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地球温暖化問題は科学的か

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人為的活動と地球温暖化との因果関係

米国のアル・ゴア元副大統領が出演した映画「不都合な真実」。最初から最後まで地球温暖化問題をゴア氏が語り続けるという構成にもかかわらず、退屈という反応は少なく、この種の映画としては異例のヒットになった。その後押しもあったのか、2001年以来、京都議定書を離脱したままの米国で、2007年4月、米連邦最高裁がCO2など温室効果ガス(図1)を「大気汚染物質」として、政府に排出規制を促す判決を下している。マサチューセッツ州など12州と環境保護団体の規制の要求に対し、これまで米環境保護局(EPA)はその権限がないとして拒んできたが、これで門前払いの根拠を失ったことになる。果たして、世界のCO2排出量の22.8%を占めている米国は政策の見直しまで行くのだろうか(図2)。

図1 産業革命以降人為的に排出された温室効果ガスによる地球温暖化への寄与度

図2 世界の二酸化炭素排出量・国別排出割合

振り返れば、米国は、先進国だけに温室効果ガスの排出削減を課した京都議定書を不平等とし、米国経済の利益にならないとして離脱したのだが、根底には人為的活動と地球温暖化との間に科学的因果関係がないという認識があったとされる。その根拠とされているのが、ブッシュ大統領からの要請を受けて米国科学アカデミーがまとめた報告書。その中に"因果関係は不確実"という指摘があるようなのだ。報告書は「二酸化炭素など温室効果ガスの排出増加で地球温暖化が確実に起きている」と明言しており、さらに「温暖化対策の根拠であるIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の結論は妥当」と一応結論づけている。

いったい、この報告書からどうやって「科学的因果関係がない」という結論を導き出せるのか不思議になるのだが、どうやら、その答は、温室効果ガスが地球温暖化の原因で、IPCCの結論は妥当という報告の前提として付けられた「科学的に不確定な部分が残るものの」という但し書きにあるらしい。ここに重大な論旨の付け替えがあるように思える。21世紀の今日でも、科学的に確定している現象など極めて少ない。たとえば我々は実にさまざまな医薬品に囲まれているが、なぜ効くのかという作用機序が「科学的に確定している」医薬品はむしろ例外だ。試してみたら効いたから医薬品にした医薬品がほとんど。「科学的に不確定な部分が残るものの」という但し書きは、誠実に結論をまとめようとする科学者の枕詞である。その枕詞が超大国アメリカの認識になってしまったようだ。

あの氷河期の平均気温は

地球規模で平均気温が上がっていることははっきりしている(図3)。陸域の地上気温と海面水温の平均である、地球の平均地上気温は、20世紀中に0.6±0.2度上昇した。

図3 世界の年平均気温平年差

一方、大気中の二酸化炭素濃度も増え続けている。産業革命前まで280ppm前後で安定していたそれは、1751年以降、総量が35%増えて2004年には377ppmへ(図4)。米国にしても、こうしたファクトは否定しようがない。問題は、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスによって地球温暖化が促されているのか否かである。

図4 過去250年間の大気中二酸化炭素濃度の増加の様子

公平を期すために、温室効果ガス説以外の説も紹介すると、たとえば地球は400〜500年かけて温暖化と寒冷化を±1.5度の範囲で繰り返しており、20世紀からは温暖化サイクルにあるとする説がある。また、CO2は温暖化の原因ではなく温暖化の結果であるとする説もある。とはいえ、最も有力なのは、やはり温室効果ガス説で、1990年に第一次評価報告書を発表して以来、地球温暖化に関する条約交渉に大きな影響を与えてきたIPCCは、最新の2007年2月の第4次評価報告書で、人為的な温室効果ガスが地球温暖化の原因である確率を「90%を超える」とした。しかし政策立案者へ科学的知見に基づいた助言を行うことを目的として設立されたIPCCは「科学的に確定している」というような言い切り方はしていない。

IPCCの予測のベースとなっているのはコンピュータによる気候モデルである。いかにも科学的のようだが、これが反対派からすれば条件設定によっていくらでも結果が変わってくるという批判の元となる。だからこそ、精度を高め続けるわけだが、その結果、2001年の第3次評価報告書で2100年には1.4〜5.8度上昇すると予測していた平均気温は、第4次では最大推計が6.4度になっている。あの氷河期の平均気温は現在よりも3〜6度低かっただけだというから、いったい2100年はどんな熱さになっているのだろうか。人為的活動と地球温暖化との因果関係が科学的に確定するときは、人間社会が終わるときだという説もあるから、やはり、京都議定書の遵守は人類の義務なのだろう。

となると、日本は大変である。削減目標は、2008年から2012年までの5年間の温室効果ガスの平均排出量が1990年との比較で日本が6%、米国が7%、そしてEUが8%。日本がいちばん負担が軽いようだが、二度のオイルショックを克服する過程でエネルギーの利用効率を飛躍的に高めてきた日本は、他国と同じだけ排出量を減らそうとすると、渇いた雑巾をさらに搾り取るため大きなコストがかかる。ある試算によれば、京都議定書の目標を遵守すると経済成長率が1%マイナスになるらしい。この厳しい状況でのマイナス1%。米国がぬけた理由もこれか、と思いたくもなるが、そこを踏んばるのが省エネルギー大国、日本の存在価値なのかもしれない。

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