者の割合は、4年間で12.4%減少したが、40代以上のマンモグラフィ受診率は50%前後

(1) 乳がん検診未経験の割合は4年間で約12.4%減る

乳がん検診を全く受けたことがない人の割合が、2005年の55.3%から今年度は、42.9%(*)と4年間で12.4%減少した。特に自己検診を行った人が25.6%から38.9%(*)と増えており、マンモグラフィについても15.6%から27.4%(*)と11.8%の伸びを全体では示している。【図１】

(*)全回答のうち、「乳がんの検診方法をどれも知らない」と答えた800人を除いた26,602人の割合。

【図1】実際に受けたことがある乳がん検診
2005年:N=19,799 2006年:N=20,918 2007年:N=22,892　2008年:N=26,602※複数回答

(2) 40歳以上のマンモグラフィの受診率は、約半数

30代と40代のマンモグラフィの受診率はそれぞれ22.0%、50.2%と倍以上の差があり、厚生労働省の乳がん検診の指針の対象である40歳以上の女性への一定の成果が伺える一方で、40歳以上の女性のマンモグラフィの受診率は、50.6%*に留まっている。【図2】

*40代〜60代以上の「マンモグラフィ」を受診したという回答数を、26,602人で割った値

【図2】実際に受けたことがある乳がん検診(年代別)　 N=26,602　※複数回答

2. 乳がん経験者が、乳がんだとわかったきっかけの半数は「自己検診」

自身が乳がん経験者と回答した女性のうち「自己検診で乳がんが分かった」と答えた人は、55.8%にのぼる。また、家族や友人等周りに乳がんの罹患者がいる場合、その方たちが乳がんがわかったきっかけについても自己検診の割合が多いことがわかる。【図3】

【図3】乳がんだとわかったきっかけ(周りに乳がん経験者がいるかとのクロス集計) N=1,806

3. 「自己検診」の必要性、方法について更なる情報提供が必要

「自己検診」についてどのようなイメージがあるか、という設問に対しての自由回答に自由回答に「自分の判断が合っているのか不安」「やってみてもわからなそう」という声が多く寄せられた。
「自己検診を知っている」という回答は、86.5%と高い割合であったが（【図4】）、まだ自己検診を実施したことがないが「自己検診」という言葉を知っている回答者でも、実際に自己検診がどのようなものか詳しく知らない女性は約72%（内容を聞いたことはあるが詳しくは知らない64.2％＋内容を知らない7.8％【図5】）も存在する。医師による検診時の説明や、現在は行政の乳がん検診の対象外である40歳未満の女性に対しての自己検診の必要性や具体的な実施方法の周知等、今後行政や医療機関からのさらなる情報提供が求められる。

【図4】乳がん検診の方法として知っているものはあるか　Ｎ=27,402　※複数回答

【図5】「自己検診」についてどの程度知っているか Ｎ=13,244

4. 乳がん経験者が自身も含め、周りにいると回答した人は39.2%

(1) 自身を含め身の周りに乳がんを経験している人がいる回答者は39.2％

家族、友人・知人、親戚等を含めると乳がん経験者が周りにいるという回答者は、39.2%にのぼり、そのなかで自身が乳がんを経験している回答者は0.8%であった。【図6】

【図6】　周りに乳がんを経験した方はいるか　Ｎ=27,402　※複数回答

(2) 身の周りに乳がん経験者がいる回答者は乳がん検診の受診率が高い

周りに乳がん経験者がいると答えている回答者は、乳がん検診の受診率が高く、誰も周りにいない回答者の49.8%が「どれも受けていない」と答えているのに対し、周りに罹患者がいる場合は「どれも受けていない」という回答は、28.9%〜39.3%である。【図7】

【図7】乳がん検診を受診の有無(周りに乳がん経験者がいるかとのクロス集計)　Ｎ=26,602※複数回答

5. 乳がんについての関心は高く、怖い病気だと思っている女性は多い。

(1) 乳がんについて87.1%の女性が関心を持っている

8割以上の人が、乳がんに関心を持っており、そのうちの33.6％は「非常に関心がある」と答えている。【図8】

【図8】乳がんへの関心　N=27,402

(2) 将来かかったら怖い、再発したら怖いと思う病気のトップは引き続き「乳がん」

将来かかったら怖いと思う病気のトップ3は、女性に特有のがんが占めている。1位が「乳がん」、2位「子宮がん」、3位「卵巣がん」と、過去3年の調査と全く同様の結果であった。

【図9】将来かかったら怖いと思う病気　Ｎ=27,402 ※複数回答

6. 乳がんを意識する必要のある世代だと自身で認識していても、異常がないと検診を受けない傾向が多い

(1) 乳がんは自分もかかる可能性が高いという認識は高まっておらず、2割程度にとどまる

「日本人女性の20人に1人以上がかかる」(2007度調査で30人から20人に人数を変更)、「30〜64歳の女性のがん患者の死亡原因のトップである」ことについて知っている人の割合は、過去3年間の調査結果と同様、2割程度にとどまっている。【図10】

【図10】乳がんについて知っている情報
2005年:N=21,106 2006年:N=22,030 2007年:N=23,670 2008年:N=27,402　※複数回答

(2) 乳がんは自分もかかる可能性が高いという認識は高まっておらず、2割程度にとどまる

【図10】の結果からもわかるように「乳がんの発症は30代から急激に増える」ことを知っているという回答は全体で52.3%だったものの、30代以上の女性が乳がん検診を受けない理由の1位は、「現在しこりや症状に異常が見られないから」（30代58.3〜59.4%、40代59.9〜66.0%、50代68.4〜74.7%、60代以上77.4%）であった。【図11】
また、「30〜64歳の女性がん患者の死亡原因のトップである」ことを認識している割合が、全回答中まだ2割にも満たないというのが現状であり(図10参照)、自分がかかる可能性がある病気であるという認識がまだまだ薄いことが読み取れる。

【図11】乳がん検診を受けない理由　Ｎ=12,201　※複数選択

7. 20代、30代の市区町村での乳がん検診希望は7割以上

厚生労働省の指針である「40歳以上」という乳がん検診対象年齢について、「ちょうどよい」という回答は23.2%、「25歳以上からにしてほしい」（17.8％）、「30歳以上から」（34.4％）、「35歳以上から（21.5％）」という結果になった。【図12】

【図12】40歳以上という厚生労働省の乳がん検診指針についてどう思うか　Ｎ=27,402

8. 乳がん経験者の方が望む乳がんについての情報のトップは「乳腺専門医の情報」、全体では「治療費」

「乳がんについてどのような情報が知りたいか」という問いに対し、全体では、「治療費」「受診できる病院」「予防法について」が多く、自身が乳がんにかかった回答者の場合は「乳腺専門医の情報」「治療法」「薬」となり、具体的なデータが求められている。
また、本調査で特筆すべきポイントとしては、自身が乳がんにかかった女性のうち約2割の方が「コミュニティ・情報交換の場」が欲しいという回答が挙げられる。「乳がんについて誰と話しているか」という問いに対しても、自由回答で「乳がん患者同士」「患者会」「ブログを通じて」といった答えが見られた。インターネットでのコミュニケーションが発達している現在、乳がんの患者同士での情報交換や情報提供等も重要な情報ソース・心の拠りどころとなっていると推測できる。

【図13】乳がんに関するどんな情報が知りたいか　全体:Ｎ=27,402 自分:N=226 ※複数選択