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バラ色ばかりではない沖縄移住

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あこがれの南国沖縄

「南国」沖縄に移住したいという人が増えている。ダイビングなどマリンスポーツを楽しみながら暮らしたいという若者から、終(つい)の住処(すみか)を沖縄にしたいというシニア・シルバー層まで性別も年齢もさまざまだ。

総務省の「住民基本台帳人口移動報告年報平成17年統計表」によると、全国で年間の転入者数が超過となっているのは、東京、千葉、神奈川、愛知、滋賀、兵庫、福岡、沖縄の8都県のみである(図1)。

図1 沖縄県の転入超過数

インターネットでは、沖縄に移住した人、これから移住したい人のホームページが、数多くあり、掲示板などを使った情報交換も行われている。人気の高まりに応え、地元の旅行会社や不動産会社では、移住を前提とした下見ツアーを企画するところもある。地元の沖縄銀行では、県外から移住する人向けの住宅ローンも開発し、拡大に力を入れている。

むろん、移住先としてこれほど注目されるのは、沖縄だけであろう。

だが、沖縄は決して「楽園」とばかりはいえない。穏やかな気候の中で、悠々自適のゆとりの生活というイメージを持って訪問したものの、現実とのギャップに耐えられず、結局、本土に帰る人も少なくないのだ。

沖縄の厳しい現実

まず、沖縄の賃金所得を見てみる。厚生労働省の「平成18年賃金構造基本統計調査結果(都道府県別速報)」によると、残業などを除く所定内労働に対する平均月給額は、最高が東京の37万5000円で、沖縄は22万2600円である。全国で下から2番目、最下位には青森の22万1700円があるとはいうものの、その差はわずかだ。前年も東京と青森が最高と最低、沖縄は下から2番目だったが、上位と下位の差は年々開いている。地域の格差は、今後さらに広がるのではないかと予想されている。

また、「沖縄に移ってから何か仕事を探して」というのは、かなり厳しいようだ。総務省の労働力調査によると、2006年平均の沖縄県の完全失業率は7.7%と、全国平均(4.1%)と比較しても突出している。むろん、全国でも最も低い数値である(図2)。

図2 都道府県別完全失業率(モデル推計値)

その背景には、沖縄の経済構想そのものがもつ課題があるだろう。農業、観光業を除けば、地域経済は依然として県外依存度が高い脆弱な構造。特に強みを持つ製造業が少ない。また、県内の雇用の多くを米軍基地や公共事業が担っているのも事実だ。

雑誌やテレビ番組では、「月10万円で暮らせる」「100坪の土地が無料」といった田舎暮らしが紹介されている。確かに、過疎の村などではそれも事実だろうが、沖縄で同様のことを期待するとがっかりすることになる。

地価は決して安くないのである。国土交通省の「平成18年都道府県地価調査」によると、住宅地の都道府県別価格指数は、東京を100とすると沖縄県は13.7である。というと、割安なイメージをもつかもしれないが、九州で沖縄よりも平均価格指数が高いのは、福岡(15.8)のみである。鹿児島(10.4)以下、他県はすべて1けた台だ(図3)。

図3 住宅地の都道府県別価格指数

沖縄の住みよさとは

沖縄の物価はどうだろうか。総務省「消費者物価指数年報」によれば、2002年の平均では全国で47番目、つまり一番物価が安い。前述のとおり収入は少ないが、それに見合った生活は可能なのだろう。

東洋経済新報社が毎年発行している『都市データパック』(2006年版)に都市別「住みよさランキング」というのがある。沖縄の各市は、ポイントが高いか低いかの両極端に分かれているのが特徴的だ。病院などの病床数や介護老人用の保健・福祉施設数、出生数を基準とした安心度で全国780市中1、4、5位を沖縄県が占める。一方小売年間販売額や金融機関数などの利便度と高い地価を反映した住居水準充実度では、700台の順位が目立っている(表)。

表 住みよさランキング(沖縄県全11市の順位

こうしてみてくると沖縄の生活をよくも悪くもするのは、その目的次第と思われてくる。東京や大阪などの大都市と違い沖縄で事業を成功させて、裕福な生活を夢見てやってくる人はごく少数だろう。大半の人は、温暖な気候、美しい自然や青い海を眺めながら、時間の流れを楽しんで暮らしたいと思っている人たちではないか。贅沢な暮らしを望むのではなく、収入は少なくても恵まれた自然の中でつつましく暮らしていければ、という覚悟があれば、まさに沖縄は楽園となる。

また、人口流入が続く沖縄は、過疎化の進む多くの地方都市とは明らかに違った側面を持ち、それだけでも十分刺激的で街も今後ますます活性化されていくだろう。それも沖縄の大きな魅力の一つに違いない。

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