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トレンド 食べる

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テーマ「食べる」

過度な健康信奉に警鐘

「フード・ファディズム(Food Faddism)」ということばがある。食物への一時的な流行や熱狂を意味する。一般的に、マスメディアなどから流れる食物に関する栄養・健康情報を、過大評価したり過信したりすることを指して使われている。記憶に新しいところでは、突如として一大ブームを引き起こした"納豆"。テレビの情報バラエティ番組『発掘!あるある大事典2』で、「納豆にダイエット効果がある」と放映されたことで、翌日、スーパーの棚から納豆が消えた。フード・ファディズムを象徴するような騒動であったが、後日、データねつ造が発覚し、マスメディアによる情報を鵜呑みにする危険性が指摘された。

こうした騒動は、"アガリクス"や"大豆イソフラボン"など過去にも散発的に起きており、その都度、偏った情報を信じる、あるいは情報に過剰反応する消費者に対して、警鐘が鳴らされている。

gooリサーチと毎日新聞社でTV番組のねつ造問題に関して共同調査を行ったところ、「体にいい」「やせる」などの効果を期待し、特定の商品を買ったり食べたりしたことがある人は、70%以上を占めた(図1)。情報取得の方法は85%がTV番組という結果からも、その影響の大きさが伺える(図2)。ねつ造発覚でテレビへの信頼度が下がったという人は66%に上った(図3)。

図1 TV番組のねつ造問題に関する調査のグラフ

図2 TV番組のねつ造問題に関する調査のグラフ

図3 TV番組のねつ造問題に関する調査のグラフ

バランスのとれた食生活を

特定の栄養素が身体にいいと聞きそればかりを食べてしまうことが、"大豆イソフラボン"の問題だった。骨粗しょう症の予防や更年期障害の軽減等に有用といわれ、大豆イソフラボンを多く含むとうたった「健康食品」の需要が拡大したものの、内閣府食品安全委員会の調査で、多量かつ長期連用時における有害作用の可能性や、摂取の仕方によって、乳がん発症や再発等のリスクを高める可能性も考えられると指摘された。

これを受け厚生労働省では、次のような指針を公表している。大豆イソフラボンについて、(1)日常の食生活に上乗せして摂取する量の上限値は30mg/日、(2)妊婦、授乳中の女性、乳幼児、小児は、大豆イソフラボンを凝縮した錠剤やカプセル、粉末などを摂取しないこと、などである。ただし、注意の対象はあくまで"凝縮したサプリメント"であって、豆乳や納豆などの大豆食品は栄養価に富み、従来通り食べることを勧めている。そもそも日本では、豆腐や納豆をはじめ、みそ・しょうゆといった調味料に至るまで、伝統的な食事で大豆を使ってきたが、これらに含まれる大豆で健康被害が出たといった報告はない。食品安全委員会も、通常の食事で大豆イソフラボンを取る分には、特に問題はないとしている。

"大豆イソフラボン"問題のように、テレビや雑誌を通して得た健康食品情報に短絡的に反応し、偏った食品選びを続けることで、かえって健康を害する危険性がある。バランスのとれた食生活の重要性を再認識すべきといえるだろう。健康食品ブームにのって、多種多様な食品が流通する現状において、TVの健康番組などの情報に踊らされることなく、自らの判断で食品を選択して適切に摂取することが求められている。

図4 各種大豆食品100g中の大豆イソフラボン含有量(換算値)のグラフ

健康食品市場は縮小に転じる

消費者の健康志向の高まりを追い風に、健康食品市場はこれまで順調に成長を続けてきた。しかし、2006年度に転機を迎えている。矢野経済研究所の「健康食品の最新市場動向2007」によると、2005年度の市場規模は7,039億円であったが、2006年度は、マイナスに転じ6,824億円前後になったと予想されている(図5)。

図5 健康食品の市場規模推移(メーカー出荷金額ベース)のグラフ

減少の要因としては、第一に、行政による監視強化が挙げられる。警視庁によるアガリクス商法の摘発や大豆イソフラボン問題などによる食品の安全神話の崩壊に伴い、消費者の間で安全・安心志向が広がっている。これを受け、行政サイドは消費者保護の目的で、健康増進法や景品表示法などによる規制を強化している。第二に、コエンザイムQ10のような大ヒット商品の不在が影響している。さらに、先述のテレビ番組による不祥事をきっかけに、市場を牽引していた大豆イソフラボンやコエンザイムQ10に対する消費も落ち込み、市場全体にも大きな影を落としている。

今年は特に「あるある」問題でメディアでの商品展開が難しくなったため、販売数の鈍化が予想される。しかし、中長期的にみると「あるある」効果も薄まり、再びテレビや雑誌での推奨が健康食品への注目をかきたて、需要は盛り返すと予想されている。

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