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日本人はやっぱり“働きバチ”?

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テーマ「働く」

景気後退局面でも減らない労働時間

高度経済成長期、日本人はその長い労働時間から、海外より「働きバチ」と揶揄された。こうした"外圧"もあり、日本の法定労働時間は1980年代より段階的に引き下げられ、1997年4月にはアメリカ、イタリア、ドイツと同水準の週40時間・1日8時間と定められ、現在に至っている。

これだけみると、労働時間は短くなっているのかと思うかもしれないが、欧米諸国と製造業(生産労働者)の年間総実労働時間を比較してみると、必ずしもそうとは言えない。日本の労働時間は1980年代後半には他国を200〜500時間も上回っていたが、1987年に週48時間制が導入されて以降、大幅に減少して1990年代には米国を下回るまでになった。だが、2000年代に入り景気回復とともに労働時間は増加に転じ、2002年には再び米国を抜いて2003年は1975時間と、ドイツ・フランスより400時間以上も長くなっている(図1)。

図1 年間総実労働時間の国際比較(製造業生産労働者)

国内に目を転じて、月間の総実労働時間(所定内・所定外労働時間の合計)をみてみると、就業形態により明確な差が表れている(図2)。労働者計では1990年代から総実労働時間は低下傾向にあったが、景気回復局面入りを受けて近年は下げ止まっており、2006年は前年より1.1時間増の150.9時間だった。一方で、一般労働者(正社員に相当)の労働時間は景気後退局面にあってもそれほど減少しておらず、1999年の165.3時間を底に増加傾向にあり、2006年には168.6時間となった。つまり、労働者全体では1990年代より実労働時間は減少傾向にあったが、正社員の労働時間は小幅にとどまっている。

図2 就業形態別月間総実労働時間の推移

これは、バブル後のリストラで人員が削減された業務をカバーするため、正社員の労働時間はそれほど減らなかった一方で、パートやアルバイトなどの短時間労働者が増えたことで、全体の総実労働時間は押し下げられたという構図が見えてくる。

正社員への負荷の増加は他のデータからも裏付けられる。図3は年齢階級別に週35時間未満および60時間以上の雇用者の比率を5年ごとに比較したものだ。これによると、女性で60時間以上働いている人の比率は各年代ともほとんど変わりないが、男性では30代以上で年々上がっており、35〜39歳で19.1%(1994年)→20.9%(1999年)→24.0%(2004年)、30〜34歳で18.9%→21.8%→22.7%と、壮年期での上昇幅が大きい。ここ10年で"働き盛り"の男性に業務が集中し、負荷が増大している現状がうかがわれよう。

図3 年齢階級別35時間未満および60時間以上雇用者の割合

有給休暇取得率も低下

日々の労働時間が長くても休暇が多ければ、多少はリフレッシュできるだろう。日本の会社員の休暇については、どのような状況なのだろうか。

厚生労働省「就労条件総合調査」(2006年)によると、何らかの週休2日制を導入している企業は年々増加しており、2006年には全体の89.4%、完全週休2日制については39.6%にのぼった。1人当たりの平均年間休日総数は113.1日と、ここ4年間で大きな変化はない。

では、有給休暇の取得状況はどうか。1人当たりの有給休暇の付与日数は2000年代に入ってから18日前後で推移している。一方、取得日数は1995年に9.5日だったのが、2006年には8.4日と1日減少、これにつれて取得率も低下傾向にある(図4)。つまり、仕事に追われて休暇を取るのもままならず、年間10日程度の有給休暇を次年度に繰り越している、という正社員像が浮かび上がってくる。

図4 有給休暇の取得状況

完全週休2日制と仮定して、2004年の年間休日数(週休日とそれ以外の休日、年次有給休暇取得日数の合計)を他国と比較してみると、日本が127.5日に対し、アメリカ127.1日、イギリス137.0日、ドイツ143.2日、フランス140.0日。アメリカとはほぼ同じだが、ヨーロッパ諸国よりも10日以上少ない(労働政策研究・研修機構資料より)。休暇の面でも、日本人の「働きすぎ」傾向がはっきりと表れている。

柔軟な勤務形態の導入企業も増加

経済のソフト化が進む現在、非定型的で定量化しにくく、結果が出るのに時間がかかる業務に従事する人も増えている。これにつれて、従来の1日8時間という固定化した勤務形態がそぐわないケースも少なくない。こうしたことから、「変形労働時間制」や「みなし労働時間制」といった、柔軟な働き方が可能な勤務形態を導入する企業も増えている。

変形労働時間制とは、一定期間の労働時間の平均が法定労働時間の週40時間以内であれば、1日・1週間単位の労働時間が法定労働時間を超える弾力的な配分ができるという制度で、フレックスタイム制がこれに含まれる。前出の「就労条件総合調査」によると、同制度を導入している企業は58.5%にのぼり、前年の55.7%より2.8ポイント増加した。従業員規模が大きいほど導入比率は高く、1000人以上の企業では69.7%だった。

みなし労働時間制は、実際の労働時間にかかわらず、1日や1カ月単位で一定時間を働いたとみなす制度だ。社外にいる時間が多いため、労働時間の把握が難しい営業職などを対象とした「事業場外労働」と、業務内容や時期によって労働時間に大きな差がある企画や専門業務に従事する人に対し、自らの裁量によって勤務する「裁量労働」の2つに大きく分けられる。同制度を導入している企業は10.6%で、変形労働時間制と同様に従業員規模が大きい企業ほど導入比率が高い。

これらの制度が労働時間の短縮や休暇取得に直結するわけではない。特にみなし労働制では、一定の歯止めがなくなることから、個人の負荷が増大するとの指摘もある。だが、業務の繁閑に合わせてメリハリのある勤務が可能になり、ひいては生産性の向上につながるという側面もあるだろう。

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