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安全に関する意識調査

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揺らぐ安心-安心の“モノサシ”はいま

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gooリサーチ と 日刊工業新聞 による共同企画調査

日刊工業新聞 2006年8月12日から連載

gooリサーチと日刊工業新聞社による共同企画調査<第27弾>

安全に関する意識調査

~揺らぐ安心-安心の"モノサシ"はいま~

消費者は製品やサービスに対する安全への意識をどう高めているのか―。日刊工業新聞社はNTTレゾナントと共同で、全国の一般消費者を対象に「goo」リサーチを利用した「製品・サービスの安全」に関するウェブアンケートを行った。「安全」について定義せず、回答者が自身の考える安全をベースに答えを記すようにした。有効回答数は1064人。

調査結果について

■製品・サービスの安全性

最初の設問では、85年8月12日の日航機墜落事故から21年が経過したことを受けて「20年前に比べて製品とサービスの安全性が高まっているかどうか」を聞いた。

社会全体で20年前に比べ、製品・サービスの安全性は高まっていると感じますか。のグラフ

回答は、安全が「高まっている」「どちらかといえば高まっている」という答えが71.6%に達した。この間、JR西日本による福知山線での脱線事故や六本木ヒルズ回転ドア事故、シンドラーエレベータ製エレベーター事故などが続発。だがアンケートでは社会全体で安全性が高まっているという意見が多数を占め「どちらかといえば低下している」は15%、「低下している」は5.3%だった。

事故の頻発という現実がある中で、製品・サービスの安全について「意識しはじめた時期」についても聞いた。ここ1、2年の回答割合は5.5%にとどまり、最も多い答えが「5―9年前から」の28.6%。次いで「3―4年前から」の19.5%だった。

ただ「特に意識していない」が18.4%と関心を持たない層が2割近くいることが分かった。年齢別でみると回答層で最も若い年代の20代が25.2%、30代は21.7%。最も少ない60代でも12.7%が無関心派だった。

■購入基準「安全」は4位

製品やサービスを購入・選ぶ(利用する)際の基準を何に置いているかについての設問で「安全」は4位の11.8%。「デザイン」(4.3%)、「環境対策」(0.8%)と比べ重みを持って意識されていた。

安全より上位の答えは「品質」(33.4%)、「機能」(25%)、「価格」(24%)の順。
重視の基準で「品質」や「機能」が「価格」を上回る結果になっており"モノを見る目"が冷静な消費者が今後も増えていくと安全がさらに重視される傾向となりそうだ。

製品・サービスを購入・利用する際、どの要素を選択の基準として優先しますか。のグラフ

■第三者機関の権限強化 技術向上・革新を

企業はモノづくりやサービスに安全という付加価値をどう盛り込んでいくべきなのか。製品やサービスの提供者が安全対策にどの程度のコストをかけるべきかも聞いた。

回答者の意識として鮮明になったのは、コストを十分にかけるべきだという意見。選択項目中、最も割合の少ない「5%程度以下」が適当とした答えはわずか2.5%。最も多かったのは「30%程度」の30.2%、「50%程度」という回答も21.7%あり2位だった。

購入・利用する製品・サービスにかかるコスト全体のうち、製品・サービスの提供者は、安全対策にどの程度かけるのが適切だと思いますか。のグラフ

総コストのうち30―50%をかけるべきだという意見は、企業側にとっては現実感に乏しいかもしれない。しかし、消費者はそうした認識で対応を迫っているという興味深い結果になった。

では安全性を高めるために企業には何が必要か。製品やサービスを提供する側の企業にとって厳しい結果と受け止める必要がありそうなのは、直接の注文ではなく「第三者的なチェック機関の権限強化」という答えが首位で36.8%も寄せられた事実。また、「経営者のコスト意識改革」も22.3%あり、「技術向上・革新」の19.4%よりも注文がついた。

安全性を高めるには製品・サービスを提供する企業に何が必要でしょうか。のグラフ

■消費者意識 「実害を受けた経験がある」8.7%

安全をめぐって実害を受けた経験はどの程度あるのだろうか。過去に製品やサービスで安全を軽視したことが起因とみられる被害に遭ったことがあるかどうかを聞いてみた。

結果は「ある」が8.7%。この数字を多いと見るか、少ないと見るかは見方が分かれる。だが、具体的な事象を問うと異物の混入といった食品に対する事例や、石油ファンヒーター、テレビ、パソコン、ヘアカーラー、電気カミソリなどからの発火・異常過熱などのケースが挙がった。また製品の金属端やバリで指などをけがしたという被害が7件、フレームの折損など自転車にまつわる被害も3件あった。

■「廃棄物」「食品」「エレベーター」に不安

最後に聞いたのは安全が脅かされていると思う分野。13の分野を挙げて聞いたところ67.1%が不安を感じていると指摘したのが「廃棄物の処理」。食の安全が叫ばれる中で「食品」も66.3%で続いた。3位は「エレベーター」の59.4%。記憶に新しいシンドラー製エレベーター事故が不信感を大きく増幅させているようだ。

4位は度重なる事故で国民にアレルギー反応を植え付けてしまった「原子力発電などエネルギー関連」で51.1%。5位は「航空機」の48.6%、6位は耐震偽装問題が発覚したことが引き金になったとみられる「住宅」で48%と厳しい目が向けられている。

あなたが安全が脅かされていると思う分野。のグラフ

■利益優先に批判 真剣に向き合う時代―感度低下 怠慢許せない 経営者の意識改革を

自由回答に寄せられた声を拾うと、目立ったのが安全を軽視し、利益優先に走る企業の姿勢を批判する声だ。「企業は利益を追求するあまり安全性は二の次になっている」「もうけ優先で安全後退の気配がうかがえる」と消費者の反応は手厳しい。「安全を軽視すればそのツケが必ず回ってくる」と警告する。

企業の感度の低下を嘆く声も多い。「完全なまでの安全というのは無理だろうが、それが予想できることに対して怠慢であることは許せない」「大きな問題になる予兆があるにもかかわらず、見過ごされてしまっている」といった指摘だ。「安全に対する経営者の意識が乏しい」「情報を隠さないでほしい」といった意見も少なくない。

一方で「社会全体で危機意識が麻痺していると思う」「日本人のモラルの低下がすべての安全性の問題に影を落としている」「消費者も自衛本能を常に働かせなくてはならない」「マニュアル化が進み人間の感覚が研ぎ澄まされなくなっている」など、企業だけを悪者扱いするのではなく、社会や消費者の側の意識を高める必要性を指摘する声もあった。

企業が安全を考える上で重要と考えられているのが人の問題だ。「正社員が減り、パートや契約社員が増えたため、サービスや製品の安全性の質的低下が顕著」「根本は従業員を大切にしない経営」といった意見がある。そして、「安全性の確保はその製品・サービスのスペシャリストがいなければ不可能で、企業は人材育成に力を注いでほしい」と提案する。

「安全性は製品やサービスすべての土台」「社会的責任を自覚して製品をつくってほしい」「信じられるに足る製品を送り出す努力を惜しまないでほしい」。安全をめぐり消費者は、企業にこうした切なる願いを寄せてきた。企業がうわべだけでなく、安全と真剣に向き合わなければならない時代がきている。

<調査概要>

  • 実施期間: 2006/07/24~2006/07/25
  • 有効回答数: 1,064

NTTコム リサーチは、平成24年10月1日にエヌ・ティ・ティ レゾナント株式会社からNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社へ事業譲渡され、平成25年12月9日にgooリサーチより名称変更いたしました。gooリサーチの調査結果(共同調査含む)等についてはこちらまでお問合せください。

この調査結果の単純集計を無料にて提供しています。

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