金利や地価の先高感が住宅需要を後押しのアイキャッチ

金利や地価の先高感が住宅需要を後押し

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日銀の利上げで住宅ローン金利アップ現実に

国土交通省が発表した3月の新設住宅着工戸数は、前年比5.5%増の9万9448戸、季節調整済み年率換算は130万4000戸だった。内訳をみると、持ち家が前年比4.8%減、貸家が2.0%増、分譲住宅が22.1%増、なお、分譲住宅のうちマンション着工戸数は37.3%増となっている。

また2006年度の新設住宅着工戸数は、前年度比2.9%増の128万5246戸となり、4年連続の対前年比増となった(図1)。

図1 新設住宅着工戸数

住宅需要を後押しする大きな要因が、金利や地価の先高感であろう。読売新聞とNTTレゾナントが2006年10月に共同で実施した調査では、住宅の購入や建て替えを検討中の人に動機を尋ねると、「子供が成長し、住まいが手狭になったから」(41.76%)が最も多く、特に子育て世代の30代と40代は、「子供が成長〜」が動機の約5割を占めた。次いで全体では、「老後を考えると持ち家の方が安心だから」(38.31%)が続いた。また、「住宅ローン金利が上がりそうだから」(22.61%)、「地価や住宅価格が値上がりしそうだから」(15.71%)など、金利や地価の上昇見通しを理由に挙げた人が合わせると約4割に達した(図2)。

図2 住宅の購入や建て替えを検討する動機

住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)が2006年7月に行った「住宅ローンに関する顧客アンケート調査」によると、5年以内に住宅を取得したいと考えている住宅ローン利用予定者のうち「今後1年間に住宅ローン金利は徐々に上昇する」と答えた人は77.1%、住宅ローンの金利タイプは「全期間固定型」を希望する人が71.3%となった。また、2003年以降に住宅を取得し、住宅ローンを利用している人の45.4%が「返済中の金利変動に伴う返済額の増減」を懸念しており、いずれも近々の金利の上昇を現実のものととらえていたことがわかる。

日銀は2006年7月にゼロ金利政策を解除、さらに2007年2月には政策金利を0.25%から0.50%に引き上げた。大手銀行もこれを受け、3月分からの固定金利型の住宅ローン金利を一斉に引き上げている。今後、変動金利型住宅ローン金利も引き上げられる予定だ。日銀は急激な追加利上げは行わないと見られるものの、上昇基調であることは間違いない。

大幅に減少する宅地供給量

国土交通省は全国の宅地供給量について、各分野の事業者の供給実績等に関する調査に基づき、1966年度から毎年推計を行っている。2006年9月に発表された最新の推計結果(2004年度分)によると、全国の宅地供給量は、近年、減少傾向にあり、2004年度では6200ヘクタール(対前年度6%減)と、1966年度の推計開始以来最小となっている。内訳は、公的供給が1400ヘクタール(対前年度0%)と横ばいだったが、民間供給が4800ヘクタール(対前年度8%減)と減少した。三大都市圏における宅地供給量も、全国の状況と同様、近年、減少傾向にあり、2004度では3500ヘクタール(対前年度5%減)と、1982年度の推計開始以来最小となった。内訳は、公的供給が700ヘクタール(対前年度0%)と横ばいであったが、民間供給が2800ヘクタール(対前年度7%減)と減少した(図3)。

図3 宅地供給の推移

景気が回復傾向にある中で、企業の土地需要が回復するとともに、住宅着工も増加している。地価も増加傾向にある。国土交通省の2007年1月1日時点の地価公示によると、2006年1月以降の1年間の地価動向は、3大都市圏においては上昇し、地方圏においては下落幅が縮小したものの引き続き下落している。全国平均でみると、住宅地および商業地とともに16年ぶりわずかな上昇となったが、これは地点数の3大都市圏および地方ブロック中心都市の上昇が押し上げたものである(図4)。

図4 都道府県別地価公示の変動率

金利は上昇局面にあるものの、世界的なレベルで見れば、日本はまだまだ低金利だ。資産運用ニーズの高まりによる、不動産証券化などの不動産投資市場もさらに活発化するだろう。付加価値の高い土地は、さらに高騰することも予想される。

以上のような点から、金利や地価の本格的な上昇を前に、駆け込み的に住宅を購入するという動きはしばらく続くと考えられる。ただし、マンション販売競争が激しくなっている東京都心部でも、「即日完売」の物件ばかりではない。中には、完成後になって、まだ販売を続けている物件もある。業界関係者の中には、「都心回帰がさらに進む」という声がある一方で、「すでに供給過多になりつつある」という指摘もある。少子高齢化社会にあっては、土地需要の大きな伸びは期待できないのも事実。今後はさらに、住宅の「生き残り」競争が激しくなりそうだ。

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