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子供の学力低下。7割が「ゆとり教育が原因」

子供の学力低下が注目を浴びるようになったのは、1999年に出版された『分数ができない大学生』で、小学生レベルの算数問題が解けない大学生の実態が紹介されたのがきっかけだ。その後、2003年にOECD(経済協力開発機構)が世界各国の15歳を対象に行った学力調査「PISA(生徒の学習到達度調査)」の結果が大きく報道されたことで、問題として浮上した。

PISAの結果によると、世界40カ国の中で日本は、「科学的リテラシー」が2位、「問題解決能力」が4位、「数学的リテラシー」が6位、「読解力」が14位と上位にランク。全カテゴリーでOECD平均を上回っており、日本の学力は世界的に高いレベルにあることがわかる。しかし、2000年度に行われた同調査と比較すると、読解力は8位から14位、数学的リテラシーは1位から6位と大幅にダウンしている(表)。同じく2003年に行われたIEA(国際教育到達度評価学会)の数学・理科成績の国際調査でも、小・中学校ともに順位を下げており、「学力は高いが低下傾向が顕著」という日本の現状が明らかになった。

表 生徒の学習到達度調査(PISA)

子供の学力低下はどこまで進んでいるのだろうか。gooリサーチが2006年に親世代を対象に行った「子供の学力状況調査」によると、「自分の子供時代と比べて子供の学力は低下しているか」という質問に対し、「低下している」と答えた人は全体の43.9%で、逆に「低下していない」と答えた人は47.7%と正反対の意見に二分されている(図1)。家庭レベルで子供の学力低下は実感がわきづらいのかもしれない。

図1 子供の学力低下状況(自分が子供の時との比較)

しかし、「子供の学力が低下する理由」について尋ねると、65.6%が「ゆとり教育の導入による影響」と回答。次いで、「学習内容の質の低下」「教師の質の低下」が挙がっている(図2)。

図2 子供の学力低下要因

また、学力低下への対策として36.4%が「学習塾」、27.4%が「通信教育」と回答している(図3)。親世代の大半が現行の教育システムに問題を感じており、子供の学力向上のためなら多少の費用負担はしかたない、と考えているようだ。

図3 子供の学力低下防止策

低下しているのは学力より意欲?

本当の問題は学力低下ではなく、「意欲低下」にあるのではないかという説もある。(財)日本青少年研究所が東京・北京・ソウルの3都市の小学生を対象に行った国際調査によると、「勉強のできる子になりたいか」という質問に対して「そう思う」と答えた小学生は北京で78.2%、ソウルで78.1%。いずれも7割を超えたのに対して東京は43.1%と半数以下。「先生に好かれる子になりたい」と答えた割合でも、北京で60%、ソウルで47.8%に対して東京はわずか10.1%にとどまった。ともに受験戦争が過熱化している3カ国だが、中韓に比べて日本の小学生は際だって学習意欲が低く、また教師に対する尊敬の念も薄いことがわかる。

また、ベネッセ教育研究開発センターの「学習基本調査」をみると、「日本は努力すればむくわれる国だ」と感じている子供は小学校では7割近くだったのが、中学校では5割、高校では4割と学年が進むごとに減少。逆に「日本は競争が激しい国だ」と感じている子供は成長するほどに多くなっている(図4)。

図4 小学生・中学生・高校生の社会観

「勉強すれば良い仕事に就ける」というかつての概念が崩れ、「勉強ができたからといって幸せになれるとは限らない」という思いや、「知る喜び」を感じづらい暗記学習の功罪、受験などによる心的ストレス...。子供の学習意欲の低下は教育現場だけでなく、社会のさまざまな要因が反映された結果といえそうだ。

教育基本法改正、学校選択制、民間人校長...学校が変わる

いじめや不登校、学力低下など多くの問題を抱える教育現場では、抜本的な改革を目指して数年前からさまざまな試みが行なわれている。たとえば、2000年に学校教育法施行規則が改正され、校長の資格要件を緩和。これにより、教員でなくても校長に就任することが可能になり、民間人校長が続々と誕生している。文部科学省の調べによると、教員出身でない校長の在職者数は開始年には1名だったものが、6年後の2005年度には103名と急増(図5)。ビジネスや地域活動で得た知識やノウハウを学校運営に活用し、教育現場に新風を吹き込んでいる。

図5 教員出身でない校長の在職者数の推移

また1997年より公立小中学校の通学区域に複数の学校がある場合、生徒が学校を選ぶことができる「学校選択制」がスタート。2005年度には小学校で227自治体、中学校で161自治体が導入している。子供の自主性や学習意欲が高まる、特色ある学校作りができるといった期待感から、内閣府のアンケートでも保護者の7割近くが「導入に賛成」と回答している。

しかし、学校間で格差が生まれるといった不安要素もあり、現在実施しているのは全自治体の1割程度だ。また、いじめを理由に学校を変更できることを知らない保護者は17%おり、いじめを理由にした転校を「拒否する場合がある」と答えた教育委員会も391市区にのぼることが判明。いじめによる自殺が相次ぐ中、政府は制度の普及と現場での対応改善を急いでいる。

さらに1947年の制定以来、一度も改正されていなかった教育基本法が2006年末に改正された。ゆとり教育の見直しも進む。2006年度に全国の高校で起きた「未履修問題」など、揺れる教育現場。抜本的な教育改革を最重要課題として掲げる安倍内閣が、学校をどう変えていくのか、日本中が注目している。

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