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古くて新しい医療、代替医療(ホリスティック)

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テーマ「病む」

現代西洋医学の反省から注目

現代の医学は各疾患の根治に主眼が置かれることから、手術や薬物を用いて病気本来の原因を取り除くのを目的とする治療になりがちである。そのため患者のQOL(Quality of Life:生活の質)が二の次にされるケースもときとして見受けられる。こうしたことに対して批判的な見方をする向きもあるなか、欧米を中心に広まりつつあるのが「代替医療」や「補完医療」と呼ばれるものだ(以下、代替医療)。

日本補完代替医療学会では、代替医療を「現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称」と定義している。具体的には図1に示されているものがあるが、標準的な治療法として確立されていない高度先端医療を含むこともある。代替医療、特に伝統医療では、人が本来持っている生命力や免疫力を向上させることに主眼が置かれる。そのため、急激な効果は期待できないが、継続することによって徐々に症状が緩和されるなどの効果が期待できる。

図1 補完代替医療のグラフ

2013年には5兆円市場に

毎日仕事に追われてストレスから肩こりに悩まされている、運動不足で最近メタボ気味だがジムに通う時間もない――現代ではそうした「半健康」状態にある人が少なくない。また、本格的な高齢化社会の到来を背景とした健康意識の高まりもあり、気軽に利用できる健康食品関連や、カイロプラクティック、マッサージなどの手技トリートメント関連を中心に、代替医療市場は年々拡大している。矢野経済研究所の予測によると、2013年には市場規模は5兆円を超えると見られる。

日本は古来、漢方薬を用いてきた伝統があることから、漢方薬を保健薬と認めている数少ない国のひとつであり、鍼灸や柔道整復などのように保険が適用されている伝統医療分野もある。図2は、代替医療であるあん摩・マッサージ・指圧、鍼灸などを行う施設数と施術者の人数の推移をまとめたもの。施設数・施術者数ともに年々増加しているが、2004年との比較で施設が最も増えたのは鍼および灸を行う施設所だ。2年間で18.7%増加している。施術者数も、あん摩マッサージ指圧師の10万1039人を筆頭に、鍼師8万1361人、灸師7万9932人、柔道整復師3万8693人を数える。スポーツで足首を捻挫して接骨院で治療してもらったり、肩こりや腰痛の治療でマッサージ院に通ったりと、日本人にとっては身近な存在だ。

図2-1 あん摩、マッサージ、指圧等を行う施術所数の年次推移/図2-2 あん摩、マッサージ、指圧師等数の年次推移のグラフ

漢方薬については、病院での処方薬のほか、薬局やドラッグストアでも漢方製剤が売られている。例えば、風邪のひき始めのときに飲まれる「葛根湯」も漢方薬の一種だ。ロート製薬の「体質改善意識と漢方薬に関する意識調査」によると、薬局・ドラッグストアの漢方製剤を体質改善に「効果的」「多少効果的」とした人は合わせて71.9%に上る〔図3〕。漢方薬のイメージは「とっつきにくい」「中高年向き」がともに3割以上を占める一方で、効果としては「体への作用が穏やか」43.0%、「副作用が少ない」41.8%、「持続的な服用が可能」30.5%と、漢方薬へ信頼を置き、効能を認める人が少なくないことがわかる。

図3 漢方薬と体質改善意識のグラフ

QOL・免疫力向上を期待

欧米では代替医療のエビデンス(科学的な根拠・証拠)の蓄積が進みつつあり、近年では、現代西洋医学と代替医療を併用して統合的な治療とケアを行う「統合医療」という分野が生まれている。日本でも、がんのほか、アレルギーなどの慢性疾患、婦人科領域で鍼灸や漢方薬が用いられるなど、統合医療を実践する医療機関も出てきている。また2005年度には「国際統合医療研究・人材育成拠点の創成」と題する東京女子医科大学のプログラムが文部科学省の科学技術振興調整費「戦略的研究拠点育成プログラム」(通称:スーパーCOE)に指定されるなど、注目も高まってきている。

矢野経済研究所の調査によると、25%の医師が統合医療を「実践している」、35.5%が「実践していないが興味がある」としており、関心の高さがうかがえる〔図4〕。また、その導入の目的としては「QOLの向上」「免疫力の向上」が多く、疾病そのものの改善には現代西洋医学を用い、患者のQOL改善などには代替医療を用いるという方向性にあることがわかる。

図4 総合医療の取り組みについてのグラフ

厚生労働省がん研究助成金「がんの代替医療の科学的検証と臨床応用に関する研究」班の調査によると、がん患者の44.6%が代替医療を利用しており、その内容としては「健康食品・サプリメント(漢方、ビタミンを含む)」96.2%、「気功」3.8%、「灸」3.7%、「鍼」3.6%であった。その一方で、60.7%が代替医療の利用に際して医師に相談しておらず、十分なコミュニケーションがとられていない実態も明らかになっている。

徐々に効果が現れ副作用が少ない、というイメージがある代替医療だが、漢方薬も副作用がゼロというわけではないし、民間療法のなかには有効性が疑わしいものもある。治療の一環として代替医療を利用する際には、十分な注意が必要である。

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