子どもがやりたい職業、若者が就きたい職業
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小学1年生はしっかりと子どもである
今どきの小学生はどんな将来を思い描いているのか。小学1年生といえば6,7歳、情報化時代の子どもは現実的といっても、この年齢ならばいろいろな制約条件にとらわれることなく、自分が住む世界のなかで最も輝いて見える職業に憧れるはずだ。
(株)クラレが実施した2008年版「新小学1年生の就きたい職業、親の就かせたい職業」のアンケート結果では、男子のランキングのトップは断然、「スポーツ選手」だ。前年よりも若干比率を落としたものの、それでも2位を20%以上も引き離して30.2%と30%台をキープ。以下5位まで「消防士」、「運転手・運転士」、「警察官(刑事含む)」、「職人(大工左官)」と続く。
古典的なランキングでは必ず上位に入っていた「パイロット」は7位で、「医師」は9位。率もそれぞれ4.0%と3.1%と低いのが今風だが、全体としてはいかにも子どもらしい選択といえる。
女子のランキングを見ると、ここ数年不動の1位である「パン・ケーキお菓子屋」がさらに比率を上げて30%台に突入し、以下5位まで、「花屋」、「芸能人・タレント・歌手・モデル」、「看護師」、「教員(幼稚園含む)」となる。
親はひたすら安定を望む
一方、親が子どもにつかせたい職業は、男子では上位4位まではここ3年まったく変わっていない。「公務員(地方含む)」、「スポーツ選手」、「医師」、「会社員」の順だ。1位の「公務員(地方含む)」は調査を開始した1992年以来ずっとトップを保ち続けているという。16年間一貫して、親が安定を最優先して子どもの職業を選ぶ状況が続いている。一昨年、昨年と5位につけていた「エンジニア」は9位に落ち、代わって「消防士」が5位に入ったのも、安定志向がさらに高まっている時代を感じさせる。
女子では「公務員(地方含む)」は2位に落ちるが、1位は「看護師」で、3~5位はそれぞれ「保育士」、「教員(幼稚園含む)」、「医師」。どれも職業を失うリスクが小さい。安定を願う親の気持ちは男女ともに変わらない。いつの時代でも親は子の無事を願い、まして、日本には無縁だったはずの貧困が隣り合わせとなる時代であってみれば、なおさらだ。
こうした親の思惑をはじめとする現実社会の洗礼を受けて、子どもがやりたい職業は年とともにどんどんリアルになっていく。
次に参照するのは、(株)日本ドリコムの「2008ドリームランキング~高校生の希望する職業ランキング~」。調査対象は全国の高校2年生、同社が発行する進学情報誌の読者である。この職業ランキングを見る限り、小学生から10年あまりを経て、子どもたちの選択にも変化がうかがわれる。
男子の1~5位は「教師」、「法律家」、「公務員」、そして「パティシエ」と「警察官」が同率4位。女子は「看護師」、「教師」、「保育士・幼稚園教諭」、「薬剤師」、「ホテルマン・ホテルウーマン」だ。女子は前記の「親が就かせたい職業」にかなり重なっている。小学1年生のとき、不動の1位だったパティシエは9位にも入っていない。
同調査では、細分化した職業名では回答しづらいことを配慮して、20種類から成る「しごと系統」に分類した調査も実施している。「子ども・教育」、「医療」、「スポーツ・健康」といった分類だ。この結果では、かつては人気を集めた「マスコミ・音楽・映画・声優」が男子では5位にも入っていないことが目を引くが、個々の細目を見ると、さらに興味深い結果に触れることができる。
男女総合で2位につけた「医療」の中の具体的な職業を見ていくと、1位から「看護師」、「薬剤師」、「理学療法士」、「歯科衛生士」、「臨床検査技師」と続く。医療系職業では花形であった「医師」が出てこない。では「医師」は何位かというとランク外、つまり、「医師」という回答はゼロであった。
どういうことなのか。日本青年研究所が実施した「高校生の意欲に関する調査」の結果にヒントがある。これによると、日本の高校生には将来への上昇志向がほとんどない、という結果が出ているのだ。調査対象は全国12校の高校1~3年生でサンプル数は1,461。米国と中国、韓国でも同じ調査を同規模で実施して比較している。
日本の高校生の「生活意識」は「暮らしていける収入があればのんびりと暮らしていきたい」であり、将来「偉くなりたいか」という問いに対し、他の3カ国では20%以上が「偉くなりたい」と答えたのに対し、日本は8.0%にとどまっている。「偉くなることについて」は、「責任が重くなる」、「自分の時間が持てなくなる」として回避している。
これをもって意欲がなく、積極性に欠けるといった類の批判はいくらでもできるだろうが、争いを好まない温厚な人々という前向きの評価もできるし、人間性としてはむしろ好ましい特質といえる。だが、一方では若者らしい、前向きな未来への姿勢が薄いともいえる。同調査では上昇志向の下降とともに、公共機関の幹部などになることを回避する傾向が強く、学校でもクラス委員のなり手が少なくなっている、と報告している。
そこには無邪気に将来の夢を描いた子ども時代を経て、親の安定志向とも一線を画する、「のんびり暮らしていける収入」で「責任は少ない」職業を求める、現代日本の若者像が垣間見える。
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