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食生活の洋風化で脂肪分の摂りすぎが問題に

戦後の生活の洋風化に伴って、日本の食生活は大きく変化してきた。米の消費が徐々に低下する一方で、肉類や乳製品などの動物性たんぱく質を多く摂るようになったのが最大の変化だろう。現在、日本人のたんぱく源は、肉類と牛乳・乳製品を合わせた動物性たんぱく質が第一となり、それに続いて魚介類、そして米、穀物などが続くという状態になっている(図1)。

図1 日本人の食生活の変化

こうした食生活の変化は、私たちの健康に大きな影響を与えていることはいうまでもない。なかでも、生活の洋風化に伴って問題となっているのが脂肪分の摂りすぎである。

食べ物のなかには、さまざまな栄養素が含まれているが、そのうち人間が活動するためのエネルギーの補給源となるのは、脂肪、糖質、炭水化物の3つである。こうした栄養素を私たちは体内でブドウ糖に分解し、活動するためのエネルギーとして使っている。

この3つの栄養素のうち、脂肪から摂るエネルギーの比率は20〜40歳代で25%以下にすることが適当であるというのが、「健康日本21」の目標値だ。この「健康21」は、厚生労働省管轄の財団法人「健康・体力づくり事業財団」が、2010年までの健康づくり運動として各分野の目標値を定めたものである。

ところが、2004年に調査に行われた「国民健康・栄養調査」によれば、脂肪からのエネルギー摂取が25%を超えている人は、成人男性で約4割、女性約5割にも及ぶ。男性の約2割、女性の約2.5割は30%を超えていた(図2)。脂肪の摂りすぎはカロリー過剰につながりやすく、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を引き起こす原因となるので注意が必要だ。

図2 脂肪エネルギー比率の分布(20歳以上)

もっとも、脂肪にもさまざまな種類がある。厚生労働省が定めた2005年版の「日本人の食事摂取基準」によれば、脂肪については、単にエネルギー比率だけではなく、その質も考慮に必要があるとされている。それによれば、増やすべき栄養素として「n-3系脂肪酸」、減らすべき栄養素として「飽和脂肪酸」「n-6系脂肪酸」を取り上げている。n-3系脂肪酸にはEPA(エイサコペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などが、飽和脂肪酸には動物性の脂肪、n-6系脂肪酸には多くの植物油に含まれるリノール酸がある。

野菜不足は性別・年代を問わず共通している

野菜摂取量はどの年齢層においても共通して不足している。「健康日本21」によれば、成人の目標値は350グラム以上、うち緑黄色野菜成人120グラム以上とされる。

だが、2004年の「国民健康・栄養調査」では平均で266.7グラム。男女とも20〜40歳代の摂取量が少なく、最も多い60歳代でも303.5グラムしかなかった。緑黄色野菜に至っては平均で88.9グラムと、目標値の7割程度しか摂れていないことがわかる(図3)。

図3 野菜類摂取量(20歳以上)

野菜不足は、各種ビタミンやマグネシウム、亜鉛、鉄などの微量元素不足の原因となり、体調不良や免疫力低下につながりやすい。緑黄色野菜を中心に、野菜をもっと摂る食生活が望まれる。

一方で、伝統的な和食の問題点といわれる塩分の摂りすぎは、かなり改善されている。戦争直後には1日平均25グラム前後あった塩分摂取量は、その後は徐々に減り続け、2004年には10.7グラムまで低下した(厚生労働省「国民栄養調査結果の概要」による)。厚生労働省が推奨する10グラムに限りなく近づいているといってよい。

若い人に「朝食抜き」が増えている

現在、食生活の変化と併せて問題となっているのは、朝食を摂らない人が増えていることだ(図4)。朝食の欠食率は1999年以降増加しており、2004年時点では男性が12.6%、女性が8.7%となり、全体の1割が朝食を食べていないという結果がでた。なお、この調査では欠食の定義として、何も食べなかった場合に加えて、菓子、果物、乳製品、サプリメント、栄養ドリンク剤しか摂らなかった場合も含まれている。

図4 朝食の欠乏率(1歳以上)

なかでも20歳代では、男性34.3%、女性22.0%が朝食を食べておらず、さらに20歳代の一人暮らしをみると、男性65.5%、女性29.0%もの欠食率となっている。心配なのが、子どもの欠食率が多いことだ。1〜6歳で5.4%、15〜19歳では12.4%もの子どもが朝食抜きであることが調査でわかった。

朝食抜きの生活を続けると、健康にもマイナス面が多いと専門家は指摘する。朝食の役割として「体温を回復して身体活動を活発にする」「糖質を補給し、脳の活動を活発にする」「ホルモンや酵素の分泌を促す」といった要素が挙げられるが、これが朝食を抜くことですべて鈍る。仕事や勉強に集中できないばかりか、基礎代謝が落ちて肥満や不調の原因にもなるのだ。

また、昼と夜の2食で栄養素を補給しようとするため、どうしても夕食の比重が高まってしまうという欠点もでてくる。その結果、カロリーオーバーを招き、生活習慣病になりやすい体をつくってしまうことになる。もっとも、夜型の生活パターンでは、どうしても夜に多く食べてしまいがちである。そうなると、胃がもたれているのに無理やり朝食を食べるのは逆効果になる。そういう人は、朝食が食べられるように、生活を朝型のパターンにすることが先決だ。

食の乱れを改めるには、食事の内容に気を使うだけでなく、食生活や生活スタイル全般にわたる見直しも大切だ。さらにいえば、過度の残業や落ち着いて摂れない食事などを解消できるよう、社会全体の取り組みも不可欠だろう。

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