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原子力と電力自由化に関するアンケート

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核燃料サイクルを過半が支持

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gooリサーチ と 日刊工業新聞 による共同企画調査

日刊工業新聞2004年8月18日最終面より

gooリサーチと日刊工業新聞による共同企画調査<第3弾>

原子力と電力自由化に関するアンケート

~核燃料サイクルを過半が支持~

日刊工業新聞社はNTTレゾナントと共同で、原子力と電力自由化について「goo」リサーチを利用したウェブアンケートを実施した。サイクルの是非が原子力委員会で議論されていることを知る回答が5割近くに上り、原子力問題に強い関心が寄せられていることが分かった。

関西電力の美浜原子力発電所での蒸気噴出事故は、アンケートの回収後に発生したため意識の変化は反映されていない。しかし、安全性や電力会社の信頼性に疑問符を付ける意見が根強く寄せられている実態があり、同事故が招いた信用の低下はサイクル計画推進にも影響を及ぼしそうだ。

(編集委員・石堂隆史)

調査結果について

"安全・信頼"の条件付き「有効利用すべき」

アンケートは7月下旬から8月上旬にかけて行い、全国の一般消費者1401人から回答が寄せられた。回答者の年齢は、10代から60代以上までほぼ均等の割合の構成となっている。

核燃料サイクル事業について聞いた質問では、使用済み燃料を再処理すべきか、廃棄物として直接処分すべきかの議論を原子力委員会が進めていることについて、47.9%が「知っている」と回答。"原子力村の議論"と揶揄されるほど専門的で分かりにくいテーマだが、審議の経過などを各種メディアが報道していることもあり社会的な関心が寄せられている実態が浮かび上がった。

あなたは核燃料リサイクルについて議論が進められていることを知っていますか。

議論を知っている、と答えた回答者に「再処理」すべきか「直接処理」すべきかを聞いた問いには、56.6%が再処理を支持。直接処分を支持する意見は14.3%、「分からない」は29.1%だった。

あなたは議論についてどの意見に賛同しますか。

「循環型社会に徹するのがこれからの社会だ」「リサイクルできるものであれば当然リサイクルすべきだ。そのためには国民の英知の結集が必要」「危険を伴う原子力発電をする以上、リサイクルして資源を無駄にしないほうがよい。」

再処理すべきだ、とする理由を聞くと、圧倒的に多いのは「資源は有効に利用するべきだ」という意識。また「廃棄物の量を減らすことができる」との評価も多かった。

さらに「直接処分する方法と、地域がない」といった現実的な見方や、「処分場がなくなり、他国に処分せざるを得ない状況になる可能性があるから」といったことを危惧する記述もあった。

技術立国・日本としての立場を重視する意見も少なくない。「欧州では断念した国もあるが、日本は技術立国として技術を確立してほしい」「技術立国として後れをとらないよう、高度技術に投資すべきだ」「最小の核燃料で最大のエネルギーを取り出す技術開発を進めるべきだ」など、技術力で小資源国・日本を救うべきだとする主張だ。

ただ、再処理を容認する意見であっても「安全性や信頼性があれば」と条件をつける回答者が多い。美浜原発の事故は、不信感の増幅を招き事業推進の痛手になりかねない。こうした声に、国や電力会社がどう答えを出していくかが、今後の議論を左右することになりそうだ。

コスト高を懸念 18兆8千億円 国民負担が増大

「国民負担が増大する」「巨額な費用がかかる」。

サイクルの推進には18兆8000億円のコストがかかると試算されており、直接処分をすべきだ、と選択した回答者は「コスト高」を理由にする人が最も多かった。また「再処理は危険が伴う」「直接処分の方が安全性が確保できそう」という声も目立った。

このほかにも「先進国で断念されている技術だから」「諸外国ではリサイクルしていないから」など、米国やドイツ、スウェーデンなど直接処分を選択している国があり、世界的な視野で判断を下す意見もあった。

「分からない」。原子力委の議論に加わるメンバーからも「人類が直面する社会的課題の中で、技術、社会、政治的にみてトップクラスの難問」とためいきが漏れる問題だけに、3割近い人がこう回答した。

理由は「そもそも原子力に反対」という主張が強くあるほか、「安全、コストとも情報がない」「将来の影響がわからない」など情報の不足を挙げる意見が多い。さらに「本当に正しい議論がなされているか疑問」と国の議論に不信感を抱く声もあった。

また「両方とも危険」「双方とも安全性が確立されていない」と不安視する回答や、「自身では結論が出せない」と途方に暮れる回答者も少なからずいた。

原子力委での議論を「知らない」と答えた回答者に、再処理と直接処分のメリット、デメリットを説明した上でどちらを選択するかを聞いたところ、「リサイクルを考えるべきだ」との回答が54.1%に上った。一方で「わからない」も40.3%に達した。「直接処分を考えるべきだ」は5.6%だった。

あなたはリサイクルと直接処分のどちらを支持しますか。

原子力という重要な問題について、"国策民営"で進められている現状についても聞いた。国の積極的な関与を求める意見が多く「国がもっと責任を持ち主体性を強めるべきだ」が40.3%でトップ。

次いで「電力会社がもっと自由に経営判断できるようにすべきだ」が24%に達し、これまで通り「国策民営でよい」との答えは21.6%と評価が低かった。

日本の原子力は国が政策を決め、民間電力会社が実行するという『国策民営』の形態をとっています。こうした方式についてあなたはどう思いますか。

電力会社の変更「検討」含め66% 効率優先に不安も・・・

企業向けを中心に進む自由化だが、国では07年4月から家庭を対象にすべきかの議論を始める予定しており、自由化範囲の拡大についても意識を調査した。家庭向けにも自由化が進んだ場合、現行の電力会社から契約を変更をするかどうかを聞いたところ、「検討する」との回答が58%に上った。また「変更する」も8%あり、契約する会社を自己責任で選びたいとする答えが7割近くになった。

家庭向けの電力にも自由化が拡大した場合、あなたは現行の電力会社との契約を変更しますか。

契約の際に何を重視するかでは「料金の安さ」が最優先され40.8%。「各種サービスを含めた総合力」が27%で続いた。「企業としての信頼性」も2ケタの12.9%に上ったが、「新エネルギー推進の取り組み充実度」は8.4%で意外に低い結果となった。

あなたは家庭向けにも自由化が進んだ場合、何を重視して契約を結ぶことになりますか。

料金に注目が集まる中、現行の契約会社との差が何%開けば見直しを検討するかについても聞いた。結果は、矛盾するようだが「料金差だけでは判断できない」が34.7%でトップとなり、高い意識を持つ消費者が冷静に判断している興味深い数字になった。また、下げ幅でみた回答では「5%以上、10%未満」の格差がついた段階が28.2%と最も多かった。

家庭向けの電力の自由化で電力会社が値下げ競争をした場合、あなたは現行の契約会社との差が何%開けばその見直しを検討しますか。

「電力会社は事故を隠したり、データをねつ造したりとうそが多すぎる」「原子力発電は安全を最重視し慎重にしてほしい」「安全管理をしっかりし、コマーシャルを使ったイメージアップではなく実績で信頼を得るべきだ」。フリーアンサーを求めた最終設問では、電力会社が社会から厳しい視線を向けられていることが改めて浮かび上がった。電力会社が回復に努めてきた信頼は、今回の美浜原発の事故で再び失われることが避けられず、国民から信用を取り戻すには時間がかかりそうだ。

また、「原子力発電所の安全度が下がることが心配」「原子力の安全性を犠牲にした価格競争にならないことを願う」など、自由化で効率を追求する余り安全性が軽視される事態を憂慮する指摘も目立った。自由化を「料金の値下げにつながる」と手放しで歓迎するのではなく、光と影を冷静に見つめている消費者が少なくないことがわかった。

【回答者の属性】

職業

<調査概要>

  • 実施期間: 2004/07/29~2004/08/02
  • 有効回答数: 1,401

NTTコム リサーチは、平成24年10月1日にエヌ・ティ・ティ レゾナント株式会社からNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社へ事業譲渡され、平成25年12月9日にgooリサーチより名称変更いたしました。gooリサーチの調査結果(共同調査含む)等についてはこちらまでお問合せください。

この調査結果の単純集計を無料にて提供しています。

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