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フリーターは減少、ニートは横ばい

高校や大学を卒業したら企業に就職し、定年まで勤める――、こうした"典型的"就業パターンは、現代の若者の間では必ずしも標準的ではなくなってきている。

近年、若者の就労形態で増えてきているのが「フリーター」だ。フリーターとは、正社員にならずにパートやアルバイトで生計を立てている若年層のことだが、この言葉が世の中に登場したのは1980年後半のこと。「夢や目標を実現するため、あえて正社員にならずに、時間が自由になるアルバイトで生計を立てる」というポジティブなイメージもあり、自由な生き方にあこがれる若年層の間に浸透していった。

総務省統計局「労働力調査」によると、フリーター数は2003年には217万人にまで増加したが、その後は景気回復により新卒採用が活発化した影響もあって、漸減傾向にある。2006年のフリーター数は187万人と、前年より14万人減少した(図1)。これに伴い、若年層(15〜34歳)の人口に占めるフリーターの比率も低下してきており、2006年は5.9%と前年から0.3ポイント低下した。

図1 フリーターの人数の推移

フリーターとともに、若年層の間で増加しているのが、就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない「ニート(NEET)」と呼ばれる層だ。ニートはもともとは1990年代末にイギリスで生まれた言葉だが、数年前から日本でも使われるようになり、今日ではすっかり浸透した感がある。ニートの人数について厚生労働省では、15〜34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない「若年無業者」をこれに近い概念としており、その数は2005年には64万人と、ここ4年間横ばいの状態が続いている(図2)。

図2 若年無業者数

新卒採用抑制も一因

フリーター・ニートについて、一般にはどのような認識を持たれているのだろうか。gooリサーチが日刊工業新聞と共同で実施したインターネット調査によると、フリーターについては55.2%、ニートについては80.5%の人が「問題だ」と考えている。フリーター、ニートが増加している理由としては「甘やかし」が最も多く、以下「豊かさ」「教育」「就労構造、企業」と続く(図3)。豊かな社会で甘やかされて育った若者の行き着く先がフリーター、ニートである、という認識が強く、現代社会の歪みが反映されているといったところだろう。

たしかに、先に述べたような夢追い型のフリーターや、「正社員になって重い責任を負いたくない」といった消極的な理由からフリーターやニートを選択した人は、批判されても仕方がないかもしれない。だが、フリーターやニートが近年増加している一因として、1990年代中盤からの「就職氷河期」の影響で選択せざるを得なかった人が増えていることも見逃せない。

図3 ニート・フリーター増加の理由

文部科学省および厚生労働省の集計によると、新卒者の内定率は1990年代中盤頃から低下を続け、大卒者は1999年に91.1%、高卒者は2002年に86.7%まで落ち込んだ。その一方で、卒業後の進路が「一時的な仕事」や「無業者」である人の比率は1990年代後半から上昇し、大卒が2000年に26.7%、短大卒が32.6%にまで跳ね上がった(図4)。これは、厳しい就職戦線の中で、正社員での就職を望みながらそれが叶わなかった人や、最初から就職をあきらめた人がフリーターや無業者になったことが影響していると考えられる。

図4 大学・高校卒業者のフリーター・無業者比率と内定率

フリーターやニートの高年齢化の問題も見過ごせない。25〜34歳の比率はフリーターで48.2%、ニートでは60.9%に上る(ともに2005年)。フリーターでは業務経験や訓練を積む機会が少ないため、正社員として再就職を望んでいても実現は難しい。その結果、アルバイトやパートでの就労を続けざるを得ず、結果として固定化されてしまうという構図がみえてくる。

さらには、フリーターやニートは所得が低い、あるいはゼロであるために、経済的な自立がなかなか果たせない。厚生労働省によると、未婚のフリーターが親と同居している比率は、30〜34歳で60.4%で、正規従業員54.9%、非正規従業員58.4%と比べて高くなっている(2002年)。

フリーターやニートの増加は労働力の質の低下、ひいては日本経済の競争力の減退という事態にもつながりかねない。少子高齢・人口減少社会が本格化した日本にとっては早急に手を打つべき問題と認識されており、政府もこうした現状を看過しているわけではない。2005年5月には「フリーター20万人常用雇用化プラン」を打ち出し、年間20万人の常用雇用化を目指して施策を展開している。具体的には、若年層の就職支援として雇用関連サービスを1ヵ所でまとめて受けられるようにしたワンストップサービスセンター「ジョブカフェ」の設置や、一定期間試用雇用して適性や能力を見極める「トライアル雇用」、実習と教育機関による座学を組み合わせた実践的な教育訓練プログラムを提供する「日本版デュアルシステム」などが実施されている。その結果、2006年4月現在で22万5000万人(速報値)の常用雇用が創出されるという効果が表れており、2006年度には目標を25万人に引き上げて継続して就職支援が行われている。

働く意欲がありながら、時の巡り合わせに恵まれずにフリーターやニートとなっている人を救済するには、政策による誘導も必要だが、働き方は個人の選択による部分が大きいことも事実。家庭や学校での職業意識についての教育も併せて行う必要があろう。

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