NTTコム リサーチ と 日本オープンオンライン教育推進協議会 による共同企画調査
報道関係者各位 2016年11月30日
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会
大学のオープン化に関する調査結果(2016)
社会人の学び直しの希望手段は無料のWEB講座と書物。MOOCでの学習に期待
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本 良江、以下NTTコム オンライン) は一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(所在:東京都文京区、理事長:白井克彦 (放送大学学園理事長) 以下、JMOOC)と共同で「大学のオープン化に関する調査」を実施しました。
本調査は毎年実施しており、今回は10回目の実施となります。NTTコム オンラインが運営するインターネットアンケートサービス「NTTコム リサーチ」(旧 gooリサーチ)(*)の登録モニターのうち全年代の方を対象に調査を実施し、有効回答者数は1191名でした。
総括
2012年にアメリカで始まった「MOOC」は今やヨーロッパ、アジア、インドなど世界中に広がりをみせ、すでに全世界では4000万人以上が受講していると言われている。一方、日本においては、2014年4月からその取り組みがスタートして2年半が経過し、受講者は27万人にまで拡大した。未だ世界とは開きがあるものの、この取り組みへの好評価は8割以上に達し、その認知度や利用意向率も徐々に向上してきている。
一方、ITを活用した教育"Edtech"の進展によって、いつでもどこでも手軽に学べる環境が整いつつあるものの、社会人の「学び直し」経験者は未だ少ないのが現状である。しかし、今後の学び直しを希望する層を合わせると、その率は約半数に上った。学び直しの希望の手段としては、無料のWEB講座と書物を求める声が多く、今後、MOOCでの学びにはポテンシャルが高いことがうかがえる結果となった。ひいては、今後の教育のあり方が大きく変化する可能性もうかがえる。
なお、MOOCで学習したい分野は、昨年同様、歴史、心理学、音楽・映画が男女ともに強く、その他分野では、男性はビジネス・実学系に、女性は生活に密着した分野に関心が高い結果となった。
調査結果のポイント
(1) MOOCについての良い評価が84%
大学の講義等を無償のオンライン講座で学べる「MOOC」は、講義を閲覧・学習後、課されたテストや課題について修了条件を満たした学習者には修了証が発行される教育サービスであり、2014年4月から日本でもこの取り組みが始まっている。この教育サービスへの評価は非常に高く、認知度も昨年に比べて向上した。未だ大多数の人には利用経験がないものの、利用経験者は昨年調査の2.6%から5.4%と3ポイント近く上昇し、未経験者における今後の利用意向率44.5%と合わせると約50%となり、半数の人がMOOCへの利用意向を示している。
(2) MOOCでの希望の学習分野は、男性は「歴史」、女性は「心理学」への関心が高い
学習したい分野についての希望は、順に歴史(28.4%)、心理学(28.2%)、経済学・金融(25.3%) 、音楽・映画(24.3%)、芸術(22.8%)と、上位2分野が他よりも少し多い傾向にあるが、特定分野が極端に多いわけではなく、教養系科目と実務系科目に万遍なく希望が分散しており多様なニーズが示されている。また10位までに入った分野は昨年度の調査結果と同一であり、普遍的な傾向であることがうかがえる。男女別でも昨年同様、男性ではビジネス・実学系への関心が高く、女性は生活に密着した分野に関心が集まる結果となった。
(3) 講師による直接対面授業である「対面学習コース」への受講意向は75%
日本独自の取り組みとして、講義動画受講後に講師本人から直接講義が受けられる「対面学習コース」が設定されており、その数は講座全体の約4割におよぶ。この対面学習への受講意向は75.0%と昨年度(68.8%)よりも約6ポイント向上した。受講希望の理由は、講師から直接講義が受けられる、分からない部分を直接質問できる、同じテーマに興味を持つ受講生と議論ができるなど、積極的な交流を望む姿勢が見うけられた。
(4) 「修了証」はモチベーション維持に有効。自己PRへ繋がるとの期待が高い
MOOCでは、講義動画受講後に課題やレポートを提出し、得点合計が所定の水準を越えると修了証が取得できるが、その修了証については、大半(79.1%)がその必要性を感じており、モチベーション維持や自己PRに繋がるなどのメリットを感じていることが読み取れた。
(5) 社会人の「学び直し」経験者と今後の学び直し希望者の合計は約半数の46.9%。学び直し手段は、無料のWEB講座と書物を希望。MOOCの活用に期待
社会人になってからの「学び直し(学生時代に専攻した科目について)」率は経験者が16.7%(未経験者83.3%)と、低い値となったものの、今後学び直ししたいと考える層(36.3%)と合わせると46.9%に達した。また、希望する学び直しの手段としては、無料のWEB講座が60.8%、書物による自主学習が58.3%と高い値となった。なお、"学び直し"に限らず、社会人になってからの研修や通信教育、スクール等での学習機会全般について見てみると、過去および現在の受講者が29.6%、今後の受講意向者を合わせると44.8%になり、同じく約半数の人が学習機会を望んでいることがわかった。機会があれば取得したい能力・知識は、「語学に関する知識」「PCを含むIT関連の知識」への希望が高く、具体的な資格では、「TOEIC」が圧倒的に高い結果となった。
調査概要
調査対象 | 「NTTコム リサーチ」登録モニター |
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調査方法 | 非公開型インターネットアンケート |
調査 | 大学のオープン化に関する調査 |
調査期間 | 平成28年9月6日(火)~平成28年10月10日(月) |
有効回答者数 | 1191名 |
回答者の属性 | 【年代】 男性 10代:4.3%、20代:9.0%、30代:9.1%、40代:9.1%、50代:9.0%、60代以上:9.2%、 女性 10代:5.1%、20代:9.0%、30代:8.9%、40代:9.0%、50代:9.2%、60代以上:9.2% 【職業】 会社員:34.3%、公務員・団体職員:5.2%、自営業:7.1%、学生:10.6%、アルバイト・パート:11.8%、専業主婦・主夫:18.3%、無職:11.1%、その他:1.8% |
《 補足 》
(*1) NTTコム リサーチ(旧gooリサーチ) http://research.nttcoms.com/
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(http://www.nttcoms.com/)が提供する高品質で付加価値の高いインターネットリサーチ・サービスです。
自社保有パネルとしては国内最大級のモニター基盤(2016年11月現在 217万会員)を保有するとともに、「モニターの品質」「調査票の品質」「アンケートシステムの品質」「回答結果の品質」の4つを柱とした「クオリティポリシー」に基づく徹底した品質確保を行い、信頼性の高い調査結果を提供するインターネットリサーチとして、多くの企業・団体に利用されています。
なお、2013年12月9日に、モニター基盤の拡大を機にサービス名称を「gooリサーチ」から「NTTコム リサーチ」と名称を変更し、サービスを提供しています。
<本件に関するお問い合わせ先>
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
リサーチ&CRM本部
TEL:03-4330-8402
URL: http://www.nttcoms.com/
メールアドレス:research-info@nttcoms.com
一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会
担当:永井
TEL:03-3295-3555
URL:https//www.jmooc.jp
メールアドレス:secretary@jmooc.jp
調査結果データ
(1) MOOC(大規模公開オンライン講座)の認知・利用経験・利用意向・利用端末
前述のように、MOOC(Massive Open Online Courses)はインターネット上で、誰でも場所を問わず、無料で学習できる教育サービスであるが、このMOOCの取り組みについての評価を聞くと、8割以上が「良い」と回答し、高い割合を維持している。【図1-1】
一方、MOOCの認知度や利用意向を確認したところ、「知らない」の回答が78%と依然大半を占めるものの、「詳しく知っている」「知っている」層は合わせて14%と、昨年の13%から1ポイント上がるなど、毎年微増を続けている。【図1-2】
MOOCの利用については、利用経験者は5%と、昨年の3%から若干ではあるが増えている。今後の利用意向については、昨年に比べその率が若干下がったものの、「利用したいと思う」が45%あり、過去利用者、今後の利用希望者と合わせ50%という結果となった。【図1-3】
一方、MOOCを利用したくないと答えた層にその理由を聞いたところ、「時間が無い」「興味が無い」との回答が並び、「難しそうだから」が上位に入った。現在のJMOOC講座には、誰でも受講可能な生活に密着した講座も多く、これはMOOCへの理解や認知が浅いことが起因している可能性も考えられる。【図1-4】
なお、MOOCの学習端末は、絶対数ではパソコンの利用が多いものの、利用率は一段と減り、代わりにスマートフォン、タブレット端末、ガラケーといったポータブル端末の利用が伸びていることがわかる。【図1-5】
【図1-1】MOOCの取り組みの評価(N=1191)
【図1-2】MOOCの認知度(N=1191)
【図1-3】MOOCの利用経験・利用意向(N=1191)
※内側から順に2013、2014、2015、2016年調査
【図1-4】MOOC不支持層の理由(N=1191)
【図1-5】MOOCの学習端末(N=1191)
(2) MOOCで学習したい分野についての希望
学習したい分野の調査結果は、2014年から3ヵ年、上位10分野については、一部順位の入れ替えがあるものの、ランクインの分野に変動はなかった。【図2-1】
【図2-1】学習したい希望分野(全体)(複数回答 N=716)
■ 男女別の希望分野について
男女別では、男性は「歴史」、女性は「心理学」への関心が強くここ数年結果が同一であるが、全体では、歴史が心理学を1ポイント上回る結果となった。また、男性は1位の歴史を除けば、ビジネス・実務系分野への人気が高く、女性は生活密着系の分野に関心が高い。なお、歴史、心理学の他に、男女共通で関心が強い分野に、音楽・映画への関心が集まったものの、昨年同様、男女の差が明確に出た結果となった。【図2-2】
【図2-2】学習したい希望分野(男女別)
■ 性別年代別の希望分野について
男性は全般的に実学に繋がる分野に関心が集中している。「経済学&金融」については女性からの関心も見受けられるものの、「情報、テクノロジー&デザイン」「コンピュータサイエンス」「統計学&データ分析」については、年代を問わず圧倒的に男性の希望が強い。また、「ビジネス&マネジメント」は社会的に必要とされるだろう30、40代に希望が強い。なお、40代からは健康を意識し始め、60代にはそれが顕著に表れる結果となった。
一方、女性は、どの年代においても「心理学」に強い人気があり、その他全般的に生活に密着した分野に関心が集中している。また、30代以降は、「健康&社会」「予防医学」「栄養学」など、特に健康を意識した分野への関心が強くなる傾向がみてとれ、女性は特にライフステージ別に関心が異なっていくことがわかる。なお、女性の若い層には「ビジネス&マネジメント」「経済学&金融」への関心があり、今後社会に出る層として仕事への意欲や関心が見て取れるものの、年齢を重ねるごとにその関心が弱くなる傾向が表れる結果となった。【図2-3】
【図2-3】学習したい希望分野(性別年代別)
■ 職業別の希望分野について
職業別では、社会人層とそれ以外とで関心が異なる傾向が見られた。なお、社会人層の中でも、会社員や自営業などは「経済学&金融」「ビジネス&マネジメント」「情報、テクノロジー&デザイン」「コンピュータサイエンス」などの実学に直結する分野への関心が高い一方、公務員・団体職員については、実学系分野への関心が他に比べ相対的に低いことが読み取れる。
一方、学生、アルバイト/パート、無職といった定職を持たない層については、実学分野への一定程度の興味を確認でき、将来への関心や仕事への距離感を見てとれる。【図2-4】
【図2-4】学習したい希望分野(職業別)
(3) 日本独自の取り組み、講師による直接対面授業「対面学習コース」への受講意向
現在、日本版MOOCの独自の取り組みとして、オンライン学習だけではなく、講師から直接授業を受けられる対面型の「対面学習コース」(有料)が全体の約4割の講座で提供されている。
この対面学習への受講意向を聞いたところ、「是非受講したい」「できれば受講したい」といったポジティブに考える層が75%に達し、昨年の69%を6ポイント上回った。【図3-1】
また対面学習コースに期待することとして、「分からないことを直接先生に質問できる」「先生から直接講義が受けられる」「同じテーマに興味を持つ受講生と議論ができる」など、ポジティブな姿勢が見てとれ、特に「同じテーマに興味を持つ受講生と議論できる」(43.8%)が昨年(31.8%)より12ポイントが多くなり、より直接的なコミュニケーションを望んでいることがわかる。【図3-2】
また、「MOOC」を利用する場合、インターネット上で意見交換・質問などをする場が必要かとの問いには、約7割がその必要性を感じており【図3-3】、また、カフェなどでの意見交換や直接の対話を希望する層が昨年(42%)より6ポイント上がり48%になるなど、約半数が直接参加を希望していることがわかった。
【図3-1】「対面学習コース」の受講意向(N=64)
【図3-2】「対面学習コース」を受講したい理由(複数回答 N=48)
【図3-3】「MOOC」を利用する場合、ネット上で意見交換・質問をする場が必要か(N=598)
(4) 修了証のメリット
MOOCでは講義動画を受講後に課題やレポートを提出し、合格点に達したら修了証が取得できるが、その修了証の必要性を聞いたところ、「まあまあ必要」「とても必要」を合わせると79.1%がその必要性を感じており【図4-1】、その理由としては、モチベーション維持や自己PRに繋がるなどのメリットを感じていることがわかる【図4-2】
【図4-1】修了証の必要性の可否(N=594)
【図4-2】修了証の認定を必要とする理由(複数回答 N=470)
(5) 社会人の学習機会の有無
社会人に対して、学生時代に専攻した科目について「学び直し」の有無を聞いたところ、経験者は16.7%、未経験者は83.3%という結果となったが、学び直し未経験者に今後の学び直し意向を聞くと、3割強が学び直しをしたいと考えており、経験者と合わせると約半数(46.9%)が学び直しを望んでいることがわかった。【図5-1】
なお、学び直し経験者にその理由について聞いたところ、自己研鑽への意向も強いものの、仕事関係で必要といった理由が大半を占めた。【図5-2】
また、実際に学び直しをした際の手段としては、書物での自主勉強が群を抜いて圧倒的に多く、独学で学び直ししている実態が見てとれた。【図5-3】
一方、学び直し未経験者に今後の学び直しの希望の手段を聞いてみると、WEBでの無料講座と書物での自主学習が他を引き離して2大トップの結果となり、この2つの組み合わせでの学びが望まれることが見て取れる。【図5-4】これは、MOOCでの勉強によってそのニーズを満たせる可能性が高いことをうかがわせる。
また学び直しの費用について、自身の考えに近いものを全員に聞いたところ、先の学び直しの希望手段でも見えるように、「無料」を求める声が大半を占め、今後、MOOCを利用しての学習が進むことが望まれる。【図5-5】
【図5-1】社会人の学び直し経験の有無および今後の意向(N=1191)
【図5-2】学び直しの理由(複数回答 N=199)
【図5-3】学び直しした際の手段(複数回答 N=199)
【図5-4】学び直し希望の方へ希望する学び直し手段(複数回答 N=360)
【図5-5】学び直しの費用(複数回答 N=1191)