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日本のコンテンツ産業の海外進出

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テーマ「流行る廃る」

日本のコンテンツの市場規模は全世界の1割たらず

日本のマンガ、アニメ、ゲームが海外で人気を呼んでいる。戦後、映画が中心だったわが国のコンテンツの輸出は、形や規模を変えて、今ではさまざまな領域で進められている。日本のコンテンツ産業の海外進出はどのような状況になっているのか、新旧のデータを参考にしながら見ていくことにしよう。

まず、世界のコンテンツ産業の市場規模だが、政府の知的財産戦略本部・コンテンツ専門調査会の報告によれば、2000年に1兆400億ドルだったものが、年々拡大を続け、2006年には推定で1兆4000億ドルに達すると言う(図1)。

図1 世界のコンテンツ産業の規模の推移

このうち日本の市場規模は、経済産業省によれば2005年時点で13兆6811億円。統計によってコンテンツの定義が多少異なるため、厳密な比較は難しいものの、全世界の約1割に満たないのが現状である。ちなみに、全世界の市場規模の約半分はアメリカが占めている。

また、アジア太平洋地域に限ってみると、日本が市場規模の半分を占めているが、ここにきて、ゲームや映画などの部門を中心に、中国や韓国の追い上げが激しくなっている。同報告によれば、全世界のコンテンツ産業の成長率は2006年に6.5%だが、アジア太平洋地域はそれを大きく上回る7.1%を記録。2004年以後は、世界と比較して高い成長率を遂げている。日本にとって、世界全体はもちろんのこと、アジア太平洋地域は大きな可能性を秘めた市場といってよい。

コンテンツの海外収支はゲームソフトを除き赤字

日本のコンテンツの国際収支については、経済産業省の調べによれば、2001年に約900億円の黒字であったという。ところが、これを「ゲームソフト」「出版」「映画」「放送番組」「音楽ソフト」の分野別に見ると、ゲームソフト以外は大幅な赤字となっており、ゲームソフトだけで黒字を稼いでいることがわかる(図2)。

図2 日本のコンテンツ産業の海外収支

現在もこの状況は大きく変わっていないと見られている。「ポケットモンスター」が欧米で成功し、宮崎駿のアニメ作品が海外で高い評価を受けたとはいえ、それ以上にハリウッド映画や欧米の音楽ソフトの輸入の方が大きかったわけである。

それでは、大きな黒字をあげたゲーム産業の実情はどうなのか。残念ながら、けっして安泰と言える状況ではない。1980〜90年代前半には、世界のゲーム市場で日本製ソフトが圧倒的なシェアを誇っていたが、2003年には最盛期の6分の1以下に低下。2004年からはようやく回復傾向を見せてきたところだ。

ゲーム産業の海外向け市場規模は、社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が毎年「国内・海外別ゲーム出荷金額規模」として発表しているが、それによると、2005年の海外向けゲーム出荷額の総計は、新型携帯型ゲーム機の本格投入もあって9614億円に達し、2001年のレベルにまで回復した。内訳はソフトが2528億円、ハードが7086億円である(図3)。

輸出先を地域別にみると、ハード、ソフトともに北米向けがトップで、ハードは全体の約6割、ソフトは約7割を占めている。アジア太平洋地域向けは、ハード、ソフトとも1割前後となっている。

図3 海外向けゲーム出荷金額規模

国家戦略としてコンテンツ産業を育成するチャンス

海外におけるゲーム市場は、年々かなりのペースで拡大している。コンピュータエンターテインメント協会による「2006CESAゲーム白書」によれば、2001年の時点で世界最大の市場を持っていたのは日本であり、その市場規模は3685億円であった(図4)。

ところが、その後、北米、欧州とも急速に市場が拡大し、2001年から2005年の間に北米は約2倍の7117億円、欧州は約3倍の5467億円に達している。それぞれ、2005年には日本の2.2倍、1.7倍の規模となっている。

ところが、問題はそうした海外の市場規模拡大に対して、先に示したように、日本のゲームの海外出荷額が増えていないことである。かつてはゲーム大国と言われた日本だが、近年は欧米企業や中韓の企業に押され気味といっていいかもしれない。

こうした状況に危機感を抱いた経済産業省は、2006年8月に「ゲーム産業戦略〜ゲーム産業の発展と未来像〜」というレポートを発表。人材の育成や開発力の強化に乗り出している。ことはゲームに限らず、日本の誇るもう一つのコンテンツ産業であるアニメ界もまた人材不足、資金難などで「空洞化」の危機をはらんでいる。

図4 家庭用ゲームの海外市場規模の推移

しかし、ここに来て世界各国で、従来よりもマニア度の進んだ日本のマンガや風俗が脚光を浴びるようになった。こうした現象は、単独で見た場合には大きなビジネスにはならないかもしれないが、その影響は測り知れないものがある。

先に引用した知的財産戦略本部・コンテンツ専門調査会の報告によれば、「ポケットモンスター」は国内だけでもアニメ、映画、玩具、衣料用品などで1兆円の効果を生み出し、さらに海外進出をしたことで波及効果の合計は約2兆円に達したとの試算があるという。

さらに、コンテンツが海外で受け入れられることにより、たとえば外国人観光客の来日増加による観光産業への貢献、あるいは日本に対する好感度増大といった現象も含めて考えれば、その効果は莫大なものとなるだろう。

日本のコンテンツが世界で注目を集めている今こそ、日本のブランドを世界に定着させ、コンテンツ産業を21世紀の日本を支える重要な産業に育てるチャンスなのである。

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