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変化する夫婦の関係

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変化する夫婦の関係

夫婦は一心同体で苦楽をともにし、妻は夫に黙って従う......、そんな夫唱婦随の精神が美徳とされた日本の夫婦観が劇的に変わったのは、高度経済成長期以降のことだ。少子高齢化の動きが止まらない今、家族の中心である夫婦はどのような関係を築いているのだろうか。

厚生労働省の「婚姻に関する統計」によると、1950年代前半に67万件だった婚姻数は増加の一途をたどり、ピークの1972年には110万件に達した。しかしその後は減少が続き、1980年代以降はゆるやかに増減を繰り返しながら70万件代で推移している。婚姻数はここ30年間大きな変化はない〔図1〕。

図1 婚姻件数・婚姻率の年次推移(1947~2005年)

一方で離婚率は依然高く、2007年は254万7475組が離婚している。独身者の晩婚化にも歯止めがかからない。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」を見ると、男女が出会って結婚するまでの平均交際期間は1987年の2.5年から2005年には4.1年となり、18年間で1.2年長くなっている。初婚年齢も上昇を続けていることから、「相手はいるが結婚しない」と結婚を引き延ばしする傾向が強い。

未婚者は減らず離婚は増えるのに、婚姻数は変わらない。その理由は、再婚の増加にある。「夫婦どちらかが再婚」または「夫婦ともに再婚」という再婚夫婦は1975年以降数を増やしていき、2005年には全婚姻数の25.3%に達した。総じて言うと、日本人は「毎年70万組が結婚し、うち3組に1組が離婚し、4組に1組が再婚する」ということになる。離婚に対する抵抗感が薄れているなかで、それでも結婚を前向きに考えている人が多いことがわかる。

前出の「出生動向基本調査」によると、独身者の9割が「いずれは結婚するつもり」と回答。また「結婚に利点がある」と考えている男女は7割を占め、独身者の間でも家族を持つことの喜びや安らぎに魅力を感じる人が増えている〔図2〕。先の見えない現代社会のなかで、パートナーとともに人生を過ごしたいという家族回帰の意識が広まりつつあるようだ。

図2 調査別にみた、結婚することの利点のグラフ

一緒にいたい若年夫婦、別行動の熟年夫婦

それでは現代の夫婦はどのような関係を築いているのだろうか。

まず、若い世代の特徴として、忙しいぶん夫婦間のコミュニケーションを重視していることが挙げられる。明治安田生活福祉研究所の「20・30歳代の生活に関する意識調査」によると、7割が夫婦間のコミュニケーションは良好と回答。子どものいない夫婦は6割がほぼ毎日夕食を一緒にとり、1割が月10回以上一緒に買い物に出かけている。子どものいる夫婦も食事や買い物の頻度は減るものの、3分の2が年1回以上家族旅行に出かけている。また第一生命経済研究所の「夫婦関係に関するアンケート」では、30代の8割が寝室をともにし、3割が毎年配偶者に誕生日プレゼントを贈り、夫婦共通の趣味を持ちたいと考える夫は6割に上った。

一方、子育てが一段落した熟年世代になると関係は一変する。前出の「夫婦関係に関するアンケート」を見ると、50代の半数、60代の7~8割が朝食と夕食の両方をともにしているが、3分の1が別々の寝室で寝ている。過半数が「夫婦共通の趣味を持とうとは思わない」と答えていることからも、一緒にいられる時間は増えているが、自由時間は別々に過ごしている夫婦が多いと見られる。また、「配偶者を信頼しているか」という質問に対して、熟年男性の大半が「妻を信頼しているが、自分は信頼されていない」と感じているのに対し、「夫を信頼していて、自分も信頼されている」と感じている女性は半数以下だ〔図3〕。年代が上がるほど、「妻に依存する夫と、家庭の外に楽しみを見つけようとする妻」という図式が生まれ、夫婦間にすれ違いが生まれているようだ。

図3 配偶者を信頼しているか?配偶者からしんらいされていると思うか?(性別、性・年代別)のグラフ

世界の夫婦 それぞれの形

少子高齢化は世界的な動きだが、海外の夫婦関係はどうなっているのだろうか。

厚生労働省の「婚姻に関する統計」の婚姻率国際比較を見ると、欧米諸国の中で婚姻率が最も高いのはアメリカで、日本は2位。最も婚姻率が低いのはフランスだが、フランスの場合は法律上の婚姻関係でない事実婚が多く、非嫡出子、つまり結婚していない男女の間に生まれた子供が47.7%と半数近くを占めている。欧米では非嫡出子の割合が高いことから、全体の2%しかいない日本とは結婚観や家族観が異なるようだ〔図4〕。

図4 欧米諸国における婚姻率の年次推移のグラフ

サントリー次世代研究所の「家族に関する国際調査」によると、フランスは「コンキュビナージュ」と呼ばれる内縁関係が法的に認められており、従来の婚姻関係に縛られない男女が多い。外出は夫婦同伴が基本で、別行動だと夫婦仲を危険視されるほど徹底している。

もうひとつ、日本と異なるシステムを持つのが北欧スウェーデン。「サンボー」と呼ばれる事実婚が全体の3割を占めている。家庭では男女同権で、夫も家事や育児に参加するのが当たり前。また夫妻の財布は別々で独立採算性をとっており、対等な夫婦関係が築かれている。個人個人が自立し、長い同棲生活のなかで信頼関係を築こうというのがスウェーデンの夫婦観といえる。

世界のさまざまな国で夫婦の形は変化のときを迎え、従来の固定観に縛られない新しい夫婦の形を模索している。

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