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一人暮らしの女性は消費も貯金も旺盛

一人暮らしが増えている。進学や仕事の都合、配偶者との死別・離別など理由はさまざまだが、国立社会保障・人口問題研究所の調べによると2005年の単身世帯は1446万世帯で3軒に1軒が一人暮らしだ。単身世帯は2025年に1824万世帯まで増加し、日本人の4割が一人暮らしになると推測されている。

中でも増えているのが女性の一人暮らしだ。独身女性の一人暮らしは女性の社会進出とともに増加し、今では珍しいことではなくなった。仕事を持つ若い女性は行動力や購買欲が旺盛で、どの業界も「おひとりさま」と呼ばれる女性客の獲得を狙った商品開発やサービスに躍起だ。自分で働き、自由に行動し、一人で暮らす。自立した女性がもたらす社会的影響は少なくない。最近は高齢女性の一人暮らしが急増しているが、今回は若年層に絞って、そのライフスタイルを調べてみたい〔図1〕。

図1 若年勤労単身世帯の男女別平均消費性向の推移のグラフ

総務省統計局の2004年度「全国消費実態調査」によると、30歳未満で一人暮らしをしている男性の実収入は26万9282円で、消費支出は17万8904円。一方の女性は実収入が22万8054円で、消費支出は17万3432円。女性は男性より約4万円収入が少ないが、支出は男性とほぼ同じであることから、女性のほうが消費に積極的であることがわかる。この傾向は1979年以降30年間続いており、男性は年々消費が減り、女性はどんどん増えるという構図は強まる一方だ。

また使い道については、男性は支出の4分の1を食費が占め、車や携帯など特定の項目に偏っているのに対し、女性はバランスよく使う点が特徴的だが、特に服や靴などの服飾費や交際費が男性より多い。

しかし、女性はお金を使うばかりではない。住友信託銀行が行った30〜40代女性の金融資産保有力調査によると、単身女性の資産保有額は30代で477万円、40代で890万円となり、既婚者やシングルマザー、親と同居するパラサイト・シングルを抑えて最も多い。扶養家族がいないことを差し引いても、生活費を自己負担しながら貯蓄しているあたりに、女性の経済力と自立心の高さがうかがえる。

「おひとりさま」のライフスタイル

ヤクルトが一人暮らしの25〜34歳女性を対象に行った意識調査によると、多くの女性が「ショッピング」「趣味・習い事」「おしゃれ」を生きがいに挙げ、自分磨きに時間を費やすことがわかった。独身男女を対象とした電通総研の「ひとりの楽しみ方」に関する調査を見ても、女性は読書から映画・美術鑑賞、料理、ガーデニング、エステ、ゲームなど多彩で、男性に比べて趣味の守備範囲が広く、自由時間を積極的に活用している女性像が見える。

ただし総務省統計局の「全国消費実態調査」を見ると、一人暮らしの女性が最もお金を費やしているのは住居費だ。賃貸アパート入居者を対象としたセキスイハウスの調査を見ると、女性は部屋の条件について「ディンプルキー」「テレビモニター付きインターホン」「防犯合わせガラス」「オートロック」といったセキュリティ面を重視する人が多い。一人暮らしの女性を狙った犯罪が横行しているだけに、身の安全のために防犯面の強化は不可欠と考えていることがわかる〔図2〕。

図2 賃貸アパートに入居する条件は「防犯設備の充実」のグラフ

食生活はどうだろうか。キューピーが首都圏の単身者を対象に行った調査によると、一人暮らしの女性で「平日の夕食は自炊して家で食べる」と答えた人は67.3%と自炊率が高い。また外食する時は「できるだけ安く済ませる」「野菜を意識してとる」「カロリーを取りすぎないようにする」と答え、栄養バランスやダイエットを意識したメニュー選びをしていることがわかる。

一方、レシピサイト「スピードクッキング」の共同調査によると、冷蔵庫に野菜を入れている一人暮らしの女性は79.3%で、5人に1人は野菜を買わないことがわかった。健康意識の強い人は自炊し、野菜ジュースなども積極的に飲むが、そうでない人は外食やファストフード中心と、食生活は二極化しているようだ〔図3〕。

図3 栄養バランスを気にする人の野菜、野菜ジュースの保有率のグラフ

「おひとりさま」の間では、日常の中で少しだけ贅沢をする「プチ贅沢」を楽しむ傾向が強い。地に足をつけて生活しながら、非日常的な趣味体験やリッチ感を味わえるイベントを織り込むことでメリハリをつけることが、単身女性のライフスタイルと言えそうだ。

楽しくて、時に寂しい一人暮らし

自由を謳歌し、自立への自信と喜びを実感している一人暮らしの女性達。しかし、単身生活には気楽な反面、不便さもついて回る。第一生命保険経済研究所が2002年に行った「20〜30代の一人暮らし未婚者の生活意識調査」によると、一人暮らしのデメリットについて「何かあった場合に不安」「生活費がかかる」「家賃の負担が重い」などが挙げられ、将来に不安を抱える女性が多いことがわかる。

特に、一人暮らし歴10年以上になると「他人と生活できなくなるのではないか」という不安にかられる女性は半数以上に上り、一人暮らしが長くなるほど他人との同居生活を強く意識するようだ。厚生労働省が行った「出生動向基本調査」によると、独身女性の90%が「いずれ結婚するつもり」と答え、結婚願望は強くなっている。その一方で5割が「まだ結婚するつもりはない」と答えており、手に入れた自由を手放すことと、結婚して安心を手に入れること、その狭間で揺れる女心が透けて見える。

もうひとつ、一人暮らしの女性に特徴的なのがペットの存在だ。リブランひと住文化研究所の「ペット飼育の有無とライフスタイルに関する意識調査」によると、首都圏で一人暮らしをする女性がペットを飼う理由は「一人で暮らすには寂しいので」が約3割を占めて最も多い。一人暮らしの孤独感や、仕事・人間関係のストレスを和らげたいという思いが、ペット人気の背景にあるようだ〔図4〕。

図4 ペットを飼った理由(1位から5位)のグラフ

 しかし、ペットを飼っている人といない人では、ペットを飼育している人のほうが男性への関心が薄れがちで、自分磨きにかける時間も減少するという調査結果も出ている。結婚を強く意識しながら、ペットを飼うことで結婚が遠のくという矛盾した現状。消費と倹約、自由と孤独といった真逆のベクトルが同時に存在する生活が、現代女性の一人暮らしを象徴していると言えないだろうか。

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