NTTコム リサーチ と 東京理科大学 と 東京大学 による共同企画調査
プレス・リリース 2019年1月10日
東京理科大学 松本朋子研究室
東京大学 太田勝造研究室、岡田謙介研究室、加藤淳子研究室
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
サーベイ・サンプリング・インターナショナル(SSI)社
AI搭載の自動運転車とIoT活用商品に関する国際調査
先端技術に対する期待も、その安全性に対する懸念も強い日本の消費者
東京理科大学 松本朋子研究室、東京大学 太田勝造研究室、岡田謙介研究室、そして加藤淳子研究室と、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本 良江)は、当社が運営するインターネットアンケートサービス「NTTコム リサーチ」の登録モニターおよび、サーベイ・サンプリング・インターナショナル(SSI)社の海外パネルの協力を得て、現在開発が進められている先端技術関連商品(AIを搭載した自動運転車、IoTを活用した商品)に関する国際調査を、日本、米国、英国、スウェーデンの計4カ国の各500名の消費者を対象に実施しました。調査の際は、各国の回答者の代表性を担保するため、各国の性別・年齢階級別の人口構成比に応じた割り付けを行いました。
近年、日本企業の多くは世界展開を念頭に、国内市場だけでなく海外市場に目を向けています。グローバル市場に挑戦する上で、販売網を広げることができる機会が見込める商品の一つは、既存の販売経路の影響を受けにくい先端技術に関連するものですが、一方、その売れ行きは予測が難しく、各国消費者の先端技術に対する姿勢に左右されます。先端技術に対する消費者の関心の高さ、期待度、そして、新商品の安全性への認知は、各国でどのような差異が見られるのでしょうか。今回の調査では、近未来市場に登場すると注目されているAIを搭載した自動運転車と、急速に商品化が進んでいるIoT活用商品の二つを例に、先端技術関連商品に対する消費者の態度について、欧米先進国3カ国と日本を比較調査しました。
総括
本調査の結果によれば、AIを搭載した自動運転車に対する認知度はどの国も高かった一方で、IoT技術を活用した商品の認知度は日本以外の3カ国では低いことがわかりました。各国間の違いを見ると4カ国の中では、先端技術を用いた商品について米国がやや高い関心を抱いており、対してスウェーデンは関心が低く、日本と英国が両者の中間に位置する結果となりました。
次に、AIを搭載した自動運転車が社会にもたらしうる様々な効果に対する期待度を見ると、日本が他国に比べて圧倒的に高い傾向にあることが判明しました。とはいえ、期待が寄せられる効果の上位は各国共通で、高齢者・障害者の移動支援、効率的な運転による燃料費の節約、重大事故の減少の3つでした。他方、IoT活用商品を利用したい場面について質問したところ、各国間に共通する傾向として、仕事の場面においてIoTを利用して労務状況を管理することについては否定的な評価の人が多かったのに対し、私生活での利用については前向きな人が多いことが明らかになりました。また、私生活でIoTを活用したい用途についても、各国共通で、財布・鍵の位置、室内温度の管理が上位に挙げられました。
消費者の先端技術に対する期待が高いからといって、必ずしもその期待が先端技術にかかる費用に対する支払い意欲に直結するとは限りません。この点について、本調査は、AI搭載の自動運転車に対象を絞って、現在使っている車にかけた費用に対して、いくらまでならさらに上乗せしてAI搭載の自動運転車に支払えるか、追加費用額を質問してみました。その結果、米国・英国・スウェーデンの人々は、自動運転機能を搭載するために、現在の車の購入価格の約半額までならば追加で支払う意欲があると答えました.それに対して日本人は、現在の車の購入価格の1/4程度の価格までしか追加で支払う意欲がないことがわかりました。
日本の消費者は他の3カ国に比べると、先端技術に対する期待はより強いにもかかわらず、先端技術導入のために必要となる追加費用を負担することにより消極的なのはなぜでしょうか。考えうる一因は、先端技術を用いた新しい商品の安全性に対する消費者の不安感でしょう。今回調査したいずれの国においても回答者の過半数が、システム不備による安全性の欠如や誤操作の可能性といった点に不安感を抱いていました.そして、商品の安全性に対する不安感の強さは、ほとんどの調査項目で日本人が他の国の人々を上回る結果となりました。
本調査結果の全体的傾向を見ると、先端技術を活用した商品に対して人々が期待している内容や活用方法について、各国間の違いは総じて小さいことがわかります。その一方で、日本の消費者が、目新しい技術の利便性に対して抱く期待の点でも、その技術製品の安全性リスクに対して抱く不安の点でも、他の3カ国の人たちよりも強く感じていることがわかりました.商品開発の方向性は同じでも、各国市場の消費者の傾向に合わせて製品の安全性についての保証や価格設定を行うことが求められているようです。
調査結果のポイント
(1) AI搭載の自動運転車、IoT活用商品に対する認知度と関心の高さ
まず、AI搭載の自動運転車、IoT活用商品、それぞれに対する認知度を調査しました。この結果、AI搭載の自動運転車については認知度がどの国も高い一方で、日本を除く3カ国ではIoT活用商品への認知度は低い結果となりました【表1】。
【表1】先端技術関連商品に関する認知度
日本 | 英国 | 米国 | スウェーデン | |
---|---|---|---|---|
AI搭載の自動運転車 | 78.2% | 73.6% | 72.4% | 88.0% |
IoT活用商品 | 68.0% | 41.4% | 46.2% | 37.0% |
一方で、それぞれの商品に対する関心の高さは、認知度とは異なる傾向が見られました。AI搭載の自動運転車とIoT活用商品、どちらの商品についても、米国では関心が比較的高く、逆に、スウェーデンでは関心が低く、両国の間に日本、英国が挟まれる結果となりました【図1】。
【図1】AI搭載の自動運転車とIoT活用商品への関心の高さ
(2) AI搭載の自動運転車に関する期待度とその内容
次に、自動運転車に対してどのような期待を消費者は寄せているのかを調べるために、七つの項目(「交通事故の減少」「重大事故の減少」「渋滞の解消」「移動時間の短縮」「高齢者・障害者の移動支援」「効率的な運転による燃料費の節約」「自動車保険料の低下」)について、それぞれへの期待感を五段階尺度で答えてもらいました。
結果を見ると、まず日本の消費者が他の国々に比べて自動運転車への期待度が高いことがわかります。各国共通で高い期待が寄せられている事項としては、「高齢者・障害者の移動支援」、「効率的な運転による燃料費の節約」、「重大事故の減少」の3つが挙げられます【図2】。
【図2】AI搭載の自動運転車に対し期待している事項
また、AI搭載の自動運転車を利用して、移動する時間に行いたいことについて「車内での会話」、「車外の人との会話・通話」、「読書」、「睡眠」、「動画視聴(テレビ・映画含む)」、「ゲーム(テレビゲームやカードゲームなど)」、「仕事・勉強」、「車窓の風景鑑賞」、「食事や禁酒」、「運動やストレッチ」、および「その他」の11項目から、上位3つまで選んでもらったところ、いずれの国も上位は「車内での会話」「車窓の風景鑑賞」という答えになりました。消費者は自動運転車の導入により、運転手が同乗者の立場でドライブを楽しめるようになることを期待しているようです【表2】。
【表2】AI掲載の自動車にて移動中に行いたいアクティビティの上位2位
日本 | 英国 | 米国 | スウェーデン | |
---|---|---|---|---|
1位 | 車内での会話 (54.2%) |
車窓の風景鑑賞 (51.8%) |
車内での会話 (48.4%) |
車窓の風景鑑賞 (46.6%) |
2位 | 車窓の風景鑑賞 (46.2%) |
車内での会話 (49.0%) |
車窓の風景鑑賞 (38.0%) |
車内での会話 (41.6%) |
(3) IoTの活用については、私生活と仕事場で利用意向に格差
IoTを活用する商品は多岐にわたっています。今回の調査では、「IoTを利用してどのようなモノの位置や状態を管理したいと思いますか」と質問し、鍵の位置やドアの開閉、生活・労務情報の管理といった活用方法について、私生活での利用・仕事場での利用別に、望ましいと思われる利用法を全て選んでもらいました。その結果、各国共通の傾向として、6割以上の人々が私生活でIoTを利用することに前向きな一方、仕事の場面においてIoTを利用して労務状況を管理することについては、7割近くの人々が否定的な立場を取ることがわかりました。この原因としては、企業情報が漏洩することへの懸念、また、社員の情報が企業に過度に管理されることへの懸念が考えられます【図3】。
【図3】IoTを利用したい場面
(4) 先端技術の導入にかかる費用への支払い意欲 : AI搭載の自動運転車を例に
先端技術に対する期待感の高さは、新たな技術導入にかかる費用への支払い意欲を強めるのでしょうか。IoT活用商品については多岐にわたるため、本調査ではAI搭載の自動運転車に着目して調査を行いました。回答者にまず自動車の保有率を尋ねたところ、日本は43.8%、スウェーデンは49.0%、英国は72.4%、米国は84.8%と各国差がみられました【表4】。次に、それぞれの国について、自動車を保有している人を対象に、現在の自動車の購入額を聞き、その上で「もしも、自動運転車の購入を検討する場合に、あなたは前問で答えた購入価格よりもどの程度高くても購入しますか」と尋ねたところ、その答えは下の表のようになりました。(なお、スウェーデンについては中古車文化が強いために、他の国の自動車購入価格に比較してかなり安価であることには注意が必要です。)
この質問からわかる重要な結果は、現在の普通の自動車ではなくAI搭載の自動運転車を購入するために余計にかけられる費用が、日本では他国より低かったことです。日本以外の国の消費者は、現在保有している自動車にかかった費用の半額程度(円換算すると米国125.8万円、英国90.4万円、スウェーデン19.1万円)を追加の費用として支払う意欲がありましたが、日本の消費者が想定している追加の費用は現在保有している車の購入金額の1/4程度(57.0万円)だけでした。他方、追加でかけられる費用について、「ゼロ」と答えた人の割合を見ると、日本は他の3カ国に比べて低いこともわかりました。
【表4】AI搭載の自動運転車にかかる費用の支払い意欲について
日本 | 英国 | 米国 | スウェーデン | |
---|---|---|---|---|
自動車保有率 | 44% | 73% | 85% | 49% |
無償で譲渡された自動車を除外した 自動車の平均購入価格 (単位はX万円に換算) |
230.1 | 172.0 | 225.5 | 44.7 |
自動運転車にかける追加価格平均 (単位はX万円に換算) |
57.0 | 90.4 | 125.8 | 19.1 |
自動運転車にかける 追加価格をゼロと答えた人の割合 |
15.1% | 26.6% | 25.4% | 29.4% |
[関税定率法第4条の7に規定する財務省令で定める外国為替相場(税関長公示、適用期間:平成30年12月2日から平成30年12月8日まで、 1USD=112.79JPY、1GBP=144.49JPY、1SEK=12.49JPY)から、筆者が各国通貨を円にと換算した。]
(5) AI搭載の自動運転車、IoT活用商品の安全性に対する信頼度
最後に、AI搭載の自動運転車、IoT活用商品の導入に伴って、発生すると考えられる問題に対する懸念の度合いについての質問を行いました。どちらの商品にも共通する傾向は、どの国でも新技術の導入に対し発生し得る諸リスクに対する懸念・不安感が強いことです。中でも、日本の消費者が商品の安全性に対し抱く不安感は全般的に他の3カ国より強いことが確認できました【図4-1、図4-2】。
【図4-1】AI搭載の自動運転車の導入に際して発生しうる懸念事項
【図4-2】IoT活用商品の導入に際して発生しうる懸念事項
日本がこれらの商品の安全性に深い懸念を抱いていることは、自動車の任意保険に関する質問からも読み取ることができます。もともと自動車の任意保険への加入率は日本の回答者が94.5%、米国66.7%、スウェーデン46.1%、英国35.2%と、日本が他国に比較して突出して高い状況ですが、自動車の任意保険加入者を対象に、「AI搭載の自動運転車が普及し、今よりも事故の発生割合が減少する場合には、任意保険の加入をやめますか、やめませんか」と質問したところ、日本では「やめると思う」「たぶんやめると思う」と答えた人が合わせて4.3%と他の3カ国に比べてかなり低い値となり、ほとんどの人がAI搭載の自動運転車を導入しても任意保険をやめる気持ちがないという結果になりました【図5】。
【図5】自動運転車を利用後の任意保険の加入について
以上のように、先端技術を用いた商品に期待する内容は各国間で高い共通性が見られる一方で、その期待の度合いや、商品の安全性に対する心配の度合い、先端技術の導入にかかる費用への追加支払い意欲については、各国間で異なる傾向がみられます。この結果は、同一商品に対しグローバルな需要が見込まれる可能性と、そして、各国間での消費者の態度の差を識別し国ごとに異なる広告戦略を練る必要性を示唆しています。
調査概要
調査方法 | 非公開型インターネットアンケート |
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調査期間 | 平成30年11月30日~平成30年12月14日 |
有効回答者数 | 各国在住20歳~69歳の各500名 |
回答者の属性 | 各国の性年代別の人口構成比に応じて割付を行い実施 |
《 補足 》
(*) NTTコム リサーチ(旧gooリサーチ) https://research.nttcoms.com/
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が提供する高品質で付加価値の高いインターネットリサーチ・サービスです。
自社保有パネルとしては国内最大級のモニター基盤(2018年12月現在 217万会員)を保有するとともに、「モニターの品質」「調査票の品質」「アンケートシステムの品質」「回答結果の品質」の4つを柱とした「クオリティポリシー」に基づく徹底した品質確保を行い、信頼性の高い調査結果を提供するインターネットリサーチとして、多くの企業・団体に利用されています。
<本件に関するお問い合わせ先>
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
データ&アナリティクス部 藤森
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