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「家族の役割」とは何か

今日の家族を考えるとき、一つの指針として注目すべきデータがある。

内閣府が全国20歳以上の者1万人を対象に毎年実施している、「国民生活に関する世論調査」。その「生き方、考え方について」という章の中に入っている、「家庭の役割」の設問に対する2006年6月調査の回答である。

この設問形式は2001年に始まって現在まで継続しているもので、次の8項目から複数回答で「家庭の役割」を選択する。「家族の団らんの場」「休息・やすらぎの場」「家族の絆(きずな)を強める場」「親子が共に成長する場」「夫婦の愛情をはぐくむ場」「子どもを生み、育てる場」「子どものしつけをする場」そして「親の世話をする場」である。

2006年6月調査を注目すべき、と記したのは、この8項目の回答すべてが2001年以来最高の数字を記録しているからだ。当然、すべての項目で、前年を上回っているわけだが、こういうことは従来には見られなかった。全体として回答数が増えてはいたとしても、必ず凹んでいる項目もあったのである。

数字自体にも注目点はあって、たとえば「家族の絆(きずな)を強める場」は初めて50%を超えて54.9%を記録したし、「夫婦の愛情をはぐくむ場」もやはり初めて30%を超え、32.0%になっている。ちなみに、10年前の1996年にも同じ項目があるのだが、18.9%にすぎない。

この調査結果からすると、日本人は家族の役割の大きさにあらためて気づいて絆を強め、夫婦の、親子の関係を大切にしているように思われるが、しかし、"スローガンは実態の無いところに存在する"という鉄則もある。「横断歩道を渡りましょう」という標語の背景には、多くの人が横断歩道を渡らないという現実がある。この調査結果はどうだろう(図1)。

図1 家族の役割

「核家族化」は今も進んでいるか

家族が対象となると、必ず出てくるキーワードが「核家族」である。既に40年以上も前の1963年にデビューしたキーワードだが、果たして「核家族化」は現在も進行しているのだろうか。

これは、進行していないとも言えるし、しているとも言える。 統計上、「核家族」に分類されるのは、「夫婦と子供からなる世帯」と「ひとり親と子供からなる世帯」、そして「夫婦のみの世帯」である。この統計上の「核家族」の比率は1965年の62.6%をピークにして、むしろ暫減傾向にあって、昨年の国勢調査では57.9%になった。

が、「核家族」という言葉がクローズアップされたのは、「大家族」の反語としてだった。ならば、意味としては「核家族世帯」の中に「単身世帯」を入れてもおかしくはない。この「単身世帯」の比率は一貫して増え続けている。1985年の20.8%から2005年には29.0%へ、20年間で8.2ポイントも伸びている。

さらに、2010年には30%を超え、そして2025年には実に34.6%。3世帯に1世帯が「単身世帯」になると予測されている(図2)。 これに伴って、「平均世帯人員」は1985年の3.14から2005年には2.56へ。2010年には2.5を切り、そして2025年には2.37人になるという。世帯を構成する人間が限りなく少なくなっていくという意味での「核家族化」ならば、現在も確実に進行しているのである(図3)。

図2 家族類型別一般世帯割合の推移

図3 平均世帯人員の推移

出生率が低下しているのに、なぜ「単身世帯」が増え続けるかと言えば、「高齢者単身世帯」が増え続けているからだ。2005年の時点で既に、29歳までの27.0%に次いで多い年齢別単身世帯は70歳以上の20.8%である。これに60〜69歳を加えれば33.5%。さらに50〜59歳を足せば、47.3%とほとんど半分に迫る。そして2010年には、70歳以上が最も多い単身世帯になり、50歳以上で50%を超える(図4)。

図4 単身世帯の年齢階級別構成比の推移

厳しい時代だからこそ温かな家族へ

「家庭」の中を垣間見るデータも見てみよう。東京都の生活文化局が2002年に実施した「家庭等における暴力」調査の中に、「児童期に親から『平手で打たれたり、げんこつでなぐられる』行為を受けた経験」を年代別に問うものがある(図5)。

「昔は子供に厳しかった」という常識からすれば、年代が高くなるほど「経験あり」の回答が多くなるはずだ。ところが、表のようにほとんど逆と言ってよい。しかも、最も高い30代男性の比率は60.3%と、最も低い50代女性の倍ではきかない。甘やかされているはずの今の子供たちのほうが、親から暴力を受けている。

「昔はげんこつくらいはふつうだった」という言い方も通用しそうにない。「『足でける』ことが場合によっては許されるか」という設問に対して、男性に限れば、「許される」とした60代前半は4.6%、50代は10.5%だった。これに対して20代は16.2%、10代後半は24.4%だ。ある程度の暴力を許容するのは若い世代であり、その世代が親からの暴力を「経験あり」と答えている。

図5 家庭等における暴力

こうしたデータからすると、冒頭の「家庭の役割」の設問に対する2006年6月調査の回答は、やはりスローガンと思えてくる。しかし、すべての項目で過去最高を示したということは、単なる願望ではなく、厳しい環境の中で家族の絆を強めていこうという決意の露出と取れなくもない。日本の家庭が温かくなる、潮目かもしれない。

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