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増える非正規雇用

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3人に1人が非正規雇用者の時代

1990年代中盤以降、企業はリストラや新卒社員の採用抑制により、人員のスリム化を進めてきた。その一方で、派遣社員やパート、アルバイト、嘱託社員などの非正規雇用者が社員の減少を補うように増加してきて、今日ではさまざまな雇用形態の人が同じオフィス内にいることは珍しくなくなった。

総務省統計局「労働力調査詳細結果」によると、非正規雇用者数は年々増加しており、2006年は前年比3.6%増の1677万人となった。雇用者(役員を除く)全体に占める非正規雇用者の比率をみると、2000年には26.1%だったのが、2006年には33.0%と、6年間で約7ポイント上昇している(図1)。つまり、今や働いている人の3人に1人は非正規雇用なのだ。男女別では、女性52.9%、男性17.9%と、女性の半数以上が非正規雇用で働いていることになる。

図1 雇用者の従業上の地位別比率(2000・2006年)

さらに産業別では、1980年代からすべての業種で非正規雇用の比率が上昇している。2005年には、飲食店・宿泊業(62.7%)を筆頭に、サービス業(45.3%)、卸売・小売業(44.2%)で高くなっている(図2)。今やあらゆる業種で非正規雇用が浸透しており、彼らなくしては業務が回らない、という会社も少なくないだろう。

図2 主な産業別非正規雇用比率

非正規雇用者増加の一つの契機となったのが、労働者派遣に関する規制緩和だ。以前は、労働者派遣はソフトウェア開発、秘書、通訳・翻訳、ファイリングなど専門性が高い26業種に限定されていた。それが1999年の労働者派遣法改正により、派遣可能な業種が原則自由化され、さらに2004年3月からは製造業の製造業務での派遣労働も可能となった。こうしたことを受けて派遣労働者数は近年急増しており、厚生労働省の「労働者派遣事業報告」によると2005年度には124万人と、前年比39.2%もの大幅増となった(図3)。

図3 派遣労働者数

企業が非正規雇用者を増やしている背景にはどういった事情があるのだろうか。労働政策研究・研修機構が2005年に実施した調査によると、非正規雇用者の割合が上昇している要因として、80%以上の事業所が「労務コスト削減のため」を挙げており、「即戦力の人材の確保」「正社員の負担減」がそれに続いている(図4)。つまり、リストラと新卒の採用抑制による正社員の減少分を、正社員よりも低コストで雇用できる非正規雇用者で補充しているという企業行動がうかがえる。

図4 非正社員の割合が上昇している要因

一方、若年層や子育て世代の女性を中心に、比較的勤務形態が自由で融通がきく非正規雇用を志向する傾向が強いという、働く側の事情もある。このように、非正規雇用の増加には、企業側と働く側双方の思惑が一致しているという側面もみることができる。

時給低下の一方で労働時間は増加

その一方で、賃金面から非正規雇用者をみてみると、正社員との差は歴然としている。

総務省統計局「就業構造基本調査」(2002年)で雇用形態別に年収の分布状況をみると、正規の職員・従業員で300万円台および400万円台が合わせて3分の1を占めるのに対し、パートおよびアルバイトでは100万円未満が半数以上、派遣社員でも200万円台が最多となっている(図5)。非正規雇用者の所得は正社員の半分から3分の1程度の水準に過ぎないということになる。

図5 雇用形態別年間収入の分布状況(2002年)

こうした年収格差があるなかで、非正規雇用者の単位当たり賃金は低下を続けている。2005年度の派遣労働者の平均賃金(8時間換算、厚生労働省調べ)は、一般労働者派遣が1万518円、特定労働者派遣(旧・労働者派遣法で定められた26業種)が1万4253円と、それぞれ前年比7.8%と10.9%の減少となっている。

一方で、正社員並みの働きを要求されるケースが増えるにつれ、労働時間も正社員並みとなる非正規雇用者も増えており、週35時間以上働いた非正規雇用者の比率は2005年には41.8%にも上った(総務省「労働力調査」)。「低賃金で長時間働く」という非正規雇用の一側面からも、最近クローズアップされている「ワーキングプア」の問題が現実味を帯びているといえよう。

こうした現状を不満に思っている非正規雇用者も少なくはない。前出の労働政策研究・研修機構の調査によると、正社員とほぼ同じ仕事をしている非正規雇用者の61.8%が、自分の賃金を「低い」とし、さらにその56.4%が自分の賃金に「納得していない」と答えている。企業側は「責任の重さが違う」「長期間の勤続が見込めない」などを賃金差の理由としているが、非正規雇用者側は「仕事内容が同じ」「正社員と同程度の責任がある」といったことから、この格差に不満を感じている。

賃金面以外にも、非正規雇用者の多くが有期雇用の形態であることから、業務の繁閑に応じて「雇用の調節弁」とされることが多い。派遣社員の場合、71.6%が契約期間3ヵ月未満で、1年以上のケースは3.1%に過ぎない(いずれも2005年度、厚生労働省)など、非正規雇用者はつねに仕事を失う不安と隣り合わせで働くことになり、安定した生活は望めないことになる。

現状では、企業側の都合によって"使い捨て"に近い状態にあるケースも見受けられる非正規雇用者だが、近年は「同一価値労働・同一賃金」や、最低賃金引き上げなどの議論も沸き上がってきた。また企業側としては、本格的な少子高齢化の時代を迎え、フルタイムで働くことが難しい子育て世代の女性や高齢者、さらには障害者などを活用するには、非正規雇用は有効な雇用形態ということもできる。いずれにしても、雇用者が安心して働き生活できるような、有効な手立てが早急に打たれることを望みたい。

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