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増える男の肥満

男の肥満が増えている。しかも、あらゆる年代で増えている。なにはともあれ、図1の肥満者の割合を見てほしい。20歳以上を10歳ずつ6つの年代に分けて、2004年と10年前、20年前とを比較しているのだが、なんと、男性は6つの年代すべてで肥満者が増えているのである。それも、2〜3%というような穏やかな増え方ではない。70歳以上の10.3%の伸びを筆頭として、あからさまに増えている。
女性はというと、70歳以上では多少増えているものの、全体としてはむしろ減っている。通常は、このように年代による増減の凸凹があるものだ。
今度は図2をチェックしてほしい。肥満とは逆、低体重者つまりスリムな人の割合である。女性はスリムな人が増えているけれど、60〜69歳と70歳以上では減っている。低体重者の割合でも女性は凸凹がある。と、男性の低体重者の割合をみると、ここでも、あらゆる年代で減っていて、凸凹がない。
次に体型とメタボリックシンドローム、つまり、内蔵脂肪症候群との相関をチェックしてみる。まず、肥満はBMIという指数で判定する。算出の方法は、体重を身長の二乗(単位メートルで計算)で割る。これが18.5以上25未満ならば標準体重。18.5未満なら低体重で、25以上で肥満である。肥満ならば当然ウエストサイズは85センチメートルを超えると思うのだが、ともあれ、BMI25以上で、なおかつ男性でウエストサイズ8センチメートル以上、女性で90センチメートル以上を上半身肥満の疑いとする。この上半身肥満で、腹部CT法により男女とも内蔵脂肪面積100平方センチメートル以上の者が内蔵脂肪型肥満と判定される。
オムロン ヘルスケアが2007年1月に実施した調査によると「メタボリックシンドローム」という言葉を知っている人は73.9%で、1年前の同調査の2.9%から大幅に認知度が高まった。また、2006年の調査では「内臓脂肪」蓄積への不安を聞いたところ、各年代、男女ともおよそ4人に3人が不安を感じていると答えている。肥満傾向の高い男性はともかく、どちらかといえばスリムな傾向にある女性も同様に不安を感じている人が多いというのは、女性が日頃から肥満に対して強い抵抗感を持っているということの表れではないかと思える(図3)。
女性は男性より運動好き?
肥満になるセオリーは過食と運動不足だ。
gooリサーチに「スポーツに関する調査」がある。「日ごろ、運動不足を感じることがありますか」という問いに対して、59.56%が「よくある」と答え、33.58%が「時々ある」と答えている。合わせると、約93%が運動不足を意識している(図4)。では、「ふだん、どのくらいの頻度でスポーツをしているか」を問うと、「まったくしていない」が55.26%で、「月に1-2日程度」が21.41%。8割近くが、スポーツとは縁のない日々を送っている。
全体像がつかめたところで、男女の差異がわかるデータを当たってみよう。内閣府がまとめた「体力・スポーツに関する世論調査」というのがある。その中に、この1年間になんらかの運動をしたと答えた人に対して、運動・スポーツをした日数を問う設問があるのだが、2004年の調査では、29.3%が「週に3日以上」と回答し、27.2%が「週に1〜2日」と答えている。合わせると56.5%になり、半数を超える(図5)。
そこで、今度は男女別の回答を見てみよう。「週に3日以上」は男性が25.6%で、女性が33.1%。「週に1〜2日」が男性24.3%に女性30.1%。この回答の合計は男性49.9%で、女性が63.1%になる。ぎりぎりのところで男性は半分に届かず、そして女性は50%を遥かに超える。確かに女性は、男性よりも体をよく動かしているらしい。
おそらく女性は、男性よりも動機付けが強い。同じ調査で、肥満の意識を尋ねた設問に対して、肥満を感じると答えた比率は、男性32.6%に対し、女性は47.7%だ。体型に対する感度の違いが、運動量の違いになって現われるのかもしれない。
フィットネスクラブがなぜ伸びる
となると、フィットネスクラブが業績を伸ばしているのも、その結果と考えられてくる。経済産業省が2005年に実施した調査によれば、フィットネスクラブは事業所数、年間売上高、年間延べ利用者数、個人会員数、就業者数、指導員数のいずれを見ても、前回調査した2002年に対して、大きく伸ばしている(表)。
注目されるのは、年間売上高の増加18.4%に、個人会員数の伸び17.0%が釣り合っていること。実需に裏打ちされた文句のない成長であることがわかる。しかも、これほど個人会員数が伸びているのに、会員全体に占める新規会員比率はむしろ減っている。会員の定着率が高い証拠だ。だから、年間延べ利用者数の伸びが27.6%と、年間売上高や個人会員数の伸びをおよそ10%も上回っている。

近年のフィットネスクラブは、かつての器の提供のみから様変わりして、個人別のメニューによる指導が当り前になっている。これも、お稽古好きの女性に支持されるのかもしれない。2005年には約385万人にも達した個人会員の男女の内訳は、男性の約168万7000人に対して女性が216万6000人。年間延べ利用者数ではもっと大きな開きが予想される。
こうした根本的な意識と行動の差が、男が年代による差異なくそろって肥満傾向になり、女が基本的にスリム化しているという現象に表出しているのではあるまいか。
男もしっかりとメタボリックを自覚して、しかるべく動かなければならないといえそうだ。
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