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ヴァーチャルウォーター=仮想水とは

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 日本に水資源問題は存在しないと考える人は多いだろう。すでに人口は減少ステージに入っており、農業も長期減少傾向にある。工業用水の消費量もリサイクル率の向上によってほぼ横ばい。よほどの気候変動が起きて雨が激減でもしない限り、まず水資源が足りなくなることはないとの認識からだ。
 こうした考え方に新たな視点を提供したのが、東京大学生産技術研究所の沖大幹教授らのグループだ。彼らが発表したヴァーチャルウォーター=仮想水、というその概念は、もともとはロンドン大学のトニー・アラン教授が1990年代の初頭に提唱した考え。中近東のような絶対的に水資源量が少ない地域で、なぜ水不足をめぐる国家間のトラブルが深刻にならないのかという問いかけから出発して、それは大量の食糧輸入という形で水資源を輸入しているからだ、という結論を導き出している。
 世界の水資源使用量のうち、農業灌漑用の水利用は実に7〜9割を占める。水資源問題はほとんど農業用水問題と同義だ。大量の食糧を輸入するということは、その農業用水問題から、つまりは水資源問題から解放されるということであり、すなわち、ヴァーチャルウォーター=仮想水を輸入しているようなものだというわけである。

海外の水資源問題はそのまま日本の水資源問題

 沖教授らのグループは、この仮想水の概念に基づいて、日本における穀物や畜産物、工業製品などの生産に必要な「水消費原単位」を体系的に推計した。

 それまで小麦に必要な水は重量比で1000倍などといわれていたが、この推計によれば、小麦は精製後で2000倍、大豆は2500倍、鶏肉は1kg当たり5立方メートル、豚は5.9立方メートル、牛肉にいたっては実に21立方メートル、が必要とされている。

 これらを基に算出した仮想水の総輸入量は1年間で約600億立方メートル。日本国内における総水資源使用量はおよそ900億立方メートルだから、その3分の2にあたる量を海外に頼っていることになる。

 工業製品の形で仮想水を輸出している分野もあるが、総輸出量13億立方メートル/年に対して総輸入量は14億立方メートル/年、と工業製品の仮想水においても1億立方メートルの輸入超過となっている。

図1 水消費原単位の算定<農作物>のグラフ

図2 水消費原単位の算定<畜産物>のグラフ

 これだけの水資源を仮想水の形で輸入していることがわかると、海外の水資源問題はそのまま日本の水資源問題につながることが理解できる。水資源もグローバルな視野でとらえなければならず、日本に水資源問題は存在しない、と言い切ることはもはや出来ないのだ。

図3 日本の仮想投入水総輸入量のグラフ

水環境の最適化がカギ

 この状況を、仮想水の輸入量から換算した外国での作付面積で見ることも出来る。

 2003年の数字だが、国内の耕地面積は田と畑を合わせて474万haである。これに対して、海外に依存している食糧に必要な作付面積を試算すると、小麦が242万ha、とうもろこしが215ha、大豆は199万ha、また畜産物は飼料換算で250万haとなっている。トータルすると、"仮想作付面積"は1200万ha。日本は国内も含めると、世界中で1700万ha近い農地を利用していることになる。それはイーコル、水資源の利用を意味している。

 現在、穀物戦争と形容されるように、世界の各地で穀物メジャーなどによる畑の囲い込みが進行している。そのなかで、日本が穀物を"買い負ける"といった現象が起これば、1200万haの農地を維持することは難しい。そうした状況が続けば、仮想水とともに、"仮想作付面積"不足が日本に深刻な影響を与えることは必須だ。

 国土交通省が発表した年次報告書「平成20年版日本の水資源」によると、日本の水資源の利用可能量は約4100億立方メートルであり、水循環を最適に設計すれば仮想水を含めても自給できる可能性がある。この部分にスポットを当ててみると、水資源問題も別の角度から見ることが出来る。

図4 日本の水資源の利用可能量のグラフ

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 日本は地形的に急斜地や短い河川が多く、雨は梅雨や台風シーズンに集中するため、水資源として利用可能な量の大部分が洪水となり、資源として利用されないまま海へと流出してしまう。こうした"ムダ"な環境を最適化していく知恵が問題解決への第一歩となる。
 ダムのような大規模なシステムではなく、自治体や建物ごとに自前の雨水貯水タンクを備える、飲用以外には下水再生水を利用するなど、地道だが有効な方法はたくさんある。
 また、グローバルな規模で水資源は繋がっていると考えれば、水資源は豊かだが設備、技術が十分ではない途上国に、日本の上下水道の運用管理知識や経験を提供することも、廻りまわって水資源問題への一助となる。
 牛肉1tを生産するのに必要な仮想水は、約2万立方メートル。だからといって、ステーキやファーストフードが一切ない世界は現実的ではない。文字通り、足元にある水をどう使うか、それが今後の水資源問題の重要なカギをにぎっている。

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