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マス4媒体の盛衰

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変化するマス4媒体

人間の文明には、情報伝達手段の革新とともに発展してきたという側面がある。文字や印刷の発明が近世までの文化を形作り、19世紀に電信が発明されると、文明の発展は加速し、多様性に富んだ近現代文明を生んだ。20世紀後半において、情報伝達の中心を担ったのが、新聞・出版(雑誌)・ラジオ・テレビの、いわゆる「マス4媒体」であった。もちろん、これらのマス4媒体は、現在においても、中核的存在をなしている。しかし、多様性がさらに増している21世紀にあっては、当然比重も変化してくるものと考えられる。

人間にとっても、最も古くから付き合いのあるメディアが出版。「活字離れ」が叫ばれて久しいが、出版科学研究所による「2006年出版指標年報」を見ても、確かに90年代半ば以降は全体として長期低落傾向を示している(図1)。メガヒットを記録するベストセラー作品がなくなっているわけでなく、活字離れという言葉が正しいとは言えない面もある。若者人口の減少といった社会的側面も無視できない。しかし、出版界がそうした環境に対処できていないのも確かで、新たなブレークスルーが必要なようだ。

図1 日本の出版販売額(取次ルート)

同じく活字媒体である新聞も、苦戦している。日本新聞協会による1993年以降の一般紙の発行部数をみると、2001年の4755万9052部をピークに減少傾向にある(図2)。一方で、全国の世帯数は増加していることから、単身者世帯を中心に新聞を購読していない世帯が増えていることが考えられる。雑誌も含めた出版物と異なり、新聞から入手する情報自体が代替可能と捉えられている可能性もある。

図2 新聞の発行部数と世帯数の推移

20世紀を代表する媒体といえるのが、テレビ放送。速報性に加え、映像という強力な武器を持ち、家庭における情報入手ツールとして、文字通り一時代を築いた。しかし、そのテレビにも変化が訪れている。1つは、衛星放送だ。衛星放送協会のデータによると、衛星放送契約者は年々増加している(図3)。

図3 年度別 衛星放送契約者数の推移データ

このうちCS放送契約は、2006年3月に加入件数1000万を突破したが、これはもう1つの変化であるケーブルテレビ契約者数の増加と密接に関連する。ケーブルテレビ契約者数も総務省調査によると年々増加しているが、CS放送コンテンツをケーブルテレビに配信することの相乗効果が出てきた結果といえる。一方で、従来の地上アナログ放送が、地上デジタル放送に移行しつつあり、コンテンツの高品位化が進む。現在、CS放送ではほとんど対応できていない状態だが、早急に対応しなければせっかくの相乗効果が薄れてしまう可能性もある。

ネットワークメディアの伸張

こうしたマス4媒体に生じている変化は、日本人の行動の変化からも裏付けられるようになっている。NHK放送文化研究所が5年ごとに行っている「国民生活時間調査」によると、マス4媒体に接触する時間は、2000年と2005年では必ずしも大きな変化はない。たとえば平日にテレビを見た人の視聴時間平均は、2000年が4.01時間であるのに対し、2005年は4.02時間と変わらない。しかし、「1日に15分以上テレビを見る」という行為をした人は、2000年に全体の93.6%であったのに対し、2005年は91.4%に減っている。新聞についても、1日当たりの読む時間では変化がないが、1日に15分以上読むという人は47.5%から42.1%に減少している。独立行政法人・情報通信研究機構の「インターネットの利用動向に関する実態調査報告書」においても、テレビや新聞の利用時間には大きな変化は見られないが、インターネットの利用時間が著しく伸びており、マス4媒体に変化を与えているのが、インターネットなどのネットワークメディアであることが推測される(図4)。

図4 1日当たり平均メディア利用時間の推移(全体平均)

「媒体がいかに利用されているか」ということに最も敏感なのが、広告出稿。電通のデータによると、2006年の日本の総広告費は、5兆9954億円で前年比0.6%増となった。しかし、マス4媒体はいずれも前年実績を下回っており、マイナス傾向が続いている(図5)。一方で、CATVやCS放送などの衛星関連メディア、インターネットなどは堅調に伸びており、メディアの地殻変動が起きつつあることは間違いない。

図5 媒体別広告費

しかし、マス4媒体も黙っているわけではない。もとはといえば、活字媒体と放送媒体の間にも競争があったのは事実であり、それでも放送媒体が活字媒体を駆逐したわけではない。どちらかといえば、相乗効果を生んできたというのが歴史的事実だ。これはマス4媒体とネットワークメディアについてもいえる。

gooリサーチが2006年に行った「広告媒体の注目度」に関する調査では、インターネットの利用が普及する一方で、テレビ広告や新聞広告の注目度が依然高いことを示す結果が出ている。それによると、最も視聴する広告媒体はテレビ広告が60.9%でトップ、新聞広告12.9%とパソコンサイトのバナー広告9.7%が続く(図6)。テレビ広告に関心があるという回答が35.2%あり、女性に限ると40%を超えている。一方でインターネットのバナー広告については、バナー広告からプレゼントやキャンペーンの申し込みをしたり、メールマガジンや会員登録を行うなどのアクションに結びついているとの結果が出ている。その上で、自分自身の消費行動や購買行動にあわせた広告を期待する声も40%に達している。

図6 最も視聴する広告媒体

実際、新聞やテレビ、雑誌などのマス4媒体でも、インターネットと連動しての検索型広告などが拡大してきている。クロスメディアによるトライアルの中から、21世紀型のマスメディアや新たな文明が誕生してくる可能性は高い。

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