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日本人の読書離れは進んでいるのか

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出版販売額は長期低落傾向

日本人の読書離れ、本離れが進んでいるという。はたしてそれは本当だろうか。まず、出版業界の売上げ推移から見ていくことにしよう。

出版科学研究所が発表した「2006出版指標年報」によれば、書籍・雑誌とも1996〜1997年に販売額のピークを迎えて以来、長期低落傾向を続けている(図1)。

図1 日本の出版販売額

書籍の場合、2000〜2006年の販売額は9000億〜1兆円を前後しており、低落傾向は止まったようにも見えるが、読者が戻ってきたと判断するのは早計である。2002年、2004年の伸びは、『ハリー・ポッター』シリーズや『世界の中心で、愛をさけぶ』といったメガヒット商品によってもたらされたものであり、こうした商品の有無によって年間販売額が左右されるのが実情である。

一方、月刊誌・週刊誌は書籍のようなメガヒットもなく、じりじりと右肩下がりを続けている。マンガ雑誌の落ち込み、フリーペーパーの興隆なども強く影響していると考えられる。

インターネット利用時間と読書時間の関係

では、日本人は今、1日にどれくらい読書をしているのか。2005年10月にNHK放送文化研究所が実施した「国民生活時間調査」によれば、雑誌・マンガを含めた本について、平日では18%の人が読書をしていると回答。読んでいる人の平均時間は、1時間9分という結果になった。読んでいない人も含めた全体の平均読書時間は、1日に13分である(図2)。

男女年層別にみると、男女とも10代の読書時間が長くなっている。ただし、前回(2000年)の同調査で「雑誌・マンガ」と「本」を分けた結果では、10代では「雑誌・マンガ」の読者が多かったことから、今回も10代の読書の大半は「雑誌・マンガ」だと考えられる。

その他、男性の30代〜50代、女性の60代以上で、読書時間が平均10分以内と、極めて短くなっているのが目立つ。

図2 インターネット利用時間と読書時間との関係(平日)

この調査では、同時に趣味・娯楽としてのインターネットの利用時間も尋ねている。つまり、仕事以外で利用するウェブの閲覧、オンラインゲーム、ネットオークションなどに費やす時間である(メール、掲示板などでの時間は除外)。

その結果を見ると、平日で全体の13%がインターネットを利用していると回答。利用者の平均時間は1時間38分という結果になった。ちなみに、土曜、休日では2時間を超えている。

インターネットをしない人も計算に含めた平均利用時間は、1日に13分となった。これは、読書時間とまったく同じである。ただし、雑誌・マンガを除いて考えると、読書時間よりもインターネットを利用している時間のほうが、はるかに長いという実態が浮き彫りになってくる。

児童・生徒の読書離れは収まった

次世代を背負う小・中・高校生の読書の実態はどうか。全国学校図書館協議会と毎日新聞社が毎年5月に実施している「読書調査」のデータを見てみよう(図3)。

2006年の1カ月間の平均読書冊数は、小学生は9.7冊、中学生は2.8冊、高校生は1.5冊。過去の実績とくらべてみるとわかるように、ここでは読書離れの傾向は読み取れない。それどころか、小学生では過去最高の冊数を記録。中学生においても、ここ数年3冊前後で推移しており、それ以前よりも読書量が明らかに増えていることがわかる。もっとも、これは読書離れ、本離れに危機感が持たれたことで、学校での読書指導が活発化したことによる面が大きいと考えられる。

図3 小・中・高等学校児童の1か月間の平均読書冊数

この調査では、調査対象の1カ月間に1冊も読んでいない児童・生徒の数も同時に調べているが、2006年では、小学生6.0%、中学生22.7%、高校生50.2%となっている。この数は、1990年代後半にピークを迎えて以来、徐々に減る傾向にある。こうした結果から、少なくとも教育現場では、読書離れは収まったと見ることもできるだろう。

ケータイ小説で読書離れを阻止?

紙媒体の本の売上げが減少する一方で、最近ではパソコンや携帯電話の画面を使った「読書」が普及してきた。いわゆる電子書籍というメディアである。なかでも、「携帯電話で本を読む」という新しいスタイルの読書がここに来て注目を浴びている。

IMJモバイルの「携帯コンテンツの利用実態調査」(図4)によれば、携帯電話を使った電子書籍に「興味がある・講読している」と答えた人は全体の24.1%。一方、「興味がない」が57.5%、「電子書籍を知らない」が18.5%と、認知度もまだまだのように見える。だが、10代の女性に限って見ると、「興味がある・講読している」が52.9%にはねあがる。20代の男女もそれぞれ約38%が「興味がある・講読している」と回答している。新しい流行の中心となってきた、こうした若い世代に支持されていることが、携帯電話による電子書籍の将来性に期待を持たせる。

同時に、電子書籍で興味があるジャンルを尋ねたところ、「最新コミック」が44%、「昔のコミック」が42%、「小説や文学」が37%となった。まだまだ「ケータイ小説」というと一段低くみられる傾向があるが、正確な評価にはもう少し時間がかかるだろう。

今後、電子書籍が使いやすくなれば、紙媒体の本はさらに減少して、パソコンやネットに移行していくことだろう。はたして、それを「読書離れ」と呼んでいいものかどうか。

「紙媒体離れ」は進んできたが、それと「読書離れ」とは厳密に区別して議論すべきだろう。

図4 携帯における電子書籍利用の受容性

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