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超高齢社会がやってくる

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テーマ「生きる」

一人暮らしの高齢者が増えている

65歳以上の人が総人口に占める割合のことを"高齢化率"という。この高齢化率が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」ということになる。日本は1970年に高齢化率が7%を超え、1994年には14%を超えている。2005年10月1日の時点での高齢者人口は過去最高の2560万人で、高齢化率は20.04%と初めて20%を突破した。21%超えは時間の問題。日本はまさに今、超高齢社会の入り口に差しかかっているのである。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、高齢者人口は今後も2020年まで急速に増え続ける。その後はやや安定するが、総人口が減少していくため高齢化率はさらに上昇し続けて、2015年には26.0%、2050年には35.7%に達すると見込まれている。日本人の3人に1人が65歳以上という"超超高齢社会"になるわけである(図1)。

図1 高齢化の推移と将来設計

これだけ高齢化すると、高齢者の一人暮らしも増えてくる。65歳以上の単独世帯は1980年には男性約19万人、女性約69万人だったが、2000年にはそれぞれ74万人、229万人と大幅に増えている。高齢者の単独世帯が増加している原因は、未婚率や離婚率の上昇、配偶者との死別後も子どもと同居しない高齢者が増えていることなどが考えられる。高齢者の単独世帯で女性のほうが圧倒的に多いのは、平均寿命の違いが反映しているのだろう。夫の死後、一人暮らしをする高齢女性が多くなってきているということだ。しかし今後は男性の一人暮らし高齢者の割合も大きく伸びると見られている(図2)。

図2 一人暮らしの高齢者の動向

高齢化の進展とともに高齢者の意識にも変化が現れている。内閣府が5年おきに行っている調査によれば、子どもや孫との同居志向はこの25年で大きく変化してきた。1980年の調査では、「いつも一緒に生活できるのがよい」という回答(59.4%)が、「ときどき会って食事や会話をするのがよい」(30.1%)よりずっと多かったが、その後、同居志向は長期低落傾向を示し、「ときどき会って......」という適度に距離をおく人が増加していった。そして2005年の調査では、両者がとうとう逆転してしまったのである。しかもこのときは、それまではおおむね5%台から7%台で推移していた「たまに会話をする程度でよい」という回答が、14.7%に急増している(図3)。欧米に比べると日本人はまだ同居思考が強いが、以前のように子どもや孫との同居を強く望む高齢者は明らかに減ってきている。

図3 高齢者の子供や孫とのつき合い方 高齢者の子供や孫とのつき合い方(国際比較)

戦後生まれの高齢者が登場

こうした意識の変化は今後、さらに大きくなっていくことが予想される。というのも、2010年以降は戦後生まれの高齢者が登場してくるからだ。そのため、これからは高齢者の嗜好やライフスタイルなどが劇的に変化していく可能性もある。

また、高齢者全体が増えていくことで、介護が必要な人も増えていくだろうが、元気な高齢者も増えていくはずだ。そのように市場構成が変化していけば、高齢者向けのビジネスも従来の介護系に加えて、元気な高齢者のニーズに対応したビジネスがより広範に求められていくようになるだろう。たとえば、高齢者を対象にしたメンタルヘルスビジネスや生きがい支援サービス、あるいは高齢者の就業支援サービスなども生まれてくる可能性がある。65歳といっても、平均寿命からみれば、まだ15年から20年くらいの人生がある。団塊の世代が高齢者になれば、セカンドライフを積極的に楽しもうという志向がより顕著になっていくはずだ。とすれば、高齢者向けのレジャー産業や余暇ビジネスも、市場が拡大していくかもしれない。

とはいえ、やはり高齢者が相対的な弱者であるという側面を見逃がすことはできない。高齢者は筋肉や骨が弱くなっている。そのため玄関先で転んだだけで骨折するということもある。高齢者は病気やけがが治りにくい。転んで骨折して自宅で療養している間にさらに筋力が衰え、寝たきりになってしまうというケースも珍しくない。あまり知られていないが、家庭内の事故で毎年2万人近い高齢者(65歳以上)が命を落としている(図4)。これは交通事故の死亡者数に匹敵する数だ。一番安心し、くつろげる空間であるはずの住宅内に、意外な危険が潜んでいるのである。高齢者が快適に生活していくためには、住環境などはまだまだ改善していく必要がある。住宅に限らず高齢者のマーケットでは、バリアフリーやユニバーサルデザインといった要素が不可欠だ。

世界一の長寿国でありながら、日本は先進各国と比べると寝たきりの高齢者が非常に多いという現実がある。豊かな高齢社会を実現するためには、介護老人を減らすことよりもまず、高齢者の健康を増進するというアンチエイジングの考え方を普及させていく必要がありそうだ。

図4 家庭内事故による死亡者数(2005年)

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