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荒れる学校、病める教員

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減らないいじめ。事件数は前年比4割増

いじめを苦にした子供の自殺や、いじめにからむ事件が後を絶たない。文部科学大臣が自殺に走る子供に向けて異例のメッセージを発信するなど、国を挙げて問題に取り組んでいるが、その一方で実態がなかなか把握できないのがいじめの難しいところでもある。

文部科学省が毎年行っている「生徒指導上の諸問題の現状について」の調査結果によると、2005年度の公立学校のいじめ発生件数は2万143件で、前年比7.1%減。いじめによる自殺者は7年連続で0人となっている。しかし、いじめが減少しているとする文科省調査は、むしろ学校や政府がいじめの実態を把握できていないことの表れという意見が多い。

事実、警察庁のまとめによると、2006年の「いじめに起因する事件の件数」は前年比41.2%増の233件で、4年連続で増加している(図1)。検挙・補導人員も460人(前年比41.1%)で、4年前と比べると倍以上に急増するなど、いじめの深刻さが顕著に表れた結果になった。

図1 いじめに起因する事件数

いじめの原因・動機については、「力が弱い・無抵抗」がおよそ半数の46.3%を占めていることから、無抵抗な相手に対する虐待が急増していることがうかがえる(図2)。いじめの発生件数は小学校から学年が進むにつれて多くなり、中学1年生が最も多い。全体の発生件数、いじめ事件で検挙された人数は、いずれも中学生が約半数を占めた。

図2 いじめの原因・動機

いじめを苦にした中学生の自殺が話題になり、その後もいじめによる自殺が多発した1986年に生まれ、つねに、いじめ問題を意識し続けてきた2007年の新成人(587人)に行ったアンケートによると、回答者の46.5%がいじめを経験し、そのうち13.3%が「いじめで自殺を考えた」と答えている。「いじめがあっても周囲の大人は何もしてくれないと思う」が76.0%、「いじめが今後も改善されるとは思わない」が83.7%と、いじめに対する悲観的な若者像も見える(結婚情報サービス「オーネット」(株式会社オーエムエムジー)調べ)。いまだ根深いいじめ問題。2007年2月に文科省が全国統一の24時間いじめ相談ダイヤルを設置するなど、さまざまな対策がとられる一方で、実態把握が急がれる。

校内暴力、不登校、保健室登校は依然多数

「学級崩壊」「学校の荒れ」が叫ばれて久しいが、いじめ同様、学校にまつわる問題は深刻化する一方だ。2005年度の公立校で起きた暴力行為の発生件数は3万4018件で、うち89%が学校内で起こっている。また30日以上学校を欠席した国公私立の小学生は2万2709人、中学生は9万9546人(図3)、高校は5万9419人と中学生の割合が高い。特に中学2・3年生だけで7万6983人と全体の40%以上を占め、不登校の傾向が強いことがわかる。また不登校の理由について、小学校では「本人や家庭に起因」が多かったのに対し、中学・高校では「学校生活に起因」が4割前後を占めていることから、学年が進むほど学校で何らかの問題が発生していることがうかがえる。

図3 不登校児童生徒数の推移

こうした不登校や校内暴力への対策として、各学校ではスクールカウンセラーを配置し、養護教員を複数配置するなどのサポートを行っている。特に近年は教室へ行かず(または行けず)に保健室で過ごす、不登校予備軍ともいわれる「保健室登校」が増加中。全国養護教諭連絡会の調べでは、保健室がある小中高校は全国に2万3986校あり、そのうち31.8%の学校が保健室登校生徒がいたと答えている(図4)。保健室登校児童の半数がいじめや友人関係を理由に心身の健康問題を抱えているといわれ、ヘルスカウンセリングの強化が叫ばれている。

図4 保健室登校児童生徒のいた学校の割合

4000人が心の病...。自信を失う教師たち

心身の健康を損なっているのは教師も同じである。文部科学省のまとめによると、2005年度に病気休職した教員のうち、うつ病などの精神疾患による休職者数は4178人と、初めて4000人を突破した。休職者数はここ10年増加の一途で、心の病を抱えた教師は1996年から実に3倍以上に膨れあがっている(表)。ストレスから鬱病や神経症を患う教師が増えており、人間関係や保護者への対応、いじめ問題など、教育現場における教師の立場の厳しさが顕著に表れたデータだ。

表 病気休職者数等の推移(1996年度〜2005年度)

一方で、懲戒免職など処分を受けた教員数も増えている。文部科学省によれば、2005年度に処分を受けた教員数は4086人で、前年比10%増。飲酒運転、人身事故などの交通事故で処分されたのが2406人と過去最高、次いで体罰、わいせつ行為と続いている。近年、特に問題視されているのが教師の性犯罪。2005年度にわいせつ行為で処分を受けた教員は142人と前年度より減少しているが、相手の半数が自校の生徒または卒業生で、学校内での発生率は依然高い。

さまざまな問題を抱えた教育現場に、明るい兆しが現れるのはいつだろうか。

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