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第4回「映画館での映画鑑賞」に関する調査

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洋画実写映画の復興の兆し。「アメリカン・スナイパー」のヒットの背景にシニア層のパワー

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お知らせ 2015年6月25日

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社

NTTコム リサーチ結果 (No.227)

第4回 「映画館での映画鑑賞」に関する調査

~洋画実写映画の復興の兆し。
「アメリカン・スナイパー」のヒットの背景にシニア層のパワー~

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本良江)が運営するインターネットアンケートサービス「NTTコム リサーチ」(*)は、「映画館での映画鑑賞」について、全国の10代~70代の男女を対象にアンケートを実施しました。有効回答者数は3,117名でした。この調査は2012年から同時期に実施しているアンケート調査の4回目となります。

総括

今回調査において、直近1年以内に映画館で映画鑑賞をした人(以下「映画館鑑賞者」)は全体の35.9%でした。これは前回(2014年)調査から5ポイント低下した結果であり、2012年調査から続く減少傾向のなかで最も低い数字となりました。しかし、その一方で、映画の鑑賞本数の構成比をみると、年間「1本のみ」の鑑賞者が減少し、「5本以上」を観る鑑賞者が増加しました。この結果より「鑑賞者は絞られたが、1人あたりの平均鑑賞本数は増加」という変化がうかがえます。

また、日本の映画興行市場で久しく続く「邦高洋低」傾向において、本調査結果から、洋画、そのなかでも実写映画において復興の兆しがみられました。過去調査同様、今回調査でも洋画が邦画の鑑賞率を下回りましたが、前回調査と比べて10ポイントも上昇し、過去最高である69.0%の鑑賞率となりました。それを牽引したのは、洋画「実写」で、若年層を中心に鑑賞率が大幅に上昇しました。その結果「若年層に不人気、シニア層に人気」という洋画実写における世代間のギャップが、前回調査と比べて緩やかになりました。

前回調査において「女性層が映画興行を牽引する」傾向について分析結果を導出しましたが、今年、女性の観客動員率の低い「アメリカン・スナイパー」が大ヒットしました。その背景を探ったところ、50代以上の男性シニア層の鑑賞率が高かったことが明らかになりました。人口比率の高いシニア層の取り込むことで、観客動員数に大きく影響することがうかがえました。

過去の調査結果

調査概要

1. 調査対象 「NTTコム リサーチ」登録モニター
2. 調査方法 非公開型インターネットアンケート
3. 調査期間 2015年6月2日(火)~2015年6月9日(火)
4. 有効回答者数 3,117名
5. 回答者の属性 【性別・年代】
男女別、10代~70代の各世代を均等回収 (前回同様)

《 補足 》

■「NTTコム リサーチ(旧gooリサーチ)」 http://research.nttcoms.com/
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(http://www.nttcoms.com/)が提供する高品質で付加価値の高いインターネットリサーチ・サービスです。
自社保有パネルとしては国内最大級のモニター基盤(2014年6月現在 217万会員)を保有するとともに、「モニターの品質」「調査票の品質」「アンケートシステムの品質」「回答結果の品質」の4つを柱とした「クオリティポリシー」に基づく徹底した品質確保を行い、信頼性の高い調査結果を提供するインターネットリサーチとして、多くの企業・団体に利用されています。

なお、2013年12月9日に、モニター基盤の拡大を機にサービス名称を「gooリサーチ」から「NTTコム リサーチ」と名称を変更し、サービスを提供しています。

<本調査に関するお問い合わせ先>

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
リサーチ&CRM本部
(Tel)03-4330-8402 (FAX)03-4330-8900
(E-mail) research-info@nttcoms.com

調査結果のポイント

(1) 全体の鑑賞率が低下するも、年間5本以上の鑑賞者が増加。

直近1年以内に映画館で映画鑑賞をした人(以下「映画館鑑賞者」)は全体の35.9%で、前回調査から5ポイント低下し、2012年調査(以下「過去調査」)から続く減少傾向の中で最低の鑑賞率となった。しかし、鑑賞本数でみると、「1本のみ」鑑賞者の構成比が減少し、「5本以上」の鑑賞者の構成比が増加した。鑑賞者人口は減少したものの、1人あたりの平均鑑賞本数は増加したことがわかった。【図1】【図2】【図3】

(2) 洋画の鑑賞率が上昇。若年層の洋画実写の鑑賞率アップが牽引。

直近1年以内に観た映画のジャンルは、前回調査と変わらず「邦高洋低」の結果であったが、洋画の鑑賞率が前回調査から10ポイント上昇し69.0%となり、過去調査の中でも最も高い。洋画を「実写」と「アニメ」で分けてみると、若年層を中心に洋画「実写」の鑑賞率の上昇が著しく、洋画全体の鑑賞率アップに寄与したことがうかがえる。【図4】【図5】【図6】

(3) 「アメリカン・スナイパー」のヒットの背景に男性シニア層の動員。

洋画実写において、女性層をターゲットにしたタイトルがヒットに繋がりやすい傾向があるなか、今年公開された「アメリカン・スナイパー」は、女性層の鑑賞率が低かったものの、大ヒットした。その背景を探ると、50代以上の男性シニア層の鑑賞率が高かったことが明らかになった。人口比率の高いシニア層を取り込んだことが、動員数にも影響したことがうかがえる。【図7】

(4) 劇場予告編に求められる「わかりやすさ」。

昨年公開の「マレフィセント」のヒットにより「劇場予告編」の効果が再認識された。「どのような予告編が鑑賞動機に繋がるか」と聞いたところ、「内容がわかりやすい・イメージしやすい」が5割強で最も多い結果となった。【図10】

(5) NPS®による推奨度が高かった「ベイマックス」。

顧客のロイヤルティを「推奨度」で測る新たな指標「NPS」を使って、直近1年以内にヒットした4タイトルを対象に、そのスコアを比較したところ、「ベイマックス」が最も高い結果となった。また、「NPS」で定義される「推奨者」の口コミによる動員数を推定したところ、「推奨者」1人あたり、「0.7~1.1人」という結果となった。【図11】【図12】

(6) 続編・リブート映画への鑑賞意欲は若年層で高い。

今年の公開作の話題の1つである、続編・リブート映画の公開。その鑑賞意欲を比較したところ、「ぜひ観に行きたい」は、「続編映画」では19.4%、「リブート映画」では6.2%となった。「リブート映画」については、前提条件として提示した「主要キャストが変わる」が障壁となったことが推測される。性年代ごとにみると、若年層ほど鑑賞意欲が高い傾向があり、いずれも男女ともに10代の鑑賞意欲が最も高い。【図13】【図14】

(7) ポップコーンのフレーバー、こだわりが強い10代。

映画興行会社が差別化として注力しているフードメニュー。そのなかでも鑑賞者の購入率の高い「ポップコーン」について、「映画館によって、お気に入りのフレーバーはあるか」と聞いたところ、全体で3割強が「お気に入りのフレーバーがある」と回答した。性年代でみると、男女ともに10代で4割を超え、こだわりの強さがみられた。【図17】

(8) サマーシーズンに観たい映画、「ターミネーター」のリブート作が一番人気。

今年の夏観たい映画のトップ3は、1位「ターミネーター:新起動/ジェニシス」、2位「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」、3位「ジュラシック・ワールド」となった。いずれも人気タイトルの続編、あるいはリブート映画であるが、これらはすべて洋画実写映画であり、過去調査のなかで洋画実写映画が上位を占めるのは初めてである。【図18】

調査結果データ

(1) 全体の鑑賞率が低下するも、年間5本以上の鑑賞者が増加。

直近1年以内に映画館で映画鑑賞をした人(以下「映画館鑑賞者」)は全体で35.9%であった。【図1】

その鑑賞率は前回調査(2014年調査)と比べると、5ポイント低下しており、2012年の1回目調査(以下「過去調査」)から続く緩やかな減少傾向が継続する結果となり、最も低い鑑賞率となった。【図2】

【図1】直近1年以内の映画館での映画鑑賞率(単一回答)

【図1】直近1年以内の映画館での映画鑑賞率(単一回答)

(今回調査における直近1年以内に映画館で映画を観た対象者の母数は1120サンプル)

【図2】過去調査からの鑑賞率の推移(単一回答)

【図2】過去調査からの鑑賞率の推移(単一回答)

前述の映画館での鑑賞率(35.9%)は「直近1年以内で1本でも映画館で映画を観た人」の割合であるが、年間の鑑賞本数の構成比をみると、前回調査から「1本のみ」が約5ポイント低下し、その一方で「5~11本」と「12本以上」が合せて約5ポイント上昇した。その中間である「2~4本」は46%で変わらない。これらの結果から、鑑賞者が絞られたが、年間5本以上観るユーザーが増加し、1人あたりの平均鑑賞本数は増加したことがうかがえる。【図3】

【図3】直近1年以内に映画館で観た映画本数(単一回答)

【図3】直近1年以内に映画館で観た映画本数(単一回答)

(2) 洋画の鑑賞率が上昇。洋画実写が牽引。

2014年にヒットした映画タイトルを振り返る。邦画と洋画を合せた興行成績のトップ10をみると、1位となった「アナと雪の女王」(以下「アナ雪」)の突出した数字が目立つが、同じ洋画タイトルは「マレフィセント」のみのランクインとなっている。どちらもディズニー配給映画だ。残りはすべて邦画が占めている。邦画と洋画の全体の興行収入は、邦画の1207億円に対して、洋画は863億円となり(※1)、「アナ雪」の歴史的ヒットにも関わらず、しばらく続く「邦高洋低」傾向は変わらなかった。

(※1)映画製作者連盟調べ

【表1】2014年映画興行収入ランキングトップ10

【表1】2014年映画興行収入ランキングトップ10

直近1年以内(2014年5月~2015年5月)が対象期間である今回調査で、邦画と洋画の鑑賞率をみると、「邦画のみ観た」が31.0%、「邦画と洋画どちらも観た」が48.8%、「洋画のみ観た」が20.2%となった。先の2014年の興行収入同様、「邦高洋低」傾向は変わらないが、「洋画」の鑑賞率が前回の58.6%から、10ポイント上昇し、69.0%になった。この洋画の鑑賞率は、過去調査の中で最も高い数字であり、洋画復興の兆しがうかがえる。【図4】

【図4】直近1年以内の邦画と洋画の鑑賞比率 経年比較(単一回答)

【図4】直近1年以内の邦画と洋画の鑑賞比率 経年比較(単一回答)

洋画の鑑賞率アップを牽引したのは何か。まず、前回同様「邦画」「洋画」×「実写」「アニメ」の4ジャンル(以下「4ジャンル」)に分けて、直近1年以内の鑑賞率をみてみる。全体結果として「邦画実写」の鑑賞率が最も高いが(64.4%)、「洋画実写」の鑑賞率も60.4%と6割に達する結果となった。「洋画実写」の鑑賞率を性年代でみると、年代によってややバラつきが見られるが、「邦画実写」と同様に50-70%の間で推移しており、世代ごとの明確な傾向差はみられない。【図5】

【図5】(性年代別)直近1年以内の4ジャンルの鑑賞率比較

【図5】(性年代別)直近1年以内の4ジャンルの鑑賞率比較

「洋画」の「実写」と「アニメ」に絞り、前回調査からの鑑賞率の変化をみてみる。全体結果としては、実写、アニメともに鑑賞率が7ポイント上昇する結果となった。性年代でみると、洋画実写で特に大きな変化がみられた。前回調査では、世代が下げるにつれて鑑賞率が低下する世代間のギャップがあったが、今回調査では若年層の鑑賞率のアップにより、そのギャップが緩やかになる結果となった。特に、男性20代と、女性10代~30代では約20ポイント以上も洋画実写の鑑賞率が上昇しており、これらの変化が洋画全体の鑑賞率アップに影響したものと考えられる。【図6】

【図6】(性年代別)洋画の実写・アニメの鑑賞率の前回調査比較

【図6】(性年代別)洋画の実写・アニメの鑑賞率の前回調査比較

(3) 「アメリカン・スナイパー」のヒットの背景に男性シニア層の動員。

前回調査のレポートより、女性層を取り込むことが観客動員アップにつながりやすいことを導き出した。昨年の映画興行ランキングのうち、洋画でランクインした2つのタイトル(「アナ雪」「マレフィセント」)や、現在公開中で洋画実写として今年最大のヒットとなっている「シンデレラ」など、いずれも女性層をターゲットにした映画が顕著にヒットする傾向が続いている。

そんななか、今年の3月より公開された洋画の実写映画「アメリカン・スナイパー」が異例のヒットを記録した。その内容はイラク戦争に従軍した実在の狙撃主を描いたものであり、女性層よりも男性層の関心を引く映画といえる。「実話モノ」「戦争映画」というジャンルという観点からも近年類を見ないヒットとなった。公開一週目で3億円を超える(※2)ロケットスタートを切ったことからも、公開後の口コミで波及する以前から、映画ファンを取り込めたことがうかがえる。「アメリカン・スナイパー」がヒットした背景を探るために、性年代別に鑑賞率をみてみる。なお、比較のために、4ジャンルの中で直近1年以内に一番ヒットしたタイトル(※3)の鑑賞率と比較する。【図7】

【図7】(性年代別)映画タイトル別鑑賞率

【図7】(性年代別)映画タイトル別鑑賞率

「アメリカン・スナイパー」の鑑賞率をみると、男性層の20%前後に対して、女性層は10%前後であり、男女間で大きな乖離がある。さらに、他4タイトルと比較して異なる点は、男性50代以上の鑑賞率の高さである。このことから女性層の観客動員が少ない場合でも、人口比率の高いシニア層を確実に取り込めたことが映画のヒットに繋がったものと考えられる。

(※2)興行通信社調べ
(※3)「邦画実写:るろうに剣心 京都大火編」「洋画実写:マレフィセント」「邦画アニメ:STAND BY ME ドラえもん」「洋画アニメ:ベイマックス」

(4) 劇場予告編に求められる「わかりやすさ」。

映画を観にいくきっかけとなる情報媒体について、鑑賞者全体の実態をみてみる。「直近に観にいった映画について興味を持った情報源」として聞いた結果、接触の多い媒体のトップ5は上位から順に「テレビCM」(41.7%)、「劇場の予告編」(35.1%)、「テレビ番組内での紹介」(23.8%)、「映画の公式サイト」(17.8%)、「知人から直接聞いた(コミュニケーション形態は問わず)」(15.9%)となった。【図8】

【図8】直近に観た映画タイトルに興味を持った情報源(単一回答)

【図8】直近に観た映画タイトルに興味を持った情報源(単一回答)

映画の情報源として2番目に多かった「劇場の予告編」。興味を喚起させ、来場者を再び劇場へ足を運ばせるために有効なプロモーションであるといえるが、その成功例として挙げられるのが、昨年、洋画実写の中で最大ヒットとなった「マレフィセント」だ。「マレフィセント」を含めたヒット作4タイトルで、鑑賞動機として大きい「テレビCM」と「劇場の予告編」の接触率を比較してみる。その結果、「マレフィセント」の「劇場予告編」は「テレビCM」の結果を上回るとともに、他タイトルが40%台の結果に対して、55.1%と高い結果となった。「マレフィセント」の予告編については、2000万人以上を動員した「アナと雪の女王」の上映前に放映されたこともあり、その露出度と、同ターゲット(女性層)にそのままリーチしたことが成功要因として考えられる。【図9】

【図9】映画4タイトルの「テレビCM」と「劇場予告編」の接触率比較

【図9】映画4タイトルの「テレビCM」と「劇場予告編」の接触率比較

「マレフィセント」の大ヒットにより「劇場予告編」の重要性が再認識されたが、いったいどのような「劇場予告編」が鑑賞動機に繋がるのだろうか。映像の訴求ポイントに選択肢を絞って、直近1年以内の映画館鑑賞者に聞いた。その結果、最も多かったのは「内容がわかりやすい・イメージしやすい」で55.7%であった。それ以降は上位から順に、「登場人物、キャラクターが面白そう」「好きな世界観である」(同率50%)、「好きなジャンルである」(43.5%)という結果となった。【図10】

【図10】鑑賞動機に繋がる予告編(複数回答)

【図10】鑑賞動機に繋がる予告編(複数回答)

(5) NPSによる推奨度が高かった「ベイマックス」。

現在、商品やサービスのマーケティングにおいて、顧客のロイヤルティを測るために「NPS」(ネットプロモータースコア)という新たな指標が活用されている。従来の「満足度」ではなく、「知人に薦めたいか」という「推奨」の軸で把握するものである。また、業績(売上げ)と相関性が高い指標として海外を中心に幅広い業種で浸透している。知人に薦めたい度合を11段階評価で聞き、0~6を「批判者」、7~8を「中立者」、9~10を「推奨者」と定義づけ、「推奨者」のパーセンテージから「批判者」のパーセンテージを引いて、そのスコアを算出する。

【NPSの算出方法】

【NPSの算出方法】

今回の調査ではこの「NPS」を使って、劇場鑑賞時の映画タイトルごとのスコアを算出した。対象は前述の4タイトル。結果、NPSのスコアが最も高かったのは「ベイマックス」であった。推奨者の割合だけでみれば、「STAND BY ME ドラえもん」が33.1%、「ベイマックス」が29.4%と、「STAND BY ME ドラえもん」が最も高い結果となるが、「批判者」を引いたNPSのスコアでみると、ベイマックスが最も高いスコアになる。「ベイマックス」については、最終興行成績が91.5億円を記録しており、週間の興行収入ランキングでは13週連続のトップ10入りを果たした。これは今回対象とした4タイトルの中で、最長のロングランである。当然ながら、映画の興行数字は、客層(ターゲット)、公開時期、競合作品等、その他の多くの要因によって左右されるものであるが、「NPS」で導出された推奨度も興行成績に影響を与えるものであると考える。【図11】

【図11】4タイトルの推奨11段階評価(単一回答)

【図11】4タイトルの推奨11段階評価(単一回答)

それでは、NPSで定義づけた「推奨者」による口コミの効果はどのくらいあるのだろうか。「鑑賞後、知人に薦めた人数」×「口コミが決め手になった率」で推定し、鑑賞者1人あたりの口コミによる動員人数を、鑑賞者全体と推奨者で比較する。4タイトルごとにみると、多少のバラつきはあるものの、推奨者1人につき、その口コミによる動員数は0.7~1.1人となった。これは、鑑賞者全体の1.6~1.8倍に相当する結果であり、推奨者が増えるほど、動員数が増える効果があることがわかる。【図12】

【図12】4タイトルの口コミによる推定動員人数(単一回答)

【図12】4タイトルの口コミによる推定動員人数(単一回答)

(6) 続編・リブート映画への鑑賞意欲は若年層で高い。

今年も多くの大作タイトルが公開される。その話題の1つに挙げられるのが、リブート(再起動)映画の公開である。「ジュラシックパーク」や「ターミネーター」、「スターウォーズ」等、洋画を中心にかつてシリーズ化までされた大ヒットタイトルが、キャスト、製作陣を刷新した形で相次いで封切られる。年末に公開される「スターウォーズ」については、前作から10年を経ての公開であり、オリジナルを観たことがない世代もいる中での公開となる。そこで、世代によってリブート映画への鑑賞意欲に違いはあるか検証してみる。リブート映画と同様に、今年も多くの続編映画が公開されるため、「続編映画」(※5)と「リブート映画」(※6)に分けて鑑賞意欲をみてみる。なお、「好きなタイトル次第」を避けるため、いずれも「仮にあなたが好きだった映画が上映されるとして」という条件を提示している。対象は、視聴方法を問わず、直近1年以内に「映画」を観た人。

詳細な定義は下記のとおり。
(※5)前作の物語を引き継ぎ、あるいは前提として、主要キャストが変わらない映画
(※6)前作の物語の続編、リスタートに関わらず、主要キャストが刷新(変更)された映画

まず、「続編映画」については、全体で「ぜひ観にいきたい」が19.4%、「面白そうであれば観にいく」が41.0%という結果となった。性年代でみると、男女ともに「ぜひ観にいきたい」は年代が下がるほど高まる傾向がみられ、男性では10代で最も高く42.0%、女性では10代20代で最も高く35.0%となり、若年層の鑑賞意欲の高さがうかがえる結果となった。【図13】

【図13】(性年代別)続編映画への鑑賞意欲(単一回答)

【図13】(性年代別)続編映画への鑑賞意欲(単一回答)

次に、「リブート映画」の鑑賞意欲をみると、全体で「ぜひ観にいきたい」が6.2%、「面白そうであれば観にいく」が33.4%となった。性年代でみると、男女ともに「ぜひ観にいきたい」は10代~30代(10%前後)と40代以降(5%前後)でやや乖離がみられる。「面白そうであれば観にいく」も含めると、女性については年代が下がるほど、その結果が高まる傾向がある。 全体的に続編映画と比べると、その鑑賞意欲は低く、定義として提示した「キャストが変更される」という要素が障壁となって影響していることがうかがえる。【図14】

【図14】(性年代別)リブート映画への鑑賞意欲(単一回答)

【図14】(性年代別)リブート映画への鑑賞意欲(単一回答)

(7) ポップコーンのフレーバー、こだわりが強い10代。

今年の4月、新宿の旧コマ劇場跡地に「TOHOシネマズ新宿」がオープンした。新宿エリアの映画興行マーケットは大きく、「新宿ピカデリー」「新宿バルト9」などの大型シネコンが競合していることからも、今後の動向が注目されている。競合する映画館と、どう差別化を図っていくのか、映画興行会社(映画館運営会社)がその戦略として注力しているものの1つに「フードメニュー」が挙げられる。他の映画館にはないフードメニューは映画ユーザーにとって、どの程度の魅力があるものなのだろうか。

まず、映画館でのフードメニューの購入実態をみてみる。直近1年以内の映画館鑑賞における、フードメニューの購入率は71.4%であった。その具体的なメニューは「ソフトドリンク」が最も多く80.6%、次いで多いのは「ポップコーン」で65.4%であった。【図15】【図16】

【図15】直近1年以内での映画館でのフードメニュー購入率

【図15】直近1年以内での映画館でのフードメニュー購入率

【図16】直近1年以内での映画館で購入したフードメニュー(複数回答)

【図16】直近1年以内での映画館で購入したフードメニュー(複数回答)

2番目に多かった「ポップコーン」は映画のお供の代名詞とも言える存在だ。そのポップコーンのフレーバーについては、映画館によってバラエティに富んでおり、「期間限定」のフレーバーを用意するなどオリジナリティを打ち出す映画館もある。そこで今回は対象を「ポップコーン」に絞り、「映画館によって、お気に入りのフレーバーはあるか」と聞いた。その結果、全体で32.7%が「お気に入りのポップコーンのフレーバーがある」と回答した。性年代でみると、男女ともに10代でフレーバーへのこだわりが強く、4割を超える層が「お気に入りがある」とした。また、男女で比較すると、その傾向に大きな差はみられず、男性層も女性層と同様に、ポップコーンのフレーバーに対してこだわりをもつ人が一定層いることがわかる。【図17】

【図17】(性年代別)お気に入りのポップコーンフレーバーはあるか(単一回答)

【図17】(性年代別)お気に入りのポップコーンフレーバーはあるか(単一回答)

(8) サマーシーズンに観たい映画、「ターミネーター」のリブート作が一番人気。

今年のサマーシーズンに公開される映画は例年以上に、続編、リブート映画が揃っている。今年の夏(2014年6月末~9月中旬までに公開予定)に観たい映画は何か、全国公開される映画を中心に聞いてみた。全体のトップ3をみると、1位「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(17.0%)、2位「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(14.5%)、3位「ジュラシック・ワールド」(13.2%)となり、いずれも人気タイトルの続編、あるいはリブート映画が上位を占めた。また、過去3回の調査を含めて、洋画実写のタイトルがトップ3を独占したのは初めてのことである。まだ、夏公開映画の認知が広まっていない段階での調査結果であるため、情報感度の高い「12本以上鑑賞」のヘビーユーザーに絞ってみると、トップ3の順位は全体結果と変わらないタイトルで占められ、いずれも4割を超えた。1位の「ターミネーター:新起動/ジェニシス」にいたっては、50%(半数)という高い結果となった。【図18】

【図18】2015年夏に観たい映画(複数回答)

【図18】2015年夏に観たい映画(複数回答)

最後に、「今年のサマーシーズンに公開される映画で観たい映画はない」という関心の低さを示す結果が42.4%となり、過去調査のなかで一番低い結果となった(2012年:44.4%、2013年:47.1%、2014年:58.9%)。認知度の高い続編、リブート映画が多いことが要因として考えられるが、その関心の高さがそのまま夏興行の活況に繋がることを期待したい。

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