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余暇の過ごし方に変化は見られるか

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増える週休2日も余暇時間は増えず

「余暇」を辞書で引くと、「ひま」「余った時間」と解説されている。戦争直後の日本人は生きていくために必死だったし、高度成長期の「企業戦士」たちは旺盛に働き、社会に貢献することが自らの生活を豊かにすることだと考えた。労働すること、そして家族を養うこと。その上で時間が空けば、自分のために好きなことをやる。だから「余暇」。そう考えると、余暇を楽しむには何より時間の確保が大前提になる。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、1960年の労働者1人当たりの平均年間総実労働時間は2426時間だったものが、80年の労働基準法の改正を機に労働時間は年々減少していき、2005年には過去最小の1802時間を記録。45年の間に624時間という大幅な労働時間が短縮された。また週休制についても、1970年には完全週休2日や隔週休2日など「何らかの週休2日制」を導入している企業は全体の2割程度だったものが、2006年には89.4%と大半を占めており、数字上では余裕が生まれているように思える(図1)。

図1 主な週休制の形態別企業数の割合

しかし、国際的にみると日本人の労働時間はまだまだ長い。厚生労働省の「労働経済白書」によれば、近年労働時間が増加傾向にあるアメリカを除けば、先進国との間には依然大きな差がある(図2)。また2006年度に企業が付与した年次有給休暇は1人当たり平均17.9日だが、そのうち労働者が取得した日数は8.4日で、取得率は47.1%。つまり、取得できるはずの有給休暇の半分も消化していないわけだ。特別休暇制度についても「夏期休暇」は企業の約半数が取り入れているものの、「リフレッシュ休暇」は全体の17.1%とわずか。全体的に企業規模が小さくなればなるほど、完全週休2日制の割合は少なくなり、その他の休暇日数も減少傾向になっている。

図2 年間総実労働時間の国際比較(製造業生産労働者)

厚生労働省の「年間休日数の国際比較」を見ても、日本の年間休日数はドイツより16日、フランスより13日、イギリスより10日も少ない。「働きすぎる日本人」はまだまだ健在、余暇を楽しむための「時間のゆとり」が豊富とは、残念ながら言い難い現状だ。

余暇市場は80兆円超

しかし、時間のゆとりはなくても、余暇に対する需要は年々高まってきている。内閣府がまとめた「国民生活に関する世論調査」によると、今後の生活において何に力を入れたいかという質問に対して「レジャー・余暇生活」と答えた人は全体の36.8%に上り、1年前より増加している(図3)。余暇への関心が最も高まったのはバブル最盛期の1990年代前半だが、その後の長引く不況の最中でも横ばい状態が続いていることから、今や余暇活動は日本人の暮らしに欠かせない存在となっているということだろう。

図3 今後の生活の力点

(財)社会経済生産性本部の「レジャー白書2006」によると、日本の余暇市場は1996年には過去最高の90兆円を突破。その後、不況のあおりを受けて減少に転換し、近年は80兆円台で推移している。ホテルやゴルフ場、遊園地の閉鎖や価格破壊など、レジャー産業では生き残りをかけて大きな変革期を迎えており、時代のニーズに合わせた新たな動きが活発化している(図4)。

図4 余暇市場の推移

余暇を「スポーツ」「趣味・創作」「娯楽」「観光・行楽」の4部門に分類すると、唯一前年比増だったのが、観光・行楽部門。旅行業・国内旅行・ホテルはシニア層をターゲットに堅調、海外旅行需要も戻ってきている。スポーツ部門は1990年代に人気だったゴルフやウィンタースポーツは低迷気味で、代わりにテニススクールとフィットネスクラブに人気が集まっている。娯楽部門はギャンブルの伸び悩みが続く一方、宝くじが1兆円を突破して勢いを見せている。趣味・創作部門は薄型テレビやiPodなどの携帯型音楽ブレイヤーのヒットで、音楽、DVDなどのメディア関連が好調だ。

しかし、レジャー産業で最も大きなシェアを占めているのは、娯楽部門のゲームだ。ゲームセンターでのアーケードゲームとテレビゲームはともに好調だが、特に携帯型ゲーム機のヒットや脳トレブームによって近年ゲーム人口が拡大しており、幅広い年齢層が楽しめる遊びとして注目されている。

市場規模に続いて、人気のレジャーの参加人口をみよう。前出の「レジャー白書2006」によると、ランキングの1位は「非日常的な外食」、2位が「国内観光旅行」、次いで「ドライブ」「カラオケ」「ビデオ鑑賞」と続き、全体的に非日常的を求めた外出型レジャーが好調だ(表)。パソコン、音楽鑑賞といった自宅で楽しむレジャーはランクインながら減少傾向で、2005年までランク内だった「ジョギング・マラソン」「器具を使わない体操」など身近にできるスポーツも圏外となった。

表 余暇活動の参加人口(2005年・上位20位)

「余暇=若者」の時代は終わった

自由時間の過ごし方は、発散型のレジャーだけにとどまらない。ウォーキングやヨガなどのフィットネスブームや、ガーデニング、グリーンツーリズム、温泉施設、オーガニック食材のヒットなど、「自然」「癒し」をテーマとしたレジャーの台頭が近年の大きな特徴だ。内閣府の「国民生活に関する世論調査」の中でも6割以上の人が「今後は心の豊かさやゆとりのある生活をしたい」と回答していることから、物質面が満たされた現代、次は精神的な充実感を大切にしたいと考えている人が多いようだ。こうした意識の変化は、今後の余暇活動にも大きな影響を与えると予想される。

また、本格的な少子高齢化社会となった今、余暇においてもシニア化が進んでいる。「レジャー白書2006」が調査している91種類の余暇種目の中で、参加人口のほぼ50%以上が50歳以上の「シニア化種目」は30種目となり、全体の3分の1を占めた。1997年のシニア化種目は15種目だったことから、ここ10年間で急速にシニア化が進んだことになる。団塊世代の大量退職が始まる2007年以降、こうした動きはさらに加速していきそうだ。

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