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着実な成果を上げつつあるリサイクル

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見て取れる一定の成果

まずは、図1のグラフを見てほしい。最終処分量の推移を、リサイクル関連法案の制定時期と関連させて表している。右肩下がりを示す最終処分量の線に、一定の間隔で関連法が印されている。これを見ると、法制度を核とした環境政策が、最終処分量の減少を誘導してきたと考えざるをえない。

図1 最終処分量の推移

今度は図2のグラフに目を移してほしい。GDPと1人当たりごみ排出量の相関を表している。第1次石油ショックまではGDP成長率と1人当たりごみ排出量は同じ歩調で歩んでいた。が、その後、1人当たりごみ排出量は右肩上がりを止め、GDP規模が2倍以上になった2004年でも1973年当時と同等の数字になっている。各論に踏み込めば、当然、さまざまな問題はあるものの、わが国の廃棄物対策が大筋において、一定の成果を挙げてきたことが分かる。

図2 GDPと1人当たりごみ排出量の推移

それというのも、我が国の行政には珍しく、一連の取組みが、基本法に則して一貫性をもって進められてきたからかもしれない。拡大生産者責任をふまえた循環型社会形成推進基本法が制定されたのが2000年。拡大生産者責任とは、製品が使用されて廃棄された後でも、その製品のリサイクルや処分について、生産者が一定の責任を負うとする考え方で、循環型社会形成推進基本法では、「事業者の責務」の中に明示された。一定、というところで評価は分かれるものの、ともかく基本法に拡大生産者責任を導入したことでは大きな節目となったこの骨格に基づいて、容器包装、家電製品、食品、建設資材、自動車といった物品ごとのリサイクル制度が整備されていったのである。

図3は、リサイクル率の推移である。産業廃棄物、一般廃棄物とも一貫して右肩上がりを続けている。グラフには示されていないが、産業廃棄物のリサイクル率が1990年から96年にかけて横ばいになったときは、廃棄物処理法が改正され、排出事業者責任や不法投棄などの不適正処理に対する罰則を強化して、再び上昇に転じさせた。要所要所で、強化策が注入されて、右肩上がりのパターンを維持している。以下、物品ごとの制度についてスケッチしてみよう。

図3 リサイクル率の推移

さらに、ボトルからボトルへ

最初のリサイクル法として1995年に制定された「容器包装リサイクル法」は、施行後10年で見直すことが初めから決められており、1年半に渡る討議の末、昨2006年、改正容器包装リサイクル法が制定された。

gooリサーチでも見直しについてのアンケートを実施しているが、老舗のリサイクル法だけあって、認知度は高い。容器包装リサイクル法という制度を知っていると答えた人が34.3%。法律の名前は聞いたことがあると答えた人を含めると、74.2%にもなる。このアンケートの中で注目されるのは、スーパーのレジ袋の有料化に対する回答で、有料化に賛成という回答が54%と過半になっている。分別収集が定着した結果、日常のライフスタイルの中に環境意識が根づきつつあるのが伝わってくる(図4)。

図4 スーパーから配布されるレジ袋の有料化の動きについてどう考えますか

容器包装の主要アイテムについてリサイクル率をご紹介すると、アルミ缶が86.1%で、スチル缶が87.1%。使用済みガラス瓶を砕いたカレットの利用率が90.7%である。プラスチック類と古紙の利用率は60%台で、61.0%と60.3%。PETボトルの回収率は46.4%で、現在は繊維や卵パックなどのシートとして利用されているが、既にボトル・トゥー・ボトルの技術が確立されており、分別回収を実施している市町村が91.6%に達していることを考えると、今後は、リサイクル率も上がってくるのではないか。

次に家電だが、1998年に家電リサイクル法が制定され、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、そして洗濯機の4品目について、製造業者などによる一定水準以上のリサイクルが義務づけられた。一定水準とは、それぞれ60%、55%、50%、50%である。しかし、2005年度の実績を見ると、4品目とも法定基準を上回る再商品化率を達成している。エアコン84%、テレビ77%、冷蔵庫・冷凍庫66%、洗濯機75%である。一度システムを構築すると、機能していく好例だ。

建設資材と食品のリサイクルはいずれも2000年に法制化された。建設廃棄物全体の2005年度における再資源化率は92.2%で、中身を見ていくと、最も高いのがアスファルト・コンクリート塊の98.6%、最も低いのが建設発生木材の68.2%になっている。建設汚泥も70%台。今後はそこがターゲットになる。一方、食品は、食品産業全体で51%と、他の分野と比較すると見劣りがする。食品製造業では78%に達しているのだが、食品小売業の32%や外食産業の25%が全体の足を引っ張っているのだ。定型化に馴染みにくい分野だけに簡単ではないのだろうが、そこをクリアしてほしい。

最後に2002年に法制化された自動車である。前述した拡大生産者責任が目に見える制度で、不法投棄が問題化したシュレッダーダストとエアバッグ類、そして地球環境を害するフロンについて、自動車製造業者と輸入業者に対して引取とリサイクルを義務づけている。再資源化目標は、たとえばシュレッダーダストだと2005年度で30%、10年度で50%、15年度で70%以上だが、既に実績では軒並み60%を超えているらしい。自動車は、あらかじめ所有者が購入時にリサイクル料金を預託するデポジット制を導入した、わが国初のリサイクル法でもある。ここをスプリングボードにして、さらなる環境政策の進化に期待したい。

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