家庭に浸透する中食のアイキャッチ

家庭に浸透する中食

トレンド 食べる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

テーマ「食べる」

中食産業の市場規模は約7兆円

単身世帯の増加や女性の社会進出といった背景によって、「食」のあり方は大きく変わってきた。その象徴となったのが外食産業の拡大である。ところが、1990年代後半から、外食の市場規模は年々縮小し、代わりに成長を続けているのがコンビニエンスストアの弁当や、スーパーやデパートで販売されている惣菜の売上げである。

このように、すでに調理された状態で販売され、そのまま家や仕事場などに持ち帰って食べられる食品は、「中食(なかしょく)」と呼ばれている。家庭内で食べる「内食(うちしょく)」と外食との中間にあるという意味で使われるようになった造語だ。

中食産業の規模自体は、まだまだ外食産業には及ばないものの順調な伸びをみせている。外食産業総合調査研究センターの推計によれば、2005年時点で中食産業の市場規模は約6兆3500億円。毎年順調な伸びをみせており、1995年から10年間で1兆3500億円、25.9%の伸びをみせている(図1)。

図1 中食の市場規模

実は、中食についての明確な定義はない。そのため、どこからどこまでを中食産業と扱うかは難しいところがある。たとえば、外食ショップで弁当やサンドイッチを買い、それを家に持って帰って食べた場合、それを中食とするかどうか判断が難しい。そうした「隠れ中食」を含めれば、中食産業はすでに7兆円に達しているという見方もある。

家計に占める中食の比重は着実に増えている

実際に家計に占める中食の割合はどの程度になっているのだろうか。総務省統計局の「家計調査」では、1965年を100とした食料費の年間支出額の推移をみることができる。それによると、食料費全体については、消費者物価の変動分を取り除いた実質金額でみると、ここ30年あまり、それほど変動していないことがわかる(図2)。

図2 食料、調理食品および外食の実質年間支出金額指数(全世帯)

ところが、中食(調理食品)と外食は大幅に増加し、2005年には中食2.3倍、外食1.8倍を記録している。このうち、外食は1992年以降、減少傾向にあるのに対して、中食は右肩上がりの増加を示している。

では、中食産業成長を担っているのは、どのような店舗、企業なのだろうか。(社)日本惣菜協会の「惣菜白書」によれば、2004年時点でのチャネル別シェアのトップは、弁当や寿司などの「専門店」で38.7%、ついで「コンビニエンスストア」の27.1%、さらに、「食品スーパー」21.7%、「総合スーパー」12.3%、「百貨店」0.2%と続く。1999年のシェアと大きく変わってはいないものの、コンビニエンスストアが2%の伸びをみせているのが目を引く(図3)。

図3 中食市場におけるチャネル別シェア(1999年→2004年)

企業別の店舗売上高をみると、2005年度は上位3社をコンビニエンスストアが占め、ベストテン中コンビニエンスストアが5社、専門店が5社という構成だ。また、この上位10社で中食市場の売上げの3分の1を占めている。

中食の利用頻度とその目的・理由は

では、日本人はどの程度の頻度で中食を購入しているのだろうか。2003年に農林水産省が、弁当類、調理パン類、麺類、惣菜類といった中食の種類ごとに尋ねた調査がある。

それによれば、どの中食も「月に1回以下」という回答が最も多く、弁当類は「購入したことがない」を含めると7割近くに達する。一方、利用度が高いのは調理パン類と惣菜類で、どちらも週に1回以上利用するという人の合計は、30%強となる(図4)。もっとも、日持ちのする中食は、1回の購入で何日にも分けて食べることができるため、「中食を『食べている』頻度」ならば、これよりもかなり高い数値が出てくるだろう。さらに、大都市のみ、あるいは若年層を対象にした調査では、数字は大きく変わってくるのではないかと思われる。

図4 中食の購入頻度

そうした中食を利用する目的・理由について、「ぐるなび」が30代、40代の男女約500人を対象に、2006年に実施した調査がある。それによれば、多い順に「時間を節約できる」「いろいろな品目から選べる」「夜遅くでも買える」「少量でも買える」「価格が安い」「キッチンが汚れない」といった意見が並んだ。一方で、「栄養バランスがよい」「ヘルシー感がある」「安全性が高い」という意見は少数にとどまっている。

手軽さや便利さで市場規模を拡大してきた中食は、まだまだ市場規模を伸ばす余地はあるだろう。だが、中食に対して「味がいま一つ」「添加物が多いのでは」という思いが抜けず、抵抗感を持つ人も少なくない。

今後は、そうした「これまで中食を利用しなかった人」を対象にした商品開発が求められていくことだろう。栄養バランスがよく、ヘルシーで、安全だという認識を得ることができれば、中食はまた新しい展開をみせるに違いない。

NTTコム リサーチは、平成24年10月1日にエヌ・ティ・ティ レゾナント株式会社からNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社へ事業譲渡され、平成25年12月9日にgooリサーチより名称変更いたしました。gooリサーチの調査結果(共同調査含む)等についてはこちらまでお問合せください。

タグ: .

上へ戻る