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喫煙人口は減っているのか

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たばこによる健康被害のリスク

まずは、たばこのリスクをおさらいしておこう。図1を見てほしい。喫煙者が非喫煙者と比べて、どのくらいがんにかかりやすいかを示したものだ。だいたい予想はついていたと思うが、あらためて数字の意味を確かめてほしい。

図1 喫煙による標準化死亡比

疾病のリスクはがんだけではない。なにしろ、たばこの煙に含まれる化学物質は4000種類を超えており、そのうち200種類が有害物質。心筋梗塞などの循環器系疾患や肺気腫をはじめとする呼吸器系疾患、消化器系の胃・十二指腸潰瘍など、実にさまざまな病気の誘因になる。歯周病だって、たばこが良くないとされているくらいだ。妊婦が喫煙した場合は、低体重児、早産、妊娠合併症の比率が高くなる。

喫煙者の健康被害もさることながら、近年、特に問題になっているのが受動喫煙である。喫煙者のたばこの副流煙を、周囲の非喫煙者が吸ってしまう。喫煙者がフィルターを通して吸い込む主流煙よりも、この副流煙のほうがさらにタチが悪い(表1)。発がん物質が19倍とか、30倍とかいう数字がごろごろ並ぶ。

表1 紙巻たばこ煙有害物質の主流煙と副流煙中の含有量

たばこの葉が燃えて、煙が出る。主流煙はたばこの葉とフィルターをくぐって唇に届くが、副流煙はそのままダイレクトに空中にまき散らされる。有害物質をたっぷり含んでいて当り前なのである。酸性の主流煙と異なりアルカリ性なので、目や鼻の粘膜も刺激する。ヘビースモーカーも他人のたばこの煙はいやだと言うが、気分の問題ではなく、実際にぴりぴりとした刺激があるのだ。

喫煙包囲網の効果は

たばこに甘かった日本でも、健康増進法が制定され、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」も受諾して、2005年の2月に発効した。オフィスをはじめ、建物内部は禁煙が常識になり、飲食店などでは分煙がふつうになっている。たばこのパッケージを見れば健康被害の警告が盛大に印されており、メディアでもたばこは万病の元で周囲の人間まで危険に晒す、というメッセージが日常的に流されている。

これだけ喫煙包囲網が狭まれば、喫煙人口は減るはずだし、事実、減っている(図2)。女性はほとんど横ばい状態だが、1997年に52.7%あった男性の喫煙者率は2002年には43.3%へ。総数でも28.7%から、24.0%へ低下した。しかし、どうだろう。減るには減っているが、思ったほど減っていないと見る人も少なくないのではなかろうか。いわゆる働き盛りの40〜49歳男性の喫煙者率は2005年でも50%を超えている。30〜39歳に至っては、57.3%。時代の空気と合っていない。

図2 日本における喫煙者率の推移

図3は紙巻き煙草の1人当たりの消費本数の推移である。2005年は年間2595本。もう30年近くも続いてきた3000本台を2000年に割って2900本台になり、それから5年で2500本台になった。ピークだった1977年度の3497本から比べれば、900本近く減っている。

図3 1人当たりの消費本数(15歳以上)

でも、世の中の喫煙排除の状況を考えれば、もっと減ってもいいのではないか。たとえば2000本以下になってもおかしくはないという考え方だってあるはずだ。

値上げで禁煙は広がるか

実は、「意外」は消費本数だけではなく、売れている銘柄にもある。これだけ健康被害がクローズアップされれば、低ニコチン低タールの銘柄が販売実績の上位に並ぶと思うはずだ。事実、ニコチン量でみると、最も売れているのは0.1ミリグラムの銘柄。けれども、第2位は0.2、0.3、0.4を飛ばして、0.5ミリグラムのたばこである。3位は0.8ミリグラム。そして、1.2ミリグラムのヘビー級も6位に入っている。喫煙者はニコチンとタールの量は気にするが、その数値だけで銘柄を選択しているわけではないのだ。このあたりに、減るには減っているが、思っていたほどには減っていない理由が隠れていそうである。

さて、愛煙家はたばこが1箱いくらくらいになったら禁煙しようと思うものだろうか。日本のたばこの販売価格の安さはとかく批判の的になる。確かに、いわゆる先進国とされる国は、たばこに対して販売価格で重いペナルティーをかけている。トップはノルウェーの7.56米ドル。以下、イギリス、アイルランド、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、香港と続く。だいたい10位のデンマークあたりまでが500円以上か。

このランキングの国々の喫煙者率をみると、ノルウェー男性31%で女性32%。イギリス27.0%と26.0%。アイルランド32.0%に31.0%。デンマーク32.0%と29.0%。総数では、いずれも日本よりも喫煙者率が高くなる(表2)。値上げが喫煙行動を抑える上で効果を上げた国は確かに存在するが、値上げだけで目的を達するのは難しいことを、数字が暗示している。たばこは手強い。

表2 各国成人喫煙率

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