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子ども格差の現状

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テーマ「生きる」

日本の子どもの貧困率は先進国ワースト10位

近年、社会問題として大きくクローズアップされている「格差」。格差には、正社員と非正規雇用で働く人の間の収入・雇用格差や、大都市部と地方の間の地域格差などがよく取り上げられるが、根深い問題のひとつとして「子ども格差」が挙げられる。

ここで少々ショッキングなデータを紹介したい。〔図1〕はOECD(経済協力開発機構)加盟24カ国の子どもの貧困率を示したものだが、日本は14.3%(2000年)とOECD平均の12.1%を上回るワースト10位、しかも片親世帯に限ると57.3%のワースト2位という惨状だ。かつては"1億総中流"とも形容され格差が少ないといわれてきた日本だが、バブル崩壊後の「失われた10年」を経て格差が広がり、それが子どもにまで波及していることがうかがわれる。

図1 OECD加盟国の子どもの貧困率のグラフ

子どもが貧困状態にあるということは、進学などに際して本人の希望にかかわりなく選択肢が限定されることが多くなる。そのため、「子ども格差」は「教育格差」と言い換えることもできる。教育格差はひいては就業格差・収入格差にもつながることから、親の貧困が世代を越えて伝承され、「格差の固定化」へと至る可能性が高く、看過できない問題だ。2007年1月にgooリサーチと読売新聞が共同で行った「格差に関する調査」によると、66%が「親の経済力によって生まれる教育格差」が「拡大している」と考えており、59%が「格差の固定化」を問題視している。この数字が示すように、子ども格差とそれに伴う格差の固定化への関心が高まってきているといえよう。

正社員と非正規雇用の生涯賃金は4倍の開き

次に、子ども格差の前提となる親の収入差はどれくらいあるのかを見てみよう。労働政策研究・研修機構の算出によると、男性一般労働者の学歴別の生涯賃金(退職金を含む)は、大卒・大学院卒が3億4620万円、高卒が2億5320万円、中卒が2億2410万円で、大卒・大学院卒と中卒の間には1億2210万円の差がある。また、派遣労働者の平均時給額1281円(厚生労働省「2004年派遣労働者実態調査結果」)から非正規雇用者の生涯賃金を計算すると(1日7時間、月20日、40年間働いたと仮定)約8600万円と、大卒・大学院卒と4倍もの開きが出てくる。学歴はもちろんのこと、就労形態による収入差には歴然としたものがある。

収入格差の象徴ともいえるのが母子世帯だ。厚生労働省の「2006年度全国母子世帯等調査結果報告」によると、67.5%の母子世帯が母子のみで生活しており(2番目に多いのが親と同居28.2%、その次が兄弟姉妹と同居9.2%)、母親の両肩に家計がずっしりとのしかかっているのがわかる。就業している母親のうち、事業主または常用雇用者であるのが46.5%である一方、臨時・パートが43.6%、派遣社員が5.1%と、半数近くが非正規雇用にある。こうしたことから、母子世帯の母親の平均年間就労収入は171万円に過ぎず、200万円未満が7割以上を占める〔図2〕。

図2 母子世帯の母の年間就労収入の構成割合(2005年)のグラフ

社会保障給付金(生活保護手当、児童扶養手当など)や養育費、仕送りなどを加えた全収入でも213万円と、女性の平均給与額271.2万円(国税庁「2007年分民間給与実態統計調査」)より60万円近く低い水準にある。

東大の学生の親の半数は年収950万円以上

こうした親の収入の違いが子どもの進路に与える影響は少なくない。こども未来財団の「子育て家庭の経済状況に関する調査研究」から、親が希望する子どもの最終学歴を世帯収入別に見ると、年収400万円を境に大卒・大学院卒が半数以上を占めるようになり、その比率は高収入世帯ほど高くなる〔図3〕。大学受験に際しては、予備校に通ったり、場合によっては家庭教師を頼むケースもあることから、何かと出費がかさむ。日本最高レベルの大学である東京大学に通う学生の親の年収分布を見ると、年収950万円以上が45.7%と半数近くを占め、450万円未満は13.4%にすぎない〔図4〕。家計支持者の職業・職種を見ても「従業員1000人以上の民間企業に勤める管理職」が16.8%と最多である。私学に比べて学費が安い国公立大学でさえ、「勝ち組」家庭の子どもの比率が高くなっているのが実状なのだ。

図3 子供に進学してほしい学校のグラフ

図4 東大生の主たる家計支持者の年収額分布のグラフ

「教育は子どもに残せる最大の財産」と考える親は少なくないだろう。とはいえ、幼少時から "お受験"のために毎月多額の教育費を支出する家庭がある一方で、子どもの教育にお金をかけたくてもかけられない事情を持つ家庭もある。こうしたなか、財政状況が逼迫している大阪府では私学助成削減への動きがあるなど、家計の教育費負担がさらに増える可能性もある。

家庭の経済状態によって、子どもの教育のスタートラインが変わってしまうという状況は容認できるものではない。GDPに占める公財政支出(国+地方)による学校教育費の比率が先進国のなかでも低い水準にある日本の現状〔図5〕を考えても、意欲のある子どもが等しく教育の機会を得られる体制づくりは急務である。

図5 国内総生産(GDP)に占める公財政支出学校教育費の割合のグラフ

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