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苦戦する活字媒体

多くのサラリーマンやOLにとって、通勤は一日の最初の仕事とも言えよう。多忙を極める現代人にとって、時間は一秒でも惜しい。通勤電車の中で過ごす時間を有効に使おうと考える人も少なくないはずだ。

かつて、通勤電車内で過ごす時間を楽しむツールと言えば新聞や雑誌、書籍だった。一般紙や専門紙、雑誌などから、ビジネスや生活に役立つ情報を仕入れたり、小説やマンガを楽しんだりというのが一般的であった。現在もこうした光景は見られるが、以前に比べればその割合は減っているように思える。

では実際、活字媒体にはどのような変化が起こっているのかを見てみると、まず新聞は、一般紙の発行部数が逓減傾向にあり、(社)日本新聞協会によれば2007年調査で4700万部を割り込んでいる。スポーツ紙も2002年に60万部を割り、2007年には50万部の大台割れ寸前となっている〔図1〕。電車内で新聞を読む人が減ったと感じることは、発行部数減の顕在化と見てもいいのかもしれない。

図1 新聞の発行部数のグラフ

また、同協会によれば新聞社の総売上のうち、販売収入は2006年度には1兆2532億円(前年比0.2%減)と4年連続減少傾向が続いている。また、(社)全国出版協会によれば、書籍・雑誌(月刊・週刊誌)の2007年の取次ルート経由出版販売額は2兆853億円(前年比3.1%減)。

販売額から考えてもこのように活字離れが進む中、通勤電車内で現代人は何を、どのように楽しんでいるのだろうか。

主役となった携帯電話

オールアバウトとgooリサーチが会社員1000人を対象に2008年春に実施した「ライフスタイルについて」のアンケート調査によると、通勤時の気分転換として最も多かったのがipodなど携帯デジタル音楽プレーヤーによる「音楽鑑賞」。携帯音楽機器は一世を風靡したソニーのウォークマンなど携帯カセットプレーヤーの登場から始まり、携帯型CDプレーヤーなど機器の変遷はあるものの、現代まで継続して大きく支持されてきたが、ここにきて機器の超小型軽量化やヘッドフォンの性能向上などでより利便性が増していることが、大きく支持されている要因のひとつとみられる。

音楽鑑賞に次ぐのは、「携帯電話でメールを送る」と「読書(書籍)」となっている〔図2〕。しかし、このデータを読書VS携帯として読み解くと、読書(「書籍」と「雑誌・フリーペーパー・マンガ」をあわせて)は行き35.7%、帰り42.5%に対して、携帯電話(「メールを送る」「情報を見る」「テレビを見る」をあわせて)は行き41.2%、帰り48.9%と携帯電話を利用している人が多いことがわかる。

図2 通勤時の気分転換のグラフ

実際、車内を見回すと携帯を手にしている人のなんと多いことか。携帯電話各社がインターネット接続サービスのコンテンツ充実を図る中でその用途は飛躍的に拡大し、ワンセグテレビ受信のような機能面の拡充もこれに拍車をかけている。電子情報技術産業協会によると、携帯電話の国内出荷に占めるワンセグ対応機の比率は2008年8月に初めて8割を超え、累計出荷台数も4000万台を超えている。

上記のデータから、活字媒体から携帯電話への主役交代が進んでいると考えられる一方で、新たな活字媒体とも言える「ケータイ小説」や「電子書籍」の市場が拡大している。インターコムとgooリサーチが行った「ケータイ小説に関する調査」では、ケータイ小説の認知度は9割を超えている。実際の利用者は2割弱だが、その55.7%は「一般的な小説と比較して面白い」と答えており、若年層を中心にコアなユーザー層は確実に存在していると考えられる。

ケータイ小説から書籍化や映画化された作品もあり、結果的には一般にも波及していると言えよう。また、電子書籍市場も総務省の「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査」によると2006年の69億円から2007年には221億円に拡大している。現在の若年層が年齢を重ねるにつれ、より一般的な媒体へと成長していく可能性もある。

上記の総務省の調査によると、携帯のモバイルゲームや電子書籍が含まれるモバイルコンテンツ系と、物販・チケット・証券取引などのモバイルコマース系の2007年度の市場規模は、コンテンツ系の4233億円〔図3〕に対し、コマース系の7231億円と市場規模は圧倒的にモバイルコマース系が多くなっている〔図4〕。

図3 モバイルコンテンツ市場の推移のグラフ

図4 モバイルコマース市場の推移のグラフ

先述したように市場規模で考えると、新聞(1兆2532億円)と雑誌(2兆853億円)を合計した3兆3385億円に対し、携帯電話のモバイルコンテンツ・コマース系の合計は1兆1464億円となっており、この数字を活字媒体VS携帯電話に置き換えれば割合は3対1となっている。

この数字から活字媒体の健在を考えてしまうが、携帯電話の市場規模は年々2000億円近い規模で伸びており、新聞VS携帯電話で考えると2008年度あたりには市場規模が逆転するのではないかとも考えられる。

市場規模がイコール通勤時における新聞・雑誌から携帯電話への移行を示すわけではないが、電車内で携帯電話を手にする人が増えているとの実感と合わせれば、その指標の一つと考えることはできるだろう。

混雑する通勤時間を過ごすツールとして小型で持ち運びにも便利な携帯電話は、すでに電話機としての機能を超えて、インターネットとしてテレビとして音楽プレーヤーとして、またゲーム機そして小説として、多様な楽しみをユーザーに提供してくれている。漠然と日常感じていた通勤電車内での活字媒体から携帯電話への主役交代は、いずれの資料からも実証されたようだ。

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