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一人暮らし、の構造

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テーマ「暮らす」

23区では単身世帯が当り前

未婚率の上昇が止まらない......これは、結婚の章で記した。当然、単身世帯数も増え続けている。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計」によれば、2005年における単身世帯数は1420万世帯。全世帯数に占める割合は29.0%で、ほぼ3軒に1軒が単身世帯だ。

正しくは、未婚者数と単身世帯数は重ならない。いわゆるパラサイト・シングルで、若い世代の場合、実家にそのまま居続ける未婚者が多いからだ。2000年の数字になるが、30~34歳の未婚者でも、世帯主割合は男が41.1%で、女が30.1%。つまり、単身世帯にカウントされない未婚者の方が多数派である。話は、単身世帯を軸に進めていくが、その背後には多くの単身世帯予備軍が控えていることを意識しておいていただきたい。

ということで、一人暮らしの単身世帯に戻ると、東京の23区に限れば、3軒に1軒どころか単身世帯の方がメジャーのように取れるデータがある。東京都総務局の「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」によれば、2004年の「区部における1世帯当たりの平均人員」が2を超えているのは、2.25で最高の足立区をはじめとする10区だけで、千代田・中央・港の都心3区を含む13区ではすべて1台なのである。ということは即ち、東京の過半の区では、最も多い世帯が単身世帯であるということになる(図1)。

図1 区部における1世帯当たりの平均人員(2004年)

「結婚しない」それぞれの理由

なぜ、一人暮らしが増え続けているのか。男女とも、結婚したくないわけではないらしいことは、やはり「結婚」の章でご紹介した。「いずれ結婚するつもり」なのだが、「適当な相手にめぐり会わない」のだ、と。その「適当」かどうかの女性側の基準は、何よりも「相手の人柄」であり、次に「家事・育児に対する理解と協力」であり、「自分の仕事に対する理解と協力」がこれらに続いた。予想しやすい「相手の収入などの経済力」は4番目だったのである。今や、結婚しても女性が仕事を続けるのが社会的常識になっている。働く女性にとっての結婚のメリットは、かつての経済的な要因よりも、いかに自分を精神的に支えてくれるかという心理的メリットに変わっている。おのずと結婚相手を選ぶときのチェックは厳しさを増す。心理的メリットを与えてくれない相手との結婚は、逆にデメリットになるのだ。

厚生労働省の「少子化に関する意識調査」(2004年)によれば、「結婚の良くない点・デメリットは何か」という設問に対して、若年独身男性(20〜32歳)、継続独身男性(33〜49歳)、若年独身女性(20〜30歳)、継続独身女性(31〜49歳)のいずれもが、「自分の自由になる時間が少なくなる」ことを挙げている。以下、共通して多い回答が「行動が制限される」「自分の自由になるお金が制限される」あたりで、女性では「養父母や親戚などの人間関係が複雑になる」「家事に縛られる」という回答が目につく。女性からすれば、こういう幾多のデメリットを補って余りある「適当な相手」でなければ、結婚する意味がないということなのかもしれない(表)。

表 結婚のよくない点・デメリットは何か

一方、若年独身男性では、「結婚していない理由」として、半数近くが「経済力がないから」と答えているのが、格差社会を連想させて注意を引く。総務省統計局の「産業構造基本調査」(2002年)を見ても、30〜34歳の正規従業員の59.2%が結婚しているのに対して、非正規従業員は30.3%にすぎない。25〜29歳では、34.4%に対して14.8%と半分以下になる。こうなると、「結婚しない」のではなく「結婚できない」のだと結論づけたくなるが、可処分所得が少ないからこそ自分の暮らしを大切にするために「結婚しない」とも言え、「しない」と「できない」の境界は判然としない。

一人暮らしを支えるもの

もっとも、一人暮らしがかつてのようにいかにも不便だったならば、結婚のモチベーションは否応なく高まるかもしれない。けれど、今はコンビニエンス・ストアがあり、ファストフード店がある。コンビニはあれだけ生活圏に溢れているように見えるのにまだまだ伸びている。(社)日本フランチャイズチェーン協会の統計によれば1998年の5兆5251億円の売上高が、2006年には7兆2651億円、31.5%増となっている。それを後押ししたのは、単身世帯の継続的な増大だ。増え続ける単身世帯層をターゲットにして中食商品の価格が1998年頃から下がり始め、割高感が低下してもう一段階段を上がった(図2)。

図2 近年は低価格化の傾向にある中食商品

パソコンもまさに単身生活に必須のツールだ。総務省の「通信利用動向調査」(2003年)によれば、パソコンで商品やサービスを購入しているのは圧倒的に単身世帯で、利用率は50%を超える。パソコンでのオンラインバンキングも、携帯での商品・サービス購入、オンラインバンキングも利用の先頭を走るのは単身世帯。ITが、「いずれ結婚するつもり」の暮らしを支えている(図3)。

図3 世帯構成別インターネット利用状況

しかし、あまり一人暮らしが快適すぎると、50歳時の未婚率である生涯未婚率がさらに高まるかもしれない。住宅金融公庫の「平成17年度フラット35利用者調査報告」によれば、65〜79m2の中規模マンション購入者の15.4%が単身世帯だ。さらに30〜40歳代の女性のマンション購入者を見ると、54.6%が単身世帯(図4)。

図4 65平方メートル〜79平方メートルの中規模マンション購入者の家族数 マンション購入者における女性単身世帯の割合

守らなければならないものが多くなると、人間関係にはさらに慎重になる。「自分の自由になる時間やお金」に、さらに誰にも気兼ねすることのないマンションライフが加わるとなると、「適当な相手」のハードルはいよいよ高くなるのだろう。

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