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食生活に関するアンケート([食ショック]縮む胃袋)

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[食ショック]縮む胃袋(全5回)

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gooリサーチ と 読売新聞 による共同企画調査

(1) 読売新聞 2008/01/07 東京本社朝刊
(2) 読売新聞 2008/01/08 東京本社朝刊
(3) 読売新聞 2008/01/09 東京本社朝刊
(4) 読売新聞 2008/01/10 東京本社朝刊
(5) 読売新聞 2008/01/12 東京本社朝刊

gooリサーチと読売新聞社による共同企画調査<第64弾>

食生活に関するアンケート

~[食ショック]縮む胃袋~

(1)もの食わぬ人々

◆高齢化、健康志向で市場縮小 生き残りへ「異分野」提携

食生活の変化が、食品産業の業界地図を大きく塗り替えようとしている。生産量日本最大級のトマトジュース工場に、アサヒビールのトラックが出入りする。カゴメ那須工場(栃木県那須塩原市)の光景は、カゴメとアサヒの包括提携の象徴だ。

アサヒのトラックは、福島工場から栃木県の特約店までビールを運んだ後、那須工場に立ち寄ってカゴメの製品を積み込む。全国ではアサヒの9工場とカゴメの6工場で同様の取り組みが進み、共同配送網は44ルートに広がった。

アサヒは昨年2月、カゴメに10・05%(166億円)を出資し、筆頭株主となった。両社とも、足元の業績が悪いわけではない。カゴメは野菜飲料最大手で、その市場は「2ケタの成長が続いている」(喜岡浩二社長)。アサヒも発泡酒などを含むビール類で最大手の座を維持している。それでも提携に踏み切った理由を、アサヒの荻田伍社長は、「アルコールだけでいつまでやれるかを考えた」と打ち明ける。

両社を結びつけたのは、少子高齢化と人口減を背景に、食品産業に流れ込むお金が急減している現実だ。食品メーカーと飲食店、関連流通業を合わせた食品産業の市場規模は、1998年度の約93・1兆円をピークに、2005年度には約85・4兆円(農水省調べ)と7年間で8兆円も落ち込んだ。酒類に売り上げの67%を依存するアサヒには、消費者の健康志向の高まりや若者のアルコール離れも追い打ちをかける。

アサヒがカゴメとの共同開発1号に選んだのは、トマト果汁を利用した低アルコール飲料。アルコール離れを健康志向で食い止めたい意図の反映だ。

■伸びる冷凍食品

異分野同士の再編・提携は、これにとどまらない。即席めん最大手の日清食品は、昨年11月22日、日本たばこ産業(JT)とともに、冷凍食品大手・加ト吉の買収を発表した。

背景には、単身世帯が増えたり、家族がばらばらに食事を取ることで、一人で食事を食べる「個食化」が進んでいることがある。

「個食」の代表的な食品だった即席めんだが、国内生産量は04年度をピークに減り始め、06年度は前年度比2・5%減の53億500万食と頭打ちだ。一方で冷凍食品市場は、冷凍流通網の発達や冷蔵庫の大型化などで06年の生産量は154万トンと96年比で約8%拡大した。食品産業では数少ない成長株だ。

未婚、晩婚化の影響で、年収も高く味にこだわる単身世帯は増える一方だ。こうした層は即席めんより冷凍食品に流れる。日清の安藤宏基社長は、「即席めんは08年に50周年を迎える。新たな展開として多角化していきたい」と冷凍食品市場に期待する。

■企業規模の拡大

牛丼チェーン2位の「すき家」を展開するゼンショーは、昨年だけで、ファミリーレストラン1社と、回転ずしチェーン2社を傘下に収めた。外食だけでなく、しょうゆやパスタなどの食材メーカーも含め、2000年以降、グループ化した企業は計11社に達する。

例えば牛肉なら、バラ肉は「すき家」、もも肉とランプは「ココス」、ロースは「牛庵」という具合に店に応じて使い分け、大量仕入れでコストを減らした。一方で、不二家や赤福などの相次ぐ食品不祥事で消費者の関心が高まっている安全対策費を増やしている。小川賢太郎社長は、「品質や安全性などに対する消費者の要望は強まるばかり。一定規模の企業でないと対応できない」と説明する。

「より安く、より安全に」との消費者の要望に、一足早く再編で応えたのが小売業界だ。セブン&アイ・ホールディングスの連結営業収益(売上高)は5兆3300億円、イオンは4兆8200億円(07年2月期)に達している。巨大な売り上げを武器に、小売業界の食品メーカーに対する価格交渉力は強まる一方だ。

メルシャンを子会社化したキリンホールディングスの加藤壹康社長は小売りに対抗するために連結売上高3兆円を目標に掲げ、規模拡大を急ぐ。そのために09年までに3000億円のM&A(企業の合併・買収)資金を用意したが、すでに4500億円を使った。

コスモ証券投資調査部で食品業界を担当する馬目俊一郎氏は「07年は食品業界再編の序章に過ぎない。08年は原料高や原油高をきっかけに、小売りに対し価格転嫁できない企業が生き残りをかけて再編に打って出る」と予測している。

《1000人アンケート》

Q.1日の食事の量について、あなたはどう意識していますか。
食べ過ぎないように心がけている68%
努力して量を控えている6%
食べたいだけ食べている26%

一日の食事の量について、あなたはどのように意識していますか。のグラフ


(2)消えゆく「一家団らん」

◆カレー・みそ不振

高齢化や核家族化を背景に、日本の食卓から、「団らん」が遠ざかりつつある。

味の素の2006年の調査では、平日に毎日のように家族そろって夕食を食べる家庭は、40代の主婦がいる家庭で30%、30代の主婦がいる家庭で34%に過ぎない。親と子供が毎日一つの食卓を囲む風景は過去のものになろうとしている。

「団らん復活」に向けてこの冬、食品業界が熱い視線を注ぐ商品がある。カレー味のだしをベースにした鍋料理「カレー鍋」だ。

大阪市中央区の「宮がみ屋」の店主、宮上誠吾さん(27)は、ブームの火付け役の一人だ。05年にカレーうどん店をオープンしたが、あっという間に行き詰まった。「起死回生で追加した」メニューが、大当たりした。カレー鍋を出すまで200万円を下回っていた月商は、昨年11月に480万円と過去最高となった。地元生協と組んで一般向けに売り出した「カレー鍋セット」は2か月で4万5000食が売れた。

このブームに大手メーカーも目をつけた。カレールー最大手のハウス食品は昨年10月、居酒屋などの業務用に「関西発カレー鍋スープ」を発売した。スーパーではルーを使ったカレー鍋も提案した。永谷園、日本水産、フジッコは一斉に、家庭向け商品を投入した。

■伸びる流動食市場

失われた団らんが、家庭料理の定番・カレーに与えた影響は大きい。ハウスによると、1997年に710億円だったカレールー市場は、販売単価の下落もあり、07年には約600億円に減った。ピークの99年に500億円だったレトルトカレーも、06年には370億円に落ち込んだ。ハウスの三宅素規・開発2課長(43)は、「カレー市場を引っ張ってきたのは、『団塊』よりやや上の世代だ。この層が高齢化し、カレーを食べなくなった」と説明する。

みそ業界3位のマルサンアイの本社工場(愛知県岡崎市)では、豆乳をベースにビタミンやミネラルを加えた流動食の紙パックが、ローラーの上を滑って次々と生産されている。

団らん風景の減少に苦しむのは、みそ業界も同様だ。みその市場規模は05年で約1271億円とここ5年で約19%も縮小している。一方で、かむ力が衰えている高齢者が増えたことから、流動食の市場規模は07年には前年比3%増の818億円(富士経済調べ)と、カレールー市場を上回るまでに急成長している。マルサンアイの下村釟爾(はつじ)社長は「病院や介護施設だけでなく、在宅の寝たきりの人向けにも広がる。2、3年後には、売上高を30億円に倍増させたい」と期待する。

■「ご用聞き」復活目指す

家族を最大のターゲットにしていた外食産業も、高齢者を無視できなくなってきた。

リンガーハットは、昨年9月、千葉県市川市に宅配専門1号店を開店させた。ちゃんぽんの「リンガーハット」とトンカツの「とんかつ浜勝」が近隣の住宅街に配達する。店舗までなかなか足を運ばない高齢者の市場を開拓する狙いだ。ペットボトル入りの水とコメも試験的に宅配し、「ご用聞き」の復活を目指す。ファミリーレストラン大手すかいらーくやモスフードサービスも宅配事業を強化している。

団らんから高齢者へ。日本の家族の変化を受けて、食品産業も大きく変わろうとしている。日本政策投資銀行調査部の大場達史調査役は「高齢化社会が進むと1人当たりの食べる量は減る。一つ一つの市場規模は大きくなくても、付加価値の高い商品の開発を行うことが必要」と指摘している。

《1000人アンケート》

Q.最近(例えば3年前に比べ)自宅でカレーライスを食べる回数はどう変化しましたか。
変わらない62%
減った26%
増えた9%

最近、自宅でカレーライスを食べる回数はどう変化しましたか。のグラフ

Q.「減った」と答えた人に。その理由はなんですか。二つまでお選び下さい。
家族そろっての食事が減った29%
一度作ると、何回か食べ続けないといけない27%
好みが変わった16%
カレーを外で食べる機会が増えた10%
カレーに飽きた5%
その他31%

自宅でカレーライスを食べる回数が減った理由を以下からお選びください。(2つまで)のグラフ


(3)ユーロ高、欧州に競り負け 魚も肉・・・

◆魚も肉も「高値」の花に

歴史的なユーロ高や原油価格の高騰が、食品業界を激しく揺さぶっている。

解凍されたマダラを作業員が手と機械で次々に三枚におろしていく。宮城県塩釜市のタラ加工業「ヤママサ」は昨年末、年間で最も忙しい時期を迎えていた。冬の鍋を代表する食材のマダラは、輸入の9割が北米・アラスカ産だ。水産商社などが輸入した冷凍マダラを加工業者が切り身にする。大手の「ヤママサ」の場合、年間出荷量は3000トンに達する。

だが、マダラの高騰で、忙しさが利益に結びつかない。ヤママサは今シーズンからマダラの刺し身も本格的に手がける。「付加価値のある商品を出さないと生き残れない」。三島政人代表取締役の表情は厳しい。
アラスカ産マダラの買い付け価格は、2005年に急上昇した。ヤママサの場合、1キロ・グラム当たり350円前後だったが、07年は660円と2倍近くに跳ね上がった。一方で国内価格への転嫁は進まない。この2年で「20を超える市内の業者が廃業に追い込まれた」(業界関係者)という。

価格急騰の一因はユーロ高だ。2002年に1ユーロ=1ドル前後だったユーロ相場は、最近では1・5ドル近くまで上がり、北米マダラに対する欧州業者の購買力は格段に高まった。日本はポルトガルなどに「買い負け」している。

■マダラ激減

輸入量の減少は著しい。00年には米国産マダラの52・4%が日本に輸出されていたが、06年は19・4%に落ち込んだ。07年1〜10月のマダラの輸入量は前年同期に比べ、41・3%も減った。みやぎ生活協同組合は「寄せ鍋セット」(4〜5人用)のマダラの切り身を例年より1割減らした。

塩釜市のタラ加工業、「マルケン菊地商店」の菊地秀行社長は「このままでは、タラがスーパーから姿を消すかもしれない」と危機感を募らせる。ユーロ高の影響は欧州産の食材にも及んでいる。

食肉最大手の日本ハムは昨年9月、ハムやソーセージの出荷価格を10%引き上げた。主原料のデンマーク産豚肉の価格が上がったのが原因だ。デンマークの国内価格は、子豚の数が増えたため前年比で下落気味だ。それでも、ユーロが対円で、06年秋の1ユーロ=150円前後から昨秋には160円台へと上昇し、輸入価格は上がっている。高値でも買うロシアなどのライバルもいる。「提示された価格に対し、『いる』『いらない』を判断するだけ」。加工事業本部の前田茂部長は交渉の余地がない買い付けの舞台裏をこう打ち明ける。

■食品トレーも

原油高も頭痛の種だ。

食品トレーの製造大手、エフピコ(広島県福山市)は昨年11月、約3年ぶりにトレーの出荷価格を10%値上げした。主原料となるポリスチレンなどの価格が、原油価格の高騰で3年前の2倍になったためだ。

食品トレーの単価は、鶏もも肉を載せられる標準的なもので1枚2円ほど。食品価格が変わらなくても、値上げ分は消費者か流通業者が負担することになる。「販売価格に転嫁できるのだろうか......」。地中海産の蓄養クロマグロを輸入する商社マンは不安な表情を見せる。

ユーロ高や原油高に伴う輸送費、冷凍庫の電気代などの上昇で、1キロ・グラムあたり約2500円で輸入・加工できた地中海産クロマグロは今では3250円程度もする。しかし、消費者の財布のヒモが固くなれば、値上げ分は自らかぶるしかない。しょうゆ、マヨネーズ、カップめん。身近な食品では値上げが目立ち始めた。円高を背景に世界中の食料を買い集めた時代は、終わろうとしている。

《1000人アンケート》

Q.食品の値上げが相次いでいますが、買い物はどう変わりましたか。二つまでお選び下さい。
必要以上のものは買わなくなった40%
より価格の安い店で買うようになった27%
加工食品などで安いものがあれば買いだめをするようになった16%
買う食品の量を減らしている14%
買うものの価格のレベルを落とした7%
特に変わらない33%

食品の値上げが相次いでいますが、あなたの買い物はどのように変わりましたか。以下からお選びください。(2つまで)のグラフ


(4)安心軽視のツケ、信用に傷

◆新ブランド、6年出せず

不二家、赤福、船場吉兆――。相次ぐ有名食品企業の不祥事は消費者のブランド神話に傷を残した。

横浜市緑区にある雪印乳業横浜チーズ工場は、日本のチーズ消費量のほぼ1割に当たる約2万8000トン(2006年)を出荷する国内有数の生産拠点だ。そこで今、「雪印北海道100」ブランドのチーズがフル生産されている。

新ブランドの売り上げは好調で、初年度の目標200億円の達成が見えてきた。同工場の荻原整・総務課長は、「失われた信頼がようやく回復してきた」と目を細める。00年6月に起きた牛乳の食中毒事件と、02年1月に発覚した子会社の雪印食品(解散)による輸入牛肉の偽装事件で、雪印の企業イメージは地に落ちた。連結売上高は事件直前の00年3月期の1兆2877億円から、3年後の03年3月期には7270億円と4割以上も減少した。家庭用事業部営業企画グループの内田宏己課長は「食品は体内に入るものだけに、安全性への信頼が損なわれると、イメージダウンは大きかった」と振り返る。昨年3月に発売した「北海道100」は、実に6年ぶりの新ブランドだ。

■損失1200億円

ブランドを無形資産ととらえ、売上高、広告宣伝費などの決算資料をもとにその推計方法を開発した早稲田大商学部の広瀬義州教授らの試算によると、雪印の場合、二つの不祥事が発覚した後の02年度に1234億1100万円だった企業全体のブランド価値は、翌03年度には458億4700万円と1年で約3分の1に激減していた。新商品の投入や広告宣伝の自粛の影響で、06年度には23億9000万円まで落ち込んだ。4年間の損失は1200億円以上に達する。

消費期限切れの原材料の使用が発覚した洋菓子製造大手「不二家」の場合は、06年3月時点では726億円あったブランド価値が、07年3月には488億円に低下した。07年1月の発覚後2か月で約240億円が吹き飛んだ。安全軽視のツケは、限りなく大きい。

■消費者心理を重視

安心志向の高まりをブランド戦略に生かす企業もある。

「ほうれん草 茨城県大沼中央園芸組合 旬をむかえ、栄養価も高まり、ぐっとおいしくなります」ファミリーレストラン「シズラー」の桜新町店(東京都世田谷区)には、その日に使う約60種類の生鮮品の産地や生産者名が記されたボードが置かれている。

運営会社ロイヤルカジュアルダイニングの用松(もちまつ)靖弘社長は、「安全・安心なものを提供しないと客に受け入れられない」と話す。かつては効率を重視し、肉類は冷凍、野菜は工場でカットしていたが、今ではジャガイモ一つとっても、旬の素材を求めて、年に4、5回、産地や種類を変える。食材が切れたら、メニューを中止するという。

昨年10、11月、東京・有楽町と埼玉県川口市に相次いで出店したアメリカの老舗ドーナツ店「クリスピー・クリーム・ドーナツ」には行列が絶えない。本国で70年も愛されてきた調理法を忠実に守るため、店の機械や製造マニュアルは本社から取り寄せた。運営支援に当たるリヴァンプの沢田貴司代表パートナーは、「ブランドとは消費者との『約束』だ。クリスピーで言えば、アメリカの味をそのまま温かい状態で渡すことだ」と強調する。

消費者との約束を破れば、代償は大きい。誠実な取り組みこそ、ブランド価値を高める近道といえる。

《1000人アンケート》

Q.安全性に関する不祥事を起こしたメーカーの食品について、どういう対応を取っていますか。
絶対買わないようにしている18%
なるべく買わないようにしている56%
あまり意識していない22%
意識していない4%

偽装表示など、安全性に関する不祥事を起こしたメーカーの食品について、どういう対応を取っていますか。のグラフ


(5)産直取引や通信販売拡大

◆卸業者、「中抜き」に危機感

スーパーなどの小売業者は産地との直接取引を増やしている。消費者はインターネットで各地の名産を「お取り寄せ」する。食品流通の現場では、中間流通(卸)業者を経由しない「中抜き」が大規模に進んでいる。

大みそかの午前5時30分。関門海峡に面した唐戸市場(山口県下関市、地方卸売市場)は、夜明け前から正月用の鮮魚を求める多くの買い物客でにぎわっていた。荒天で時折、突風が吹き抜ける構内では、水揚げされた魚介類を運ぶフォークリフトや鮮魚を積んだ水槽車がせわしなく行き来する。一般客の車も加わり、大混雑だ。

「安いよ、安いよ」「半値でもいいよ。どうぞ、買っていって」――。売り場一帯に仲卸業者の威勢のいい声が響き渡る。4〜5キロ・グラムの長崎産ハマチやヒラマサが次々とさばかれ、空き箱が積み上がっていく。

唐戸市場は2005年に国の「水産特区」となり、今は消費者向けの観光市場を前面に打ち出す。卸売りもするが、かまぼこやカズノコなどの海産物加工品や総菜店、精肉店などの小売店が軒を並べる。

訪れる消費者は年間約200万人。自治体や市場関係者の視察も多い。下関市の久保田洋一・地方市場課長は「小売りを行うには、営業時間の延長や販売単位の小口化など手間がかかる。仲卸しに意欲があるかがカギ」と秘訣(ひけつ)を語る。

生鮮食品を扱う公設卸売市場の地位低下は深刻だ。中央と地方の卸売市場を経由して取引された食品量の割合(卸売経由率)を見ると、1993年度に80・0%だった青果は、04年には65・8%まで下落した。同様に水産物は70・2%から62・9%、食肉は16・3%から11・6%まで落ち込んだ。唐戸の「実験」も生き残りをかけた苦肉の策といえる。

■メニューも提案

一般食品を扱う卸業者にも厳しい風が吹き付けている。

千葉県船橋市内にあるイオングループのレストラン「四六時中」では、タレにつけ込んだマグロの肉を、熱した石鍋のなかでご飯やナムルと一緒に食べる「マグロびびんば」が人気だ。

メニューを仕掛けたのは、三菱商事系の食品卸・菱食だ。取引先のマグロ輸入会社から、刺し身を取った後の頭と尾を大量に買い込み、タイの工場に運んで加工し、再輸入した。

頭と尾は調理の手間がかかるため、飼料となるか、廃棄されていた。だが、栄養が豊富で味もいいため、取引先の加工工場から「商品化したい」という声が出ていた。中野勘治副社長は「(ものを右から左に流すだけの)ただの卸では、今のマーケットに対応できない。小売りとメーカーを結びつける機能を生かし、新たなニーズを掘り起こしたい」と話す。

■倒産年300件

04年の食料・飲料の卸売業の商品販売額は、ピーク時の1999年に比べて11・4%減の43兆8122億円まで減少した。東京商工リサーチの調べでは、食品卸の倒産件数は中小を中心に毎年300件を超えている。菱食、伊藤忠商事系の日本アクセス、独立系の国分の大手3社は苦境の中小を吸い寄せるように次々と系列化を進めている。

日本アクセスは全国のスーパーに、内臓脂肪による肥満(メタボリック症候群)予防を目的にした特定保健用食品やサプリメントの陳列を提案している。07年3月には医薬品卸のアルフレッサホールディングス、シーエス薬品と業務提携し、健康関連商品を大幅に強化した。

尾上宏・営業企画部長は「大手小売りからの要望に応えるためには、食品だけでなく、サプリメントなども豊富にそろえる必要がある」と話す。食品卸から、「食品」の二文字が取れる日も遠くないかもしれない。

《1000人アンケート》

Q.インターネットや通信販売で、食材を購入したことはありますか。
ある57%
ない43%

インターネットや通信販売で、食材を購入したことはありますか。のグラフ

Q.「ある」と答えた方に。その理由を二つまでお選び下さい。
スーパーなどでは手に入らない食材が欲しかったから51%
自宅で気軽に注文できるから51%
値段が安いから20%
買い物にでかける手間が省けるから16%
新鮮だから7%

インターネットや通信販売で食材を購入した理由をお答えください。(2つまで)のグラフ

アンケート結果

読売新聞がgooリサーチと共同で、07年12月19日から21日まで実施。有効回答数1076。全国の13歳以上の男女を対象に国勢調査の比率にあわせて回収。(小数点以下四捨五入)

YOMIURI ONLINE−読売新聞 食ショック@YOL

<調査概要>

  • 実施期間: 2007/12/19~2007/12/21
  • 有効回答数: 1,076

NTTコム リサーチは、平成24年10月1日にエヌ・ティ・ティ レゾナント株式会社からNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社へ事業譲渡され、平成25年12月9日にgooリサーチより名称変更いたしました。gooリサーチの調査結果(共同調査含む)等についてはこちらまでお問合せください。

この調査結果の単純集計を無料にて提供しています。

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