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過熱化する中学受験

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中学受験は6人に1人。人気高まる中高一貫校

受験の低年齢化が進んでいる。かつては受験戦争といえば、高校・大学受験を指していたものが、最近では国立や私立の幼稚園・小中学校への受験が過熱化。早いケースで、わずか2歳で受験を経験する子も少なくない。低年齢化の背景にはいくつかの要因があるが、少子化が親の教育熱に拍車をかけた結果ともいえる。

"お受験"とは、幼稚園や小学校などあきらかに親の意思によって、子供が受験という競争に巻き込まれる事態を揶揄する意味で生まれた言葉だ。

そんな受験競争に、新たな潮流が生まれている。「中高一貫校への入学」を目指した中学受験者数の急増だ。中高一貫校とは生徒の個性をより重視した教育を目指し、中高で一貫性を持たせた教育体制のこと。1つの学校で教育する「中等教育学校」、中学校と高校が併設されている「併設校」、異なる設置者同士が連携した「連携校」と3タイプがあるが、無試験で高校に進級することから「エスカレーター式」「エレベーター式」とも呼ばれる。私立や国立では昔から存在したが、1998年の学校法改正をきっかけに公立の中高一貫校が全国で次々と誕生。98年にはわずか4校しかなかった設置校は、2005年には42都道府県に173校と急増した(図1)。

図1 公立中高一貫教育校設置数の推移

大手進学塾の四谷大塚の調査によれば、首都圏における2007年度の中学受験者数は5万2000人。小学6年生の6人に1人が受験するという、史上最大規模となった。文部科学省では公立の中高一貫校を「通学範囲に少なくとも1校の整備」を目標に、最終的には全国500校の設置を目指している。都市部で起きている中学受験人気が、一貫校の普及によってどう変化していくのか。今後の動向が注目される。

親子が"中学受験"に走る本当の理由...

ベネッセコーポレーションのベネッセ教育研究開発センターの調べによると、親世代の半数近くが「公立中高一貫校に通わせたい」と回答している(図2)。小中、中高などの一貫教育に人気が集まる背景には、近年急増している幼児を狙った犯罪や、ゆとり教育による学力低下、学級崩壊といったさまざまな社会的要因が挙げられる。小学・中学・高校それぞれが行うブツ切り教育ではなく、長期スパンの中で体系的な教育を受けられることや、一度入学すれば大学受験まで受験をせずに済むため、10代の貴重な時間を伸び伸びと過ごせるという期待感も強い。

図2 もし、通学圏内に「公立中高一貫教育校」があったら、子供を入学させたいか

しかし、中学受験に走る親たちの本音は別のところにあるようだ。ベネッセ教育研究開発センターが「公立中高一貫校に入学させたい理由」について調査したところ、「安価な学費で一貫教育を受けられるから」と「母体になっている高校が有名だから」という意見が大半を占めている(図3)。つまり経済的な理由で私立進学を断念した家庭が、公立の一貫教育に大きな注目を注いでいるのがわかる。

図3 公立中高一貫校に入学させたい理由はなんですか

また、「受験のブランド化」も少子化が進むにつれて過熱化している現象だ。知名度からくる安心感や、進学・就職に有利だという上昇志向に加え、親の見栄も少なからず影響していると思われる。現に空前の新設ラッシュを迎えている大学では、一部の有名校・難関校に受験者が集中するのに対し、私立大学の4割が定員割れという二極化が進んでいる。

教育熱心なアジア、卒業しにくい欧米

では、海外の受験事情はどうなっているのだろうか。欧米の学校は「入るのはやさしく、出るのは難しい」とよくいわれるが、教育に対する概念が日本とは大きく異なる。入学することよりも、むしろ何を習得して卒業するかに重点が置かれるため、小中学校でも学力が追いつかない児童は留年するのが珍しくないという。世界30カ国が加盟するOECDの「図表で見る教育2006年版」をみても、日本の大学進学者の卒業率は91%と、OECD平均である70%をはるかに上回っていることから「入学は大変で、卒業はやさしい」日本の教育事情が浮き彫りになっている。

これに対してアジア諸国は日本同様の制度を持ち、厳しい受験戦争を体験する子供が多い。ただし、日本のいわゆる低年齢受験ではなく、大学受験が主軸だ。その最たる国が、日本以上の学歴社会と言われる韓国。出身大学が就職や人生を左右するといわれ、ソウル大学など一部の有名大学に志願者が集中する傾向が強い。20歳以上の成人男性に2年間の兵役が課せられるため、長期の浪人は許されないことも受験戦争が激化した背景にあるようだ。また「1人っ子政策」で少子化が進む中国でも大学受験者が急増しており、中国教育部の発表によると2006年の入学志願者数は過去最高の950万人を記録している。

内閣府青少年育成推進本部(現 内閣府政策統括官)が日本、韓国、アメリカの3カ国で実施した「子供と家族に関する国際比較調査」で現在の教育の問題点について調査したところ、韓国と日本の7割以上が「受験戦争が厳しく、子供たちの生活が勉強に偏りがちなこと」を挙げているのに対して、アメリカではわずか1割にとどまっている(図4)。子供の将来を思えばいい学校に進んでほしい、でも勉強ばかりというのも......。揺れる親心が見え隠れしながら、アジアの受験事情は、まだまだ過熱しそうな勢いだ。

図4 現在の教育の問題点

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